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新生児の頃は「ふにゃふにゃ」と音を出し、次第に大きな声で泣くようになり、少しずつ言葉を身につけていく子どもたち。子どもの発語を促したり、コミュニケーションを取ったりする時に、気をつけたほうがいいことをお茶の水女子大学特任教授で、幼稚園教諭やこども園の園長なども務めてきた宮里暁美先生に聞きました。
1歳で話し始める子もいれば、2歳になっても話さない子もいる
子どもの発語は、0~3歳くらいまでの間にどんどん成長していきます。
生後3ヶ月頃になると、「あー」「うー」と言った1音を発する喃語。
1歳くらいにかけて「ぶーぶ」「まんま」などと少し複雑な音を取り入れた擬態語。
そこからは「ママ」などの一語文、「ママ、すき」などの二語文などと、さまざまな言語を習得していきます。
しかし、言語に関しては、子どもの成長の中でも個人差が大きい部分。「2歳になってもおしゃべりができない!」と、焦らなくても大丈夫です。
「うちの子、大丈夫かな?」と思った時にやってみよう
同じくらいの年齢の子は二語文を話しているのに、我が子があまり話さない場合、少し不安になってしまいますよね。
そんな時に確認してみて欲しいのは、「言ったことを理解できているかどうか」ということ。
「言ったことを理解できているか」確認するには?
・少し離れたところにぬいぐるみを置いて
「〇〇ちゃん、あのうさぎさん持ってきてくれる?」
・お散歩の最中に
「車がいっぱい走っているね。〇〇くんは、車好き?」
・たくさんの食べ物が並んでいる場所で
「〇〇くんは、どれが食べたい?」
このように、簡単なお願いや質問をしてみて、それに正しく応えてくれた場合、きちんと理解できていると言えます。
※注意が必要なケース
保育園などに在園している外国人園児にもよくあることなのですが、きょうだいやお友達と一緒にいる時に、「動物が好きな人?」などの質問をすると、みんなで「はーい」と手を挙げることがあります。この場合、本当に動物が好きなのではなく、まわりの行動を真似ていることもあります。そのため、できるだけ一人の時に試してみるとよいでしょう。
このような確認をしてみるのもいいですが、それでも心配になったら、おじいさまやおばあさま、保育園の先生、児童館の方など、信頼できる人に相談してみましょう。そこで「大丈夫」と言ってもらったり「もう少し様子を見てみたら」とアドバイスをもらったりすると気持ちが楽になるはずです。ママやパパの気持ちが楽になること、それが一番大事です。
話をさせようとすればするほど話さなくなる子もいます。一緒にお風呂に入りながら、お散歩をしながら、自然な形で話しかけてあげるのがいいですね。
また、聞こえているのかが心配な場合は、子どものうしろから話しかけてみて、反応を示すか確かめてみましょう。
子どもと話す時に注意したほうがいいこと
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子どもと話す時は、否定的な言葉は使わないようにしましょう。
例えば、子どもが転んでしまった時。
NG:「見ないで歩いているからでしょ!」
OK:「痛かったでしょう!」
と、NGの言い方のように、子どもを否定するような言い方をしないほうがいいですね。とはいえ、小さい時は特に、思わず「危ない!」と大きな声を出したくなるようなシチュエーションもあると思います。
例えば、お友達に向かっておもちゃを投げようとしている時。
NG:「だめでしょ!」と大きな声で言う。
OK:投げようとした手を止めながら「おもちゃは投げないよ」と落ち着いた声で話す。
大きな声で否定すると、子どもはその声にびっくりして、何が悪かったのかを学ぶことができません。そのため、落ち着いた口調で、何がよくなかったかを教えてあげるのがいいですね。
子どもに伝わる声かけ例
・コップの水をこぼしそうになった時
「コップの水がこぼれそうだから、こっちに置こうね」
・口に入れて欲しくないものを入れそうになった時
「これは食べ物ではないから、口に入れないでおこうね」
・走って欲しくない場所で走っている時
「ここはお店の中だから、走らないで歩こうね」
このように、否定ではなく、なぜ、その行動がよくないのかの理由を教えてあげるようにしましょう。しかし時には、飛び出しそうになったり、落ちそうになったり、とっさに「あぶない!」と大きな声を出してしまうこともあると思います。その時は、とっさの一言のあとに、必ずひと言を付け加えるようにしましょう。
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「子どもの言語」に悩むママ・パパからのリアルなお悩みにアンサー!
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Q:子どもの吃音が気になります。
A:気になるようなら専門家からアドバイスを
おしゃべりをし始める2~5歳くらいの子どもの20人に1人くらいに吃音の子がいます。ずっと吃音というよりは、言いたいことをうまく言い表せない時など、たまに吃音になるという子もいます。
保護者の方が気になっている場合は、行政が行なっている教室を進めることもあります。家庭でできることは、リラックスできる環境の中で、安心して自分のペースで話ができるようにしていくこと。周りの大人が気にしすぎないことも大切です。吃音だけでなく、幼児言葉に関しても同じことが言えます。
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Q:小学校受験を検討しています。敬語は教えたほうがいいですか?
A:教えるよりも、大人が使うほうが大切!
文化庁によると、敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁重語」「丁寧語」「美化語」の5種類があるそうです。幼児期に馴染んでおくといいのは、「です・ます」をつけるなどして一般的に使われる「丁寧語」ではないでしょうか。
子どもは「こう話しなさい」と言われるより、ママやパパの話し方や所作を真似する方が得意なので、ママやパパが、適切な場で丁寧語を使うことをおすすめします。そして、子どもがそのような話し方ができた時に「今のごあいさつは、とてもきれいだったね」と伝えてあげましょう。
言葉には、その人の人柄や心持ちがあらわれます。形だけではなく、本質の部分を教えてあげるとより良いと思います。
Q:3歳の娘が言っていることが本当なのか噓なのか分からなくて戸惑います。
A:子どもの嘘は大人が思う嘘とは少し違っている
子どもの話には、時に願望も含まれるフィクションとノンフィクションが入り混じっていることがあります。物にも命があるように感じていたり、夢見る世界にすぐに入ることができるなど、子どもの世界はとても豊かなのです。
「こうなればいい」「私にはこう見えた」など、全部が全部嘘ではないこともあるので、子どもが話していることは一概に「嘘」とは言えないものです。「それはどういうこと?」「なんでそんなことしたの?」と、事情聴取のように過剰に反応してしまうと、子どもは「これはママが好きな話題」と受け取ってしまい、今後もそのような話を続けるかもしれません。そのため、「そうなのね」くらいのスタンスで、聞いていた方がいいですね。気になる場合は、園の先生に相談してみてもいいかもしれません。
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Q:相手が嫌がっているかの加減がわからず、やりすぎてしまうことがある3歳の息子。大人が入ったほうがいいですか?
A:そばにいてサポートしてあげるのがおすすめ!
いくら言語が発達してきているとはいえ、3歳同士では、上手にコミュニケーションが取れないこともしばしば。
加減がわからずやりすぎてしまってトラブルになりがちな時は、子どもの近くにいて、お友達とのやり取りを見守った方がいいかもしれません。お友達との中に割って入っていくのではなく、「〇〇くんは、こう言いたかったのかな?」とサポートするようなイメージがいいですね。
遠くから見ていると微妙なニュアンスがわからず、トラブル発生という時に、つい、自分の子どもにきつい言い方をして、悲しい結末になることもあります。もし、我が子はコミュニケーションが苦手、と思うようなら、なるべく近くにいてあげましょう。
親子の会話をたくさんすることが子どもの発語を促す
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おなかの中にいる時から、子どもはママやパパの声を聞いていると言われるほど、親の声は子どもにとって親しみのあるものであり、その声は子どもの気持ちを落ち着かせてくれます。
目の前にあるものや、今日あったこと、うれしい気持ちなど、どんなことでもいいので、積極的に会話をするようにしましょう。そうすることで、子どもは「もっと話せるようになりたい」と思ったり、「こんなふうに話すんだ」と学んだりしていきます。
写真・イラスト:PIXTA
監修:宮里 暁美(みやさと あけみ)
お茶の水女子大学特任教授
お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。
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