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「読み書き必須?」「登下校が心配」 小学校入学前、ママパパの困りごとに答えます!


卒園・入学シーズンが間近の今、新しく始まる学校生活、とても楽しみですね。しかし、その反面、「ひらがなが書けない」「カタカナが読めない」「一人で登下校できる?」など、入学前ならではのお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。お茶の水女子大学特任教授で、幼稚園教諭やこども園の園長なども務めてきた宮里暁美先生に、お話を聞きました。

 

小学生になることは、大変なことばかりではない

幼稚園や保育園は、慣れ親しんだ環境の中で先生やお友達と共に過ごし、お昼寝をしたり、遊んだり、比較的リラックスしていた子どもが多いのではないでしょうか? そして、朝来るときも夕方帰るときもママやパパと一緒ですよね。

それが小学生になると、初めての環境の中で登下校も子どもだけですることもあり、不安に感じられる子どもやママやパパも多いかと思います。そんな想いが膨れ上がり「小学生になったら一人でやらなきゃいけないんだよ」「字が書けないと小学校には入れない」などという声かけになってしまうこともあるかもしれません。

大人は、小学校に入ることを一度経験しているので、大変な部分をピックアップしてしまいがち。でも、実際のところは大変なことだけではなく、楽しいことだってたくさんあるはずです。大変なことを伝えてはいけないとは言いませんが、同じくらい楽しいことがあることも伝えて、できるだけ、子どもがフラットな気持ちになれるようにしてあげるのがいいですね。

 




年長さんママパパの「小学生になったら不安なこと」Q&A



入学を控えた子どもを持つママやパパは、実際どんなことを不安に思っているのか聞き、
そのお悩みに宮里先生が答えてくれました。



Q:入学前にしておいたほうがいいことはありますか?

A:その子の興味があることを中心に、できたことを認めてあげましょう

絵本を読んだり見たりしてお話の世界に親しんだり、ブロックで自分が想像したものを作り上げたりなど、どんなことでもいいのですが、その子が興味のあることに注目して、できていることを認めてあげてください。

例えば、絵本を読むことが好きな子は、文字に親しむだけでなく、想像をふくらませ物語を思い描く経験を重ねることで、国語の勉強の基礎が培われると思われます。ブロックや積み木などを立体的に組み立てる遊びは、数学的な体験につながるものです。
遊び以外でも、お手伝いをすることもいいですね。家族の箸や皿を並べることで、3人分だから3個ずつという数字の概念に触れる経験にもなります。

親はどうしても我が子の苦手なことが気になって、それを克服するようにと努力させてしまいがちですが、できることや好きなことを認めながら伸ばしていくと、勉強に興味を持つきっかけになることもあります。
もちろん、国語や算数だけではなく、体を動かすことや歌をうたうことも同じく、その子の好きなことに注目し、認めてあげてください。そうすると、子どもは自分に自信を持つことができ、自己肯定感が育まれていきます。


 

Q:文字の読み書きに興味がありません。持たせるのは?

A:書く・読むきっかけを探してみて!

電車が好きな子は、新幹線の名前や駅名を見ることが字を読むことのきっかけになったり、恐竜が好きな子は、恐竜の名前を見てカタカナが読めるようになったりすることがあります。そのように、子どもが好きなものを入口にすることで、字の読み書きへの興味を抱くことにつながり、とても効果的です。

もし、読み書きを促しても書こうとしない、興味を持たない場合は、「どうして興味を持たないんだろう?」というところに関心を持ってみてください。字だけではなく絵を描くこともあまりしない場合は、書く・描くということに自信がないのかもしれません。「〇〇ちゃん下手!」などと言われた経験から、人前では書きたくない子もいます。

自分の名前が書けたり読めたりすると自信につながるようですが、その中に難しい時があると困ってしまう子もいます。例えば「いおり」という名前の場合、「い」と「り」は上手に書けるけど、「お」が難しい、ということがあるようです。そのような時は、得意な「い」や「り」をたくさん書かせてあげて、「お」は大人が書いてあげるのもいいですね。

このような時、心がけたいのは、書けた字をたくさん褒めてあげることです。
失敗するのは誰でもこわいですよね。話を聞いたり、観察をしたりすることで、我が子がどのような理由で読み書きに興味を持たないのかが見えてくることもあります。
「早く読み書きできるようにさせなくては!」という親の焦りは、あまりいいことを呼びません。大器晩成の子もいるので、一人一人のペースが違うことを理解し、今できていることを認めてあげてください。



 

 

Q:落ち着きがなく、授業中、座っていられるかが心配。

A:子どもは日々成長しているから大丈夫!

ママやパパの前で落ち着きのない行動をしていたとしても、園や学校ではしっかりしている場合もあります。
子どもの学校での様子を見られるような機会(授業参観など)があったら、ぜひ、積極的に参加して見てみてください。授業参観で心配な姿を見かけるかもしれませんが、学校や先生を信頼して、任せて欲しいと思います。

学校から「〇〇くんが授業中に歩き回って~」などという連絡がくることもあると聞きます。そんな連絡が来たら、思わず「何やっているの!」とわが子を叱りたくなる方もいるかもしれません。しかし、今、目の前で起こっていることではないので、そんな風に叱ってもあまり意味も効果もなく、子どもの中に「叱られた」ということが残るだけです。

そのため「なんでそういうことをしたの?」と、冷静に聞いてみるのはいいと思います。「消しゴムが転がっていっちゃって」「〇〇ちゃんに貸してあげようと思って」など、子どもなりの理由を話してくれることもあります。それを聞いた上で「そういう時は、こういうふうにするといいんだよ」と解決策を教えてあげるようにしましょう。

また、落ち着いた家庭生活を送っていることもとても大切です。休日の予定がハードで疲れてしまうと学校での生活に影響が出るなんていうことも。家庭生活のあり方を見直すチャンスにするのもいいですね。


 

Q:一人遊びが好きです。集団行動ができるかどうか……。

A:一人遊びはとても大切!

小学校から帰って来るなりランドセルを投げ捨てて友達と遊びに行く子もいれば、家でゆっくり一人で遊びたい子もいます。小学校ではたくさんの人に囲まれて過ごしているので、安心できる家の中では静かに過ごしたいという気持ちもわかりますよね。

保育園や幼稚園生から小学生になるのは大きな変化です。その子が安心できる過ごし方ができるよう、ママやパパがありのままの我が子を受け止めること、それがとても大切だと思います。



 

 

Q:学校に行きたくないと言われたらどうすればいいですか?

A:まずは話を聞いてみて。

どんな理由でそう言っているのか、まずは話を聞いてみましょう。学校から帰って来たときは「行きたくない」と言っていたけど、翌朝は何事もなかったように行くこともあります。
子どもから「行きたくない」と言ってこない限り、「行けるの?大丈夫?」などとは言わずに、普通に過ごすようにしましょう。翌朝になっても行きたがらない場合、「パパと一緒に歩いて行く?」「学校から帰ったら〜する?」などと、いくつかのパターンを提案するのもいいですね。

心配が高じると最悪の状態を想像してしまいがちなので、あまり一人で悩まずに、学校の先生や先輩ママなど、信頼できる人に相談してみましょう。学校は、絶対に行かなくてはならない場所ではありません。まずは我が子の言葉に耳を傾けてみてください。


 

Q:和式トイレを使えるかが気になっています。

A:一度体験してみるのもいいかも!

今の時代、日常生活の中で和式トイレを使う機会はあまりないですよね。しかし、一部の小学校では、和式トイレを使うこともあるかもしれません。
もし不安な方は、入学前の説明会などで先生に確認してみるといいですね。学校でもそうですが、例えば、災害などで被災した場合、もしかしたら和式トイレを使うこともあるかもしれません。

公民館や一部の公園、昔からある美術館などで和式トイレを見かけた時に、子どもに「こういうトイレがあるんだね。試してみる?」と声をかけてみるのもいいですね。絶対に使えるようにならなければいけないわけではないので、無理をしない程度で大丈夫です。



 

 

Q:登下校や友達と遊ぶ時、一人歩きの注意点はありますか?

A:「我が家ルール」を作りましょう。

小学校に入学すると言っても、一人一人状況は異なると思います。一人で登下校をする子、学童保育を利用する子、兄弟が同じ学校にいる子、通学時間が短い・長い子など。

「横断歩道を渡る時は右、左、右を見る」のような交通ルールのように、登下校のルールはコレ!ということを伝えるのは難しいことです。そのため、家庭ごとに親子で守ることができる「我が家ルール」を作るようにしましょう。
数が多すぎると覚えきれなくなるので、覚えられる数に絞ることがポイント。一度決めたら変えないのではなく、その都度、話し合ってアップデートしていくことも大切です。


 

Q:ママ友付き合いが苦手です。

A:無理しなくてOK!

親同志の仲が良いということに縛られた子ども同士の関係は、ゆくゆく息詰まっていくことが多いです。親同志の仲が良いからと言って、子ども同士が仲良くならなければいけないわけではないですし、その逆もそうです。「ママ同士も仲良くしたほうが子どもにとってもいいかな?」などと考えず、自分ができる範囲のお付き合いを心がけましょう。

また、ママ友の付き合いの中で、子どものことを比較するような場面があるかもしれません。そういう時も、「自分は自分」と割り切って、あまり比較しないようにすることも大切です。


 

子どもを信じて、「認める」「見守る」ことを大切に



子どもは大人が思うよりも繊細で、自分ができていないことをしっかり自覚しているものです。そのため、大人が「あれもできない、これもできない」と言うと、どんどん自信を失ってしまいがち……。勉強や友達関係、通学のことなど、気になることは山ほどありますが、まずはできていることをきちんと認めて、「できない」のハードルを下げてあげましょう。そうすることで、少しずつ自信をつけて、さまざまなことに取り組んでいけるようになりますよ。
うれしい春がもうすぐそこに来ています。楽しみに歩いていきましょうね。

写真・イラスト:PIXTA



監修:宮里 暁美(みやさと あけみ)

お茶の水女子大学特任教授
お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。

 


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