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子育て・教育

「なぜなぜ期」は黄金期! 興味関心を育むと「学び」につながる


2歳くらいから「なんで?」「どうして?」と、さまざまな疑問をくり返し質問してくる時期があります。お茶の水女子大学特任教授の宮里暁美先生に、「なぜなぜ期」の子どもとの接し方について、お話を伺いました。


大人には想像のつかないような不思議を感じている子どもたち

2歳くらいになると、子どもは「なんで?」「どうして?」と、繰り返し質問をしてくる時期がありますよね。2歳前の子どもでも、指を指して「ん!ん!」と必死に何かを訴えるような仕草を見せることもあります。
それらは、「なぜなぜ期」などとも呼ばれていますが、子どもの成長の中で見られるごく普通の行為であり、知的好奇心の始まりでもあります。
目で見たもの、耳で聞いたものなど、さまざまなものに対して疑問を抱くことは、とても大切なことと理解しましょう。



実際に子どもが「なんで?」と聞いてきたことの例
A:なんでお月様は僕のあとをついてくるの?
B:なんで虫の足の数は虫によって違うの?
C:太陽はどこにあるの?
D:湯気って何からできているの?
E:なんで私の名前は「春香」なの?


大人は「知ってる」「わかっている」と思い疑問に思うこともないことでも、子どもにしてみたら、とても気になることであり、答えを知りたいと感じています。大切に受け止めて、いろいろな答えを返してみましょう。
大切なのは「応答」です。お子さんとのやりとりを楽しんでください。

子どもが聞いてきたことに対しての応答の例
A:なんでお月様は僕のあとをついてくるの?
→本当だね。まだついてきてるかな?
→お月様は〇〇ちゃんのことが好きなのかもしれないね。帰ってからインターネットで調べてみようか。


B:なんで虫の足の数は虫によって違うの?
→そうなの?バッタは?ダンゴムシは?人間はどうだろうね?など。
→足の数が違うことによく気づいたね! 昆虫図鑑を見てみようか?


C:太陽はどこにあるの? 
→どうして、それを知りたいの?
→地球から1億5千万キロぐらい離れたところにある星だよ。地球に光や熱を与える源になっているんだ。


D:湯気って何からできているの?(料理している時の湯気を見て)
→○○ちゃんは、何でできていると思うの?
→湯気はどんなところで見かけるかな?そこにヒントがあるかもしれないね。


E:なんで私の名前は「春香」なの?
→春香ちゃんが生まれた季節は4月だから、季節の「春」が入る名前にしたかったんだよ。
→ママの名前は□□なんだけど、そのわけはね・・・。


一つの問いに対して、それぞれ二つの答えの例をあげました。
大事にしたいのは「おしゃべり」です。
「どうしてだと思う?」とその子の意見を聞いたり、「どうしてなんだろうね?」とお母さんやお父さんも不思議に思っているという姿勢を示したりすると、子どもたちは、さらによく考えるようになります。
その時間がとても貴重なのです。
もちろん、辞書に載っているような正しい情報を伝えられる場合はそれでもいいですが、あまり早く答えに行きついてしまうと面白くないですね。
子どもたちが欲しいのは、「なんだろう?」「どうしてだろう?」という思いを、お母さんやお父さんと共有している時間そのものなのですから。
その場でわからなければ正直に「わからないから一緒に調べようね」と言っても大丈夫です。答えが分からなかったり、答えづらかったりするからと言って、適当に受け流すことはできるだけしないほうがいいですね。
適切な答えが返せなかったとしても、子どもが気がついた視点に注目し、「よく気がついたね」「その考え方は素敵だね」と、子どもの「なんで?」を認める声かけをしましょう。
「なぜなぜ期」は、絶好の親子のコミュニケーションのタイミングとも言え、まさに子どもの成長の黄金期なのです。

 

興味関心を伸ばすことは「学び」の意欲を向上させる



※出典:「新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について」(文部科学省)をもとに作成

文部科学省は初等中等教育の中で「新学習指導要領」を定めておりその中で、子供たちに必要な力を三つの柱「学びに向かう力や人間性」、「知識や技能」、「思考力、判断力、表現力」として、整理しています。
学校教育の中でこの3つの柱を子どもたちがどのように学んでいくのかというと、3つの視点が必要とされています。

1    主体的な学びの視点
学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。

2    対話的な学びの視点
子ども同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。

3    深い学びの視点
習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

※出典:「新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について」(文部科学省)

 

少し難しい話になりましたが、さまざまな職業がAIに移り変わると言われているこれから先の未来。そんな時代を生き抜いていくために、今の学校教育では、物事に興味関心を持ち、自ら問いを立てて取り組んでいくことが何よりも大切とされています。
そのため、「なぜなぜ期」は、そのベース作りとしても貴重な時期と言えるでしょう。

 




なぜなぜ期・子どもの興味関心に悩むママ・パパからのリアルなお悩みにアンサー!




Q:子どもに「なんで?」と聞かれたので答えると、大して聞いていません。どこまで説明したらいい?

A:気になったらまた聞いてくるでしょう
ママやパパに「なんで?」と質問しながらも、違うことが気になってしまう、気になっていたことを忘れてしまう、なんてこともよくありますよね。その場で答えられることを伝えて、聞いてなければそれで終わりにしていいと思います。再度気になった時に、また同じことを聞いてくるかもしれませんね。


Q:息子はあまり好奇心がありません。どうしたら好奇心をもってくれますか?

A:機会を与えることは大切だけど、無理強いはNG!
視覚や聴覚、嗅覚など多様な感覚に刺激を与えてくれるような環境に連れて行ったり、体験をさせたりすることで、好奇心を持つきっかけになることがあります。
例えば、雨の日に外に出てみたり、紅葉のきれいな頃に木々の中を歩くなど、日常生活の中でできそうな範囲で十分です。
それでもあまり興味を持たなければ、無理強いしてやらせなくてもOK。子どもの行動を観察して、興味がありそうなものを探していきましょう。




Q:興味があって始めた習い事をすぐにやめたいと言います。やめさせてOK?

A:いったん休んで様子見を
子どもが習い事に行きたくないといったり、練習をしなかったりすることがありますよね。「自分でやりたいと言ったんでしょ」と言いたくなることもありますが、大人でもそういうことはあると思います。
その習い事自体が嫌なわけではなく、もしかしたら、先生やお友達との関係で何かがあったのかもしれない、うまくできなかったことがトラウマのようになっているのかもしれません。さまざまなところに目を向けたり、子どもと会話をしたりしてみましょう。
それでも「やめたい」と言っている時は、もちろん、やめてもいいと思いますし、お休みができるのであれば、いったん休んで様子を見るのもいいですね。
もし、やめることになったとしても、「ピアノをさわってドレミファソラシドがわかるようになってよかったね」「スイミングに通って、大きなプールの中で顔をつけられたこと、すごかったと思うよ」など、前向きな声かけをしてあげることで、できるようになったことを自覚し、その習い事の時間が豊かなものに思えるでしょう。


Q:体を動かす習い事をして欲しいです。どのようにしたら子どもが興味を持ちますか?

A:生のものに触れる体験をして、出会うチャンスを設けましょう
習い事を始めるきっかけは、子どもが「やりたい」と言い出す以外にも、ご近所の人でやっている人が多かった、親が子どもの頃にやっていた、運動神経が良くなって欲しいと思ったなど、さまざまだと思います。
どんな理由であれ、子どもが楽しそうに通えているならいいと思いますが、気乗りしない子どもに無理強いするのはあまりおすすめできません。
まずは、その習い事に関連する体験をさせること。例えば、それがサッカーであれば、家族でサッカーボールで遊ぶ、テレビでサッカーの試合を見る、サッカークラブの体験会に参加するなどがあります。
それまでは興味がなかったことでも、実際に体験することを通して、興味関心を持ち、習い事を始めるきっかけになることもあります。




Q:小学校入学を控えています。塾にはいつから行かせた方がいいでしょうか?

A:他の習い事と同様に、無理強いはしないほうがいいですね
小学校に入る前にひらがなが書けたほうがいい、数を数えられたほうがいいと、不安になる方もいるかと思います。そのタイミングで、学習塾に行かせたり、プリントやドリル学習をする方もいますよね。
子どもがそれを楽しんでやっていれば問題ないと思いますが、そうでない場合は、勉強はイヤなものだという気持ちを植えつけてしまう可能性があります。気をつけましょう。
小学校に入ると、保育園や幼稚園の時とは環境が変わり、そこになじむだけでもとても大変。すんなりなじむ子もいれば、なかなかなじめない子、中には「学校に行きたくない」「ママやパパと一緒にいたい」などと言う子もいるかもしれません。
そのため、入学前は学校に行くことを楽しみにできるような声かけをしていくことが大切です。あまり無理をさせずに、前向きな声かけをして、子どもと接してあげるようにしましょう。


「なぜなぜ期」に大切なのは興味関心への共感




「なぜなぜ期」の大切さについてお話をしてきました。子どもに「なぜ?」「どうして?」聞かれる内容やタイミングによっては、戸惑ったり、イライラしたりすることもあるかもしれません。中には、「しっかりと、正しいことを答えなければ!」と力が入ってしまう方もいますよね。
しかし、「なぜなぜ期」への対応で一番大切なのは共感です。その子が不思議に感じたことに対して「あなたはそんな風に考えているんだね」「その見方をママはできなかったよ。素敵だね」と、認めてあげるようにしましょう。
子どもが興味関心を持ったことに対して、共感する気持ちを持っていると、子どもは「疑問に思っていていいんだ」「不思議に思うことはすてきなことなんだ」と感じて、自己肯定感も高まり、学ぶ意欲を育むことにつながっていきます。



監修:宮里 暁美(みやさと あけみ)

お茶の水女子大学特任教授
お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。

 


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