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子育て・教育

【子どもの食事のお悩み】 好き嫌いを克服するよりも大切なこと


“子どもの食事”について、悩んでいるママやパパは多いですよね。お茶の水女子大学特任教授で、幼稚園教諭やこども園の園長なども務めてきた宮里暁美先生に「好き嫌いが多い」「集中して食べない」「食事に興味がない」など、具体的なお悩みも挙げながら、お話を伺いました。


食事は食べさせられるものではなく「食べるもの」

子どもの好き嫌いや食べムラ、食事をする時のマナーについてなど、悩んでいる方は多いですよね。「好き嫌いをせずに食べて欲しい」「マナーを守って欲しい」と思うばかり、つい必死になってしまうこともあるかと思います。
しかし、本来、食べることは生きる上で必要なことで、親が食べさせるのではなく、子どもが自分で食べるものということが大前提です。
もちろん、子どもの年齢にあった食べ物の硬さや形状、味付けへの配慮は必要ですが、家族で一緒に楽しくおいしく食事をする、ということが一番大切なことだと思います。
ママやパパがおいしそうに食べているところを子どもに見せると、子どもは「食事は楽しい」「おいしいものを食べたい」という前向きな気持ちを持つようになります。


 




“子どもの食事”に悩むママ・パパからのリアルなお悩みにアンサー!




子どもの食事について悩んでいるママやパパたちの声に、宮里先生はどのように答えるのか、早速見ていきましょう。



Q:食べる量が少なくて心配です。どのくらい食べていれば大丈夫ですか?

A:元気に遊んでいるようならばあまり心配せずに様子を見て
食べる量が少ないと心配になることがありますよね。でも食べる量には個人差がありますから、昼間元気に遊び、排便、排尿もあるようならあまり気にしない方がいいかもしれません。1歳半や3歳など、節目の検診で相談してみてもいいですね。
大切なのは「おいしい!」という気持ちです。一口を味わって、「おいしいね」と喜び合いましょう。たくさん食べることを求めると、食べることが負担になってしまう子どももいます。食べる気持ちを大切にして、食べる量を心配するのは、やめておきましょう。
中には感覚過敏で、白いごはんやパンしか食べられない(何かが混ざっていたり、塗ってあったりするとNG)子もいますよね。そういうお子さんと出会ったことがありますが、白いご飯中心に美味しく食べてとても健康でした。白いごはんは食べられているなら、そのうち、他の食べ物も大丈夫になってくるかもと長い目で見てもいいかなと思います。
その子が食べる・食べないに関わらず、「この野菜はブロッコリーって言うの。甘さがあっておいしいよ」と、食べ物のおいしさを伝えることは大切にしていきたいですね。
また、食べやすさ、への工夫は大事です。お茶碗に入れていたごはんを小さなおにぎりにする、ハンバーグを小さく作るなど、その子が食べきれる量や大きさで食卓に並べてみましょう。
そして、子どもが食べきったら「全部食べられたね」と声かけを。そのような体験を重ねることで、「食べる」ことへの気持ちが前向きになることが大切だと思います。


Q:好き嫌いが多いです。特に野菜はほとんど食べられません。

A:食べられないことを受け止めてあげましょう
食べものの好き嫌いは、克服させなくては!と、課題にしている方も多いのではないでしょうか?
しかし、子どもは大人が「なんとか食べさせなくては」と必死になればなるほど、胸が詰まってしまうのか、さらに食べなくなってしまうこともあるように思います。

【子どもの好き嫌いを見つけたら】
好き嫌いは成長の証
離乳食の時はパクパク食べていたのに、2歳ごろから食べなくなることもあります。そんな時は、味覚が発達している証と、ポジティブに捉えましょう。

同じ栄養素が摂れる代替品を探す
「にんじん→かぼちゃ」「なす→紫いも」「ごぼう→納豆」など、同じ栄養素を摂取できる代替品にも注目するのもいいですね

子どもを調理に参加させる
こども園では、園庭で栽培したピーマンなどを調理して、その場で食べることがあります。
いつもは食べない子も、「おいしい!」と言ってパクパク♪ 皮むきでも味見係でもいいので、調理に参加することもおすすめです。

大人が食べる姿を見せる
これはどんな食のお悩みにも共通していますが、大人がおいしく食べるところを見ると、子どもの「食べたい」気持ちが引き出されます。
実は、ママやパパも好き嫌いがある、なんてことも。好き嫌いがあることは、当たり前のこととして捉えていると気が楽になります。



 

 

Q:食事時間が1時間かかることも……。もっと早く食べて欲しい!

A:なんで遅いのか原因を見極めて!
一般的に満腹中枢が刺激されるのは20~30分と言われているので、1時間は少し長いですね。園での食事も年齢によりますが、食べている時間は20~30分くらいです。
なぜ、1時間もかかっているのか、理由を見極めてみることがおすすめ!
「おやつの量が多くておなかが空いていない」「視線の先にあるおもちゃが気になって集中できない」「食卓に一人でいるのがさみしい」このように、さまざまな原因が考えられます。まずは、その原因を排除するようにしましょう。

【食が進まない・興味がない子には】
食べ始めは家族みんなで!
子どものごはんを食卓に出して、ママやパパは家事を続けている、なんてこともありますよね。見ていない間に食べていて、ママが席に着くころには、満腹になっているのかも。
忙しい時も、食事開始から10分ほどは席に着き、子どもと一緒に「いただきます」をしましょう。

食べものについての話をする
「今日の魚は鮭っていう名前なんだよ。塩を振って焼いているから、ごはんと一緒に食べると美味しいのよ」など、今日のごはんの話題を出すのもいいですね。名前や作り方を説明すると、その食材に興味が出るきっかけになることも。

大人がおいしく食べている姿を見せる
好き嫌いのところでも話しましたが、食べない子どもに「食べなさい」と言うよりも、大人が「おいしい!」と頬張る姿を見せることの方が、よっぽど効果的! 「パパは次に、このじゃがいも食べようかな」と、食を進める声かけをするのもおすすめ。

 

 

 

Q:手づかみ食べはいつまでしていてもいいですか?

A:2歳くらいからスプーンなどを使う子が多い
手づかみ食べは、食べることへの意欲の表れとして、とても大事なことです。手指の発達を促すためにも、さまざまな触感を感じてもらいたいですね。
だいたい2歳くらいになると、スプーンやフォークに興味を持ち始めて、少しずつ使い、3歳くらいにはスプーンやフォークで食べている子が多くなります。
スプーンやフォークをうまく使えない場合、手首をうまく使えてないのかもしれません。なぜ、スプーンやフォークを使いたがらないのか、じっくり観察してみてくださいね。




Q:あまり噛まずに飲み込んでしまいます。

A:噛むことにフォーカスした声かけを
保育の現場では、コロナ禍で職員がマスクをしていたため、口元を見せながら「カミカミ」と言えない時期があったこともあり、このお悩みを聞く機会が増えた気がします。
一緒に食事をしている時に、実際に噛んでいる口元を見せて、「〇〇くん、見ててね。カミカミ、カミカミ。一緒にカミカミしてみようか」などと、噛むことにフォーカスした声かけをするのがいいでしょう。
そして、食卓に出す食べ物も嚙み応えがあるものがあるといいですね。あとは、嚙みちぎらないと食べられない切り方をすることもおすすめです。
例えば、食パンも小さなサイコロ状に切ると、ひと口でパクっと食べてしまいますが、スティック状だと噛みちぎらないと食べられませんよね。そのように、「噛まないと食べられない」食べ物を意識的に出すこともおすすめです。


Q:箸の使い方や、こぼさないよう注意することなど、食事のマナーは教えるべきですか?

A:楽しく食事をすることが優先!
離乳食の頃は、スプーンを子どもの口元まで持って行って食べさせていますよね。でも、最終的に口に入れて飲み込むのは、その頃から子どもの意志です。
箸を使うことに興味を持ったら、箸を使うことで今よりももっと食事をすることが楽しくなるかもしれません。それなら、持ち方を教えてあげるのもいいですね。
しかし、教えることが課題になると、熱が入り過ぎてしまうこともあるので要注意。
箸をうまく使えていないのは、手首をうまく使えていない可能性もあるので、クレヨンで絵を描いたり、紙をちぎったりして、手首を動かす練習をするのもいいでしょう。
お茶などをこぼさないように、というのは、わざとこぼしているわけでなければ、問題ありません。器に安定感はあるか、量が多すぎないかなどを確認してあげつつ、こぼしても問題ないよう、敷物をしたり、布巾を準備したりしておきましょうね。
マナーを気にするより、「食事をすることは楽しい」ということを知ってもらうことの方が何よりも大切です。


毎日の食事で「今日も一緒に食べられてよかった!」を感じて




子どもの食事についての悩みは、ママやパパからの悩みとして、常に上位にあがってきます。「順調に成長して欲しい」「健康でいて欲しい」と願うあまり、「好き嫌いが多い」「食べるのが遅い」ということを課題にして、改善するために必死になってしまうのでしょうね。でもそうなると、食事中に「そうじゃない!」「食べなさい」と言ってばかりになって、食欲も失せてしまう、ということになってしまいます。 
食事の中で一番大切なのは「楽しく食べること」。
「ピーマンが食べられなかった」「30分で食べきれない」と、できないことを数えるより、「卵焼きを全部食べられた」「お味噌汁をおかわりできた」と、できたことを数えて、“食”の大前提にある「食べることは喜び」ということを忘れないようにしましょう。
そして、食事の準備を一緒にしたり、採れたての野菜を冷やして食べてみたり、など、「食べる楽しさ・面白さ」を親子で味わう生活を大切にしていきましょう。



監修:宮里 暁美(みやさと あけみ)

お茶の水女子大学特任教授
お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。

 


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