KADOKAWA Group

Children & Education

子育て・教育

“癇癪”はどうにかしようとしなくていい! 今の子どもの発達段階を知ることが大事


子どもに何を言っても聞く耳を持たないほど、大泣きをしたり、イライラを爆発したりさせる癇癪。「どうしたらいい?」と悩んでいる人も多いですよね。お茶の水女子大学特任教授で、幼稚園教諭やこども園の園長なども務めてきた宮里暁美先生に「子どもの癇癪」について、お話を伺いました。

癇癪の理由はひとつではない!もしかしたら理由はないのかも?

“癇癪”という言葉は、足をバタバタさせてイラだったり、大声で泣いたりというシーンを想像させますよね。“癇癪”は要するに「イライラしている」「パニックになっている」「気持ちを爆発させている」状態のこと。それは、幼児期に限らず、大人にだってあることです。しかし、大人には自制心があり、いわゆる“癇癪”と呼ばれる状態にまでなることはあまりありません。それに比べて2歳~3歳頃の子どもは自制心が未熟であり、自我をまだ作っている真っ最中なのです。

 

 

癇癪が起こりやすい1歳半~2歳半は
こんな時期

①【運動】とにかく本能のままに動き回りたい
歩き方が安定し、小走りや飛び跳ねることも可能に。ものを投げたり、いすからジャンプしたり、大人が「ダメ」と言ってもくり返します。それは足や腕の筋肉を発達させるため、脳から「体を動かせ!」と命じられている時期だからなんです。なので、この時期は自由に動ける場や時間を多くとって、体を使って遊ばせてあげましょう。

②【言語】大人の言葉を理解、3語文を話すように
言葉の発達は個人差が大きいもの。言葉があまり出ていなくても、大人の話に態度でこたえて理解している様子ならば心配いりません。次第に、「パパ、きた」という2語文から「ママ、ごはん、たべた」という3語文へと進んでいきます。

③【生活】サポートすればできることがふえる
手先の動かし方、体の使い方が上手になって、靴を履いたり、服を脱いだりできるように。やりたい気持ちが芽生えてきますが、うまくできずに癇癪を起こすこともあります。扱いやすい道具や環境を整えることで、子どもたちの育ちを支えることが大切です。

④【社会性】少しずつママやパパから離れて遊べるように
見知らぬ人や場所になじみにくく、ママやパパが一番という子も多いですが、同世代の子が気になり始め、遊ぶ姿をチラチラ見たり、マネしたりします。それぞれのペースを大切にしましょう。「自分がやる」の自己主張の時期なので、ものの奪い合いもおこりがち。乱暴な行動は止めつつ見守ってあげましょう。

癇癪


脳が劇的に発達し、成長が目覚ましいこの時期。やりたいことがやりたいようにできずに、感情が爆発したり、パニックになってしまうことがあります。個人差はありますが、2歳半を過ぎると、少しずつ気持ちの切り替えができるようになります。「今はそういう時期なんだ」と知ることで、ママやパパの気持ちも少し楽になりますよね。
 




“癇癪”に悩むママ・パパからのリアルなお悩みにアンサー!



 

今、まさに子どもの癇癪に悩んでいるママやパパのリアルなお悩みの数々。宮里先生の回答を見ていきましょう。


Q:そもそも癇癪ってなんで起きるの?

A:さまざまな要因が混じり合っていることが多い
何か特定の嫌なことがあって「イヤイヤ~」となっているというよりは、さまざまな要因が混じり合っている可能性が高いです。
例えば、公園にお出かけをして、まだ遊びたかったのに「もう帰ろう」と言われた+おなかが空いている+疲れた+この状況をどうやって言葉にすればいいかわからない。このように、気持ちの部分と生理的な部分が混じり合っていたり、それを表現できる方法がわからなくてパニックになっていたり、理由はひとつではありません。
そして、それが癇癪という形になりますが、その強弱は人それぞれ。とても強く出る子もいますし、あまり出ない子もいます。
強く出ている子は、自分の気持ちを表すことができているとも言えます。逆にあまり出さない子は、うまく出しきれずにため込んでいる可能性もあります。日ごろから「イヤな時は『イヤ』って言っていいんだよ」と声をかけてあげましょう。



Q:買い物に行くと決まって機嫌が悪くなります。スマホやお菓子で機嫌をとるのはだめですか?

A:できるだけ子どもと一緒に買い物に行かないようにしたいですね
どうしても子どもと一緒に買い物にいかないといけないという状況もあると思います。しかし、買い物に行くたびに機嫌が悪くなるんだとしたら、それは子どもからのサインと受け取って、できるだけ子どもを連れて行かないようにしたいですね。
もしかすると、「スーパーの音がうるさい」「寒い」「カートの乗り心地が悪い」など、買い物をしている大人には分からない子ども目線での嫌なことがあるのかもしれません。そこに疲れていたり、眠かったりという要因が絡んでいることもあります。できれば、誰かに預けて買い物に行ったり、ネットスーパーを利用したり、連れて行かない環境を作ることが一番望ましいですね。
もし、連れて行ったとしても、お菓子やスマホで機嫌を取るのはあまりおすすめできません。買うものをメモなどにまとめて、なるべく短時間でササっと済むようにし、子どもにも事前に「5分で終わるから、少しだけ付き合ってね」と話すなど、工夫してみましょう。


Q:スーパーや電車など公共の場で癇癪を起こすと、「恥ずかしい」「迷惑をかける」と、焦る気持ちからきつく叱ってしまうことがあります。

A:きつく叱るのは逆効果。ひとまず落ち着かせることが優先
たしかに、公共の場で大きな声で泣いていたり、寝転がって足をバタバタしていたら、焦ってしまいますよね。でも、そこできつく叱ってしまうと火に油を注ぐことになってしまいます。なので、なだめられるようならなだめて落ち着かせたり、その場から一度離れたりしたほうがいいですね。そして、落ち着いた時に「走らないでって言われたことが嫌だった?」などと、何が嫌だったのかを聞いてみましょう。
癇癪を起こすことが重なっている時期は、お子さんにとってストレスが強まる場所には行かないなど、お出かけ先を考えるほうが良いですね。どうしてもこの電車に乗らなくてはならないという時には、その子の気分が変わるものを、いくつか用意しておくといいかもしれませんね。

 

Q:イライラすると噛みつくことがあります。どうしたらいいですか?

A:人を傷つける行為はNG! きっぱり伝えましょう
①危険なことをした時 ②人を傷つけることをした時 ③人に迷惑をかけた時。この3つのシーンでは、きっぱりと「だめ!」と伝えるようにしましょう。
「あれはだめ」「これもだめ」と一日中言っていると、子どもは何がだめなのかが分からなくなってしまいます。「しつけのために細かく注意しなくては!」と力を入れ過ぎずに、この3つの場面以外は許容したり、「だめ!」以外の伝え方をしたりするのがおすすめです。

 

Q:癇癪を起こすと全く聞く耳を持ちません。どうしたら話を聞いてくれますか?

A:その場で答えを導き出さなくて大丈夫!
赤ちゃんが泣いていると「おなかが空いている」「おむつが濡れている」「眠い」「熱い・寒い」のどれかだと思いますよね。そして、その泣いている原因を取り除いてあげた時に泣きやんでくれると、「これだったの~」と、とても満足した気持ちになりますよね。
しかし、年齢を重ねるごとにその原因は複雑になってきて、いくら原因を取り除いても泣きやまないことがあります。そんな時に「眠いんでしょ」「おやつ食べたいんでしょ」と、原因を言い当てたくなりますが、イライラしている人にとって「これでしょ」と断定されることは、さらなるイライラを生む原因になることもあります。
すぐに泣きやませようとせずに、少し距離を取ることで、落ち着くことができたり、そのまま眠ってしまったりします。イライラしている子どもも引っ込みがつかなくなってしまっているので、切り替える場面や時間が必要です。



Q:3歳を過ぎても癇癪がおさまりません

A:なりたい自分になれなくて葛藤しているのかも
3歳を過ぎると、幼稚園などに入園してまわりにいる友達に目が向いて興味をもつと同時に自分ってなんだろう?みたいな部分も育ってきます。その中で、「なりたい自分になれていないこと」へのいら立ちや葛藤を抱えているのかもしれません。
それは3歳以降という年齢でなくても、大人でも一緒ですよね。そういういら立ちは1~2歳の頃の癇癪とはまた違った表し方にもなってきます。もし、気になる場合は、通っている園の先生や子育て支援センターなどで相談してみるといいですね。今のその子の心もちや行動をしっかり捉えた上でアドバイスをもらったり、より良い育ちになるようなかかわり方を聞いてみましょう。

 

“癇癪”はその時期特有の成長過程という捉え方を



「うちの子は癇癪を起こす子」と、思ってしまいがちかもしれませんが、本当は「今は癇癪を起こす時期」と捉えると、少し気持ちが楽になりませんか。イライラしたり、感情があふれ出すということは大人になっても続くことなので、とても自然なこと。
それをどう消化していいかわからない幼児期は、どうやったら親も子もご機嫌で一日を過ごすことができるのか、まずは子どもを観察してみましょう。「こういう遊びをずっとしていたいんだな」「この時間になると眠くなる・おなかが空く」「このおもちゃがあると機嫌がよくなる」など、観察することで、癇癪との向き合い方も変わって来るかもしれませんね。

実は、保育の中では「癇癪」という言葉をあまり使いません。
癇癪を起こしている、という言い方は、どこか、思いやりに欠ける言葉のように思えるからです。いろいろなことが重なったことによって引き起こされた状態で、本人も実は、どうしていいか分からなくなっていたりする状態なのです。
今は、そのような状態にならなくなった大人もまた、みんな、小さかった頃に、大なり小なりの癇癪を起こして、大きくなったのです。暖かな目で見て、広い心で受け止めてほしいです。



監修:宮里 暁美(みやさと あけみ)

お茶の水女子大学特任教授
お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。


 


年齢別おすすめ絵本を紹介



この記事をシェアする

特集

ページトップへ戻る