
ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第十二回は、おとなも笑って楽しめる絵本『オニじゃないよ おにぎりだよ』です。

『オニじゃないよ おにぎりだよ』(シゲタサヤカ作、えほんの杜)

今回はシゲタサヤカさんの『オニじゃないよ おにぎりだよ』です。

僕は、この本が出たときにタイトルにひかれて、すぐに買いました。
オニだからおにぎりが好きっていうのが最高です。ダジャレから内容が決まったかのような……(笑)。
期待を裏切らないラストのオチに向けてずっと助走している感じですよね。

そうそう。

オチは、読んでのお楽しみですけど。

この絵本は、おにぎり好きなオニが主人公なだけあって、おにぎりがすごくおいしそうで。シゲタさん自身がきっとおにぎり好きなんだろうと想像しちゃいますね。

そうですね。シゲタさんの絵本は、絵がはっきりしていて、それでいて楽しいんですよ。ちょっと離れていても絵がよく見えるので、保育園の読み聞かせやおはなし会でも活躍するんです。特徴は目が白目で。

そうですね。全員白目ですね。

すぐにシゲタさんの絵だって分かりますよね。素晴らしい個性!

大人は「白目!?」って一瞬思っちゃうけど(笑)。
子どもたちは白目に対して何か指摘があります?

全然違和感が無いようです。むしろこれが好きみたい。

オニが、時間の経ったおにぎりを食べたときの表情も秀逸です。

小学4年生の娘は、カピカピになったおにぎりを食べた鬼が、たくさんのおにぎりを作っているところが一番好きだそうです。「どんどんご飯炊いてるし」って言ってました。

たしかに、ものすごい量のごはんを炊いていますね。

この目が覚めるような数のおにぎり。

この場面「おにぎりずかん」とか「おいしいおにぎり」とか、おにぎりの本も描かれている。オニはおにぎりをすごく研究しているんですよね。

おにぎりにエビフライを入れているとかキノコを入れているとか、細かくはっきり描き込まれているので、美しくて見応えがあります。すごく絵本らしいなって思います。
その後、人間がオニから逃げる場面。八百屋さんがネギを持って、魚屋さんが魚を持って逃げている(笑)。こういう分かりやすい表現(ユーモア)を、子どもが楽しむんだなって思いました。

本当ですね。人間が逃げた後の商店街の散らかりっぷりとかね。

そう。分かりやすいです。

慌てて逃げた感じがしますよね。

文章がないページは絵だけで伝わるので、子どもも特におもしろいと思うんです。読む文がないので、おとなはすぐにページをめくりがちなんですけど、絵だけのページはじっくり見たいですよね。子どもと一緒に「貼り紙がしてあるね」とか「魚が落ちているね」とか話してもいいのかなと思います。

なるほど、絵をじーっと見るんですね。もし自分で字を読める子だったら、手書きのポスターの文字も読めますしね。
この本は、誰におすすめしますか?

幼児はもちろんですが、小学生も存分に楽しめると思います。小学生、「ダジャレじゃーん!」って言いますよ(笑)

あとはおにぎり好きかな。

おにぎり好きな子ども、多いですもんね。
あと、もう一つ。
カバーを取ると裏表紙に秘密があるんですよ。カバーの絵と絵本本体の絵が少し違うんですね。こういう遊び心がすごくいいなと思いました。

たしかにそうですね。

時々、絵本のカバーを取ると別の絵が描かれているものがあるんですけど、それは買った人のお楽しみですよね。図書館だと、見られないんで(笑)。

本当だ。買った人じゃないと、たしかに。

ということで、裏表紙まで楽しめる絵本だと思います。

ありがとうございました。

けいたろうさん作『オニじゃないよ おにぎりだよ』のポップ
作:シゲタサヤカ
- 【定価】
- 1,628円(本体1,480円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 257mm×210mm
- 【ISBN】
- 9784904188149