
ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第十一回は、おとなも笑って楽しめる絵本『ノラネコぐんだん パンこうじょう』です。

『ノラネコぐんだん パンこうじょう』(工藤ノリコ著、白泉社)

今回はノラネコぐんだんのシリーズの中から『パンこうじょう』ですね。シリーズの第1作目です。けいたろうさんは、この絵本をお友達にプレゼントしたとおっしゃっていましたね。

おとなも一緒に楽しめる絵本だから、プレゼントしました!

出産祝いにプレゼントしたんですよね? 生まれたての赤ちゃんにはちょっとまだ早いんじゃないですか?

そうですね(笑)。生まれたばかりであっても「こんなにおもしろい絵本あるんだよ、赤ちゃん絵本じゃないけどおもしろいでしょ?」っていう提案としてぴったりな本だと思っているんですよね。

なるほど。確かに、おとなのファンもすごく多いシリーズですよね。お話のおもしろさだけじゃなくて、絵のかわいさや、キャラクターの良さみたいなところがあるのかなと思っています。

はい。この絵本のなかで、パンが並んでいて、選べるページがあるんです。“選ぶ”ってすごくおもしろくて、僕がこの絵本を読むときにおすすめするのは「ママはこれ」って言いながら、おとなもパンを選ぶこと。

パン屋さんの中にパンがずらーっと並んでいて、外からノラネコぐんだんがのぞいてるシーンですね。ノラネコぐんだんがパンを選ぶわけじゃないんだけど、パンがたくさん並んでいるから「どれにする?」みたいな感じで、子どもと会話を楽しむっていうところですね。

そうです。パンがすごく魅力的に描かれているから、そういうふうに遊んでもいいかなと思います。

サンドイッチやチョココロネ、食パンも……、みたいな。おもしろいですよね、マーミーちゃんのパンとかもありますしね。

いろいろありますね!

食育になりつつも、絵本としてのおもしろみがあるところが、人気の理由なのかな、と思いました。

ぼくは、ノラネコぐんだんが夜中にパン屋さんに忍び込むときの、泥棒の表現もおもしろいなと思って。ノラネコぐんだんがほっかむりをしているんです。ほっかむりは子どもにはわからないでしょ(笑)、みたいなところはあるんだけど、こういうふうに、ちょいちょいおとながおもしろがるようなポイントもあるんですよね。
あと、工場が爆発するというベタな展開も良いですよね。娘が一番おもしろかったのは、ふくらし粉をドバッと入れちゃうところだと言っていました。

なるほど、パンの作り方をわかっていてのおもしろさですね。

そうですね。「全部入れちゃえ」っていう、やっちゃいけないということをやってしまうおもしろさがわかりやすくていいと思います。

確かにそうですね。ふくらし粉って言っているから、ふくらむっていうのはわかるんですね。だから「いっぱい ふくらまそうよ ぜんぶいれちゃえ ドバッ ニャー」と、やってはいけないことをしている、ということは理解できるんですね。

そう!

ふくらし粉を一気に入れちゃって、「どうなっちゃうんだろう?」って、このときに子どもとしてはドキドキしているということですね。

それで問題を起こして、結果的に反省するという。

反省した直後に、じゃあ帰ろうかなという発想になるのもかわいいですね。

そう。「それでは わたしたちは これで しつれいします」って帰ろうとしたのだけど、逃げないで工場をちゃんと直すところがおもしろいと娘は言っていました。

お子さんの視点が面白いですね。

子どもなりにいろいろ思うところがあるみたいですね。

このお話では、パン工場がドッカーンって破壊されたのに、パンがめちゃくちゃ綺麗に焼けているじゃないですか。この迫力がいいですよね。

こうやってやって話していて、おとなもおもしろがれるじゃないですか。親が笑いながら読むのって一番楽しいはず。楽しそうな親を見て、子どももつられて笑うので。それがすごく、大事だと思います。

確かに、そうですね。

最後に、この絵本を誰にすすめたいか教えてください。

絵本を好きになりたいママパパへ、ですかね。この絵本がきっかけで、絵本好きになるかもしれない可能性を大いに持った1冊だと思います。ノラネコぐんだんのファンになったら、続きもいっぱいありますし。次にも繋がりやすいと思います。

確かに確かに。そうですね。ありがとうございます。

けいたろうさん作『ノラネコぐんだん パンこうじょう』のポップ