
ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第九回は、タイトルが秀逸な『でんにゃ』です。

『でんにゃ』(パイ インターナショナル)

けいたろうさんは元々『でんにゃ』をお持ちだったんですよね?

はい。持っていました!

どういうところが好きで持っていたんですか?

まずタイトルが素晴らしくて。タイトルで内容がわかって、超おもしろそうだなと思って手に取ったら、やっぱりおもしろかったっていう作品ですね。

『でんにゃ』は、体自体が電車になっています。

夢の乗り物だと思います。電車好きにも猫好きにも刺さるという、素晴らしいアイディア。
[電車+猫=でんにゃ]というところと、「ガタンゴトン ニャニャンニャニャン」で、やられたと思いました(笑)。

なるほど。駅も魚屋、屋根とか……この辺もすごい猫っぽくて、いい駅だなと思いますね。

そうですね。まさに電車猫だなっていう感じですね。

この絵本は動物たちの表情もいいですよね。
でんにゃの猫はもちろんなんですが、犬も表情が豊かです。

うちの娘に、「『でんにゃ』のどこが好き?」って聞いたら、でんにゃ猫の表情がおもしろいって言っていました。

表紙の絵は、目が半開きで眠そうな表情ですね。
路地裏の赤信号で止まったときの猫の表情もまたすごくいい。

そうですね。表情がころころ変わるのも、子どもたちが見ているポイントなのかなと思います。絵をじっくり見てるのは間違いなく、おとなより子どもですね。

そうですね。
話は耳で聞いて、目は絵を見ているから、文字を追わないで絵を見ている。

そうです。
だから、僕が読み聞かせがいいっていうのがそこなんです。おとなになると文字ばかり追ってしまって、絵をあんまり見ていないんですよ。でも、読み聞かせをすると、文字を読めるおとなや小学生も絵をじっくり味わえる。僕は子どもが大きくなっても読み聞かせをしてもらいたいなと思っています。小学生もそれが嬉しいから「読んで」って言うのかな。

そうですね。結構大きくなっても読んでって言いますよね。

読んでもらった方が自分は絵を味わえるから。やっぱり大好きな親御さんとか大好きな先生とかに読んでって言うのは当然かなと思います。

この絵本は、文を担当する人と絵を担当する人の、二人の作家が作っています。
僕も大塚健太さんも、絵本の文章作家っていう立場なんですけども、お話ができたときに僕らは絵が描けないわけですよね。だから絵描きさんにお願いするわけなんですけど、お話に合った絵描きさんに絵を頼めたら、すごく良い絵本になる。この本は二人が最高に合った例だと思います。

そうですね。

この話が気に入ったら、大塚健太さんの他の作品も見てみたりとか。
柴田さんとのコンビじゃないものも見てみるとおもしろい。絵はいろんな人に頼んでいるので「これも大塚さんなんだ」ってなりますよね。

確かにそうですね。それで大塚さんの絵本にいろいろと派生して、絵を描く人の方にも派生して……と、どんどん絵本の輪が広がっていく感じですね。
この絵本はどんな人にすすめますか。

そうですね。親子で読むのにも向いていると思いますし、子どもさんの小学校で読み聞かせを頼まれたときにもいいと思います。

何年生ぐらいまで読み聞かせで楽しめますか?

全学年で楽しめると思います。
高学年だからって、内容が難しいものや文章が長いものを選ばなないといけないわけでもないんです。この絵本は、絵と文章のバランスがとても良い絵本ですから、高学年でもおもしろいと思います。ガタンゴトンニャニャンニャニャン〜♪って。

なるほど、そうですよね。どうもありがとうございました。

けいたろうさん作『でんにゃ』のポップ