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今回ヨメルバ編集部からけいたろうさんに読んでほしい絵本として選んだのは、『ファーガス どーこだ?』(偕成社)です。この絵本をおやこで読むときの魅力を、けいたろうさんに聞きました!
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『ファーガス どーこだ?』(偕成社)
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今日は『ファーガス どーこだ?」 です。かくれんぼが苦手な子どものために読んだらとても喜ばれたという推薦がありました。
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実はぼく、最初にこの絵本をパラパラ見たときは「これおもしろいのかな?」って思ったんです(笑)。ファーガスが隠れているんだけど、「ここにいる」ってだれもが分かるくらい、バレバレ過ぎるから…。
でも、読み聞かせをすると、子どもはおもしろがっていたんです。子どもと一緒に3~4場面読むと、おとなもじわじわおもしろくなってくる。
「すくなっ!」とか、「ちっちゃー!」とか突発的に思わず出てきた言葉がうまいですよね。子どももそんな風にツッコミたくなる。「シカかーい!」なんてツッコミも、お笑い芸人みたいで楽しいです。
読者とキャラクターがやりとりしているかんじが、子どもがおもしろがるポイントなのかな。
逆に言うと、ぼくが「おもしろいのかな?」と思ったのは、この本を客観的に読んだから。
主観的に自分が本のなかのキャラクターとやりとりをするように読んでいけば次第に楽しくなってくるんです。
あとは関西弁で文章がかかれているのもおもしろい。おしゃべりをしている印象になりますよね。
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ファーガスはずっとニコニコというかニヤニヤしながら隠れているんですが、文章は、ずっとファーガスの行動に関西弁でツッコミをいれているんですよね。会話みたいなんですけど、じつはファーガスは一言も喋っていないんです。
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本当ですね。会話形式の絵本だから、どこかでファーガスがしゃべっていると思っていました。対話形式の絵本なのに、対話していないのがおもしろい。
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文章のツッコミを聞いたファーガスが、そのツッコミに反応してまた別の隠れ方をするから、やりとりのおもしろみにつながっていますよね。子どもたちは漫才を見ているような感覚になるんですかね。
けいたろうさんのお嬢さんたちの反応はいかがですか?
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小学生の娘も笑っていました。繰り返し読むと、さすがに物足りなさを感じるようですが、最後の探し絵は何度も楽しんでいましたね。
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こいう関西弁の本って、けいたろうさんはどういう風に読むんですか? けいたろうさんは関西弁話者じゃないですよね。
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関西弁の絵本は、おもしろいなと思いつつ、お話し会ではトライできなかったですね。関西弁を真似するのが恥ずかしい気もして。
家ならむしろ楽しいですよね。しらない言葉にチャレンジするという点でおもしろい。英語にチャレンジするときに似ているかな。
家庭での読み聞かせで関西弁の絵本や地方の言葉の絵本を、正しい発音はわからないけれど読んでみるっていうのはおもしろいですよね。
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その気持ち、すごく分かります。講演会ではないけれど、慣れ親しんだ保育園で読む勇気はありますか?
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勤務している保育園にはこの絵本を持って行きました。ソファで座って読んでいたら、めちゃくちゃ人気で子どもたちが集まってくる。路上パフォーマーに人だかりができるかんじ(笑)。みんなでファーガスを見つけて指をさしたりするです。子どもたちの興奮がエスカレートすると、ファーガスを見つけた子が手のひらで隠しちゃう。自分がゲットしたみたいなかんじで、手でおおうんです。そうすると、周りの子がすごい怒るの。「取られた」みたいで腹が立つんじゃないかな。自分が指さした後に他の子が指さすというのもいいんだけど、自分が取った、自分が見つけた、「はい締め切りでえす」という感覚なのかもしれない。
全ページでファーガスを見つけたあとは、子どもに達成感がただよっていました。やりきった、見つけ切ったという(笑)。
その後も園の本棚に置いておいたら、次々とひとりで読んでいます。さっきみんなで読んだときにはできなかったけど、ひとりだったら、自分の手柄にできる。文を読まなくても楽しめる絵本だから、一人読みにもいいのでしょうね。おとなに読んでもらっているときも、彼らはめくった瞬間にさがしてますし(笑)。
絵本を保育園に置いて帰って、次に保育園に行った時には、新しかった絵本がすこしくたびれていました(笑)。
探し絵の絵本って、「見つけられた」「できた」「すごいでしょ」っていう達成感がある。子どもが本を舞台にして遊べる感覚なのかな。
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けいたろうさん作『ファーガスどーこだ?』のポップ
作:マイク・ボルト 訳:加瀬健太郎
- 【定価】
- 1,440円(本体1,400円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 29cm×23cm
- 【ISBN】
- 978-4-03-348590-4