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俳優・杏さん、絵本翻訳に挑戦! 『おこりんぼまじょコルヌとノン! ノン! ピエール』 「え? この展開!?」と想像力をかきたてる フランスでシリーズ180万部突破のユーモア絵本の魅力とは。

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俳優、モデルとして大活躍する傍ら、この度、フランスの絵本『おこりんぼまじょコルヌとノン! ノン! ピエール』の翻訳にもチャレンジされた杏さんに、作品の魅力や翻訳の裏側、そして絵本という媒体への愛情についてお話を伺いました。




 

◆想像力を掻き立てる、日本では考えられないラスト

―――書籍の翻訳は初めての経験だったとのことですが、『おこりんぼまじょコルヌとノン! ノン! ピエール』の翻訳を受けようと思われたきっかけは何だったのでしょうか? 

杏さん:私はフランスと日本の二拠点で生活をしているのですが、この本はフランスで大人気なんです。私の子どもが学校で使っている副読本にも選ばれていましたし、わが家にも子どもに欲しいと言われてシリーズの数冊があって、もちろん私も知っていました。そんなときにタイミングよく翻訳のお話をいただいたので、これも縁だと思ってやってみよう、と決めたのです。

―――この絵本を初めて読まれたときの印象はいかがでしたか? 特に、独特の終わり方について伺いたいです。 

杏さん:そうなんです、フランス的と言っていいかはわかりませんが、日本ではあまり考えられない結末ですよね(笑)。 日本だと「スープは体にいいから食べなきゃね」みたいな教訓的な話になりがちな気がするのですが、この本は、読んだ後に「この後どうなったんだろう?」って話が弾むような、想像力をかきたてる余白があるのがすごく面白いなと思いました。 大人だと「え、この展開?」って思うところでも、子どもたちは大好きな“トイレ”といったシーンのおかげで、けっこうすんなり受け入れたりするのかも、と感じました。 



大人たちに嫌いなスープを「食べなさい」と言われ、断固拒否するピエールの姿から物語が始まります。


 

―――杏さんの翻訳は、読み聞かせがしやすいリズム感と、ピエールのセリフの子どもらしいユーモアが特徴的だと感じました。翻訳される上で、特に意識されたことはありますか? 

杏さん:ありがとうございます。未就学児から小学校低学年くらいの子どもたちが読むことを想定していたので、やはりピエールの「切れ味」を保ちながら、ユーモラスな言葉遣いを意識しました。例えば、「なんだって?」という繰り返しのセリフや、ちょっと笑っちゃうような言い回しは、子どもが声に出して読んで楽しんでくれるように工夫しました。  大人に対して自分の意見を言ってみたり、ちょっと反抗してみたり、大人が間違ったときに「間違ってる!」と言うときの子どもって、なんだか「やってやったぞ!」みたいな嬉しい気持ちになるんですよね。そういったピエールのかわいらしさや頑固さも表現したかったんです。 

◆悩んだ言い回し、でも一番優先したのは“子どもが楽しめること”

―――ピエールのキャラクターが生き生きと伝わってきました。また、まじょコルヌとピエールとのやり取りも見所のひとつです。子どもたちには、普段はあまり口にしない方がいいといわれている言葉を堂々と言っちゃう爽快感も味わってほしいですね。ちなみに翻訳しているとき、難しさや苦労を感じた点はありましたか? 

杏さん:やはり、フランス語のニュアンスや韻を踏んでいる部分を、日本語でどう表現するかは難しかったです。たとえば原著では、ピエールとまじょコルヌのやり取りは韻を踏んでいるのですが、そこを内容を生かしながら踏襲するのは日本の子どもたちに馴染まないと思いました。内容を生かしつつ、2人のやり取りの面白さと言葉遣い、そして読んだときのリズム感を考えて訳したつもりです。フランス語を知っている人が読んだ時にどう感じるかということも考えてしまいましたが、でも一番は子どもが楽しめることを優先しました。翻訳監修をしてくださった伊藤敬佑先生には何度もご相談させていただき、たくさんのアドバイスをいただいいて本当に感謝しています。


「嫌いなスープを食べないと、真夜中にまじょコルヌがやってくるぞ」とおどかされても平気だったピエール。でも真夜中にクローゼットの扉がギギギッと開いて…! ここからはじまるピエールとまじょコルヌの言葉のたたかいに注目です!


 

―――韻を踏んだり、独特の終わり方だったりと文化の違いを感じますね。

杏さん:たとえば「ドンブラコ」という日本語の響きとかわいらしさを違う言語で表現するのって難しいと思うのです。本書も、原著の“韻を踏む”という手法よりも、ピエールとまじょコルヌのやり取りのおかしさを優先しました。
結末についても、余白があるというか「これはなんだんだ?」と少し困惑しちゃってもいいと思うんです。フランスらしいウィットに富んでいる感じを、難しく考えずに楽しんでもらえれば嬉しいですね。

◆絵本は国も年齢の垣根も超えられる、大好きなコンテンツ

―――大の読書好きで知られる杏さんですが、絵本という媒体自体についてどう思われていますか? また、書籍もデジタル化が進む現代において、紙の絵本にどのような魅力を感じていますか? 

杏さん:世界中で翻訳されている絵本がたくさんあることからもわかるように、国を越えて愛される素敵なコンテンツだと感じます。さらに絵本は子どもから大人まで楽しめるというのが素晴らしいと思っています。 日本の絵本も海外でたくさん翻訳されて読み聞かせられていますし、子どもたちの世界はどんどんボーダーレスになっているなと感じています。そして紙の本は匂いや手触り、ページの質感といった五感で感じられる部分も大きいですよね。
 もちろん電子書籍も便利で、わが家のように海外で過ごす時間が長い場合は、日本の本をすぐに読める電子書籍は欠かせないですし、うちの子どもたちも活用しています。ただ家族で一緒に読むとか、ひとりでじっくりとページをめくるという体験は、やはり紙の絵本だからこそ得られるものだと思います。

―――最後に、ヨメルバの読者の方々へメッセージをお願いします。

杏さん:『おこりんぼまじょコルヌとノン! ノン! ピエール』は、小さい男の子と魔女が出てくるというところから予想される物語とは、ちょっと違うものになっていると思います。また、文字の大きさや文字の並べ方にもこだわって制作した素敵な絵本になりました。ぜひ、実際に読んで楽しんでいただけたら嬉しいです。 


杏さんの絵本への愛情と、作品への思いが感じられるインタビューでした。『おこりんぼまじょコルヌとノン! ノン! ピエール』をお読みいただき、ピエールとまじょコルヌの対決!? をお楽しみください!

<プロフィール>

杏 あん
2001年デビュー。雑誌、映画、ドラマなどで幅広く活躍。主な出演作品に NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』、NTV『花咲舞が黙ってない』シリーズ、CX『競争の番人』、映画『キングダム 運命の炎』、『私たちの声』、『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』、『窓ぎわのトットちゃん』(声の出演)、『かくしごと』などがある。2022 年に国連 WFP 親善大使に就任し、同年日本とフランスで二拠点生活をスタート。


 

書籍情報


訳: 文: ピエール・ベルトラン 絵: マガリ・ボニオール

定価
1,980円(本体1,800円+税)
発売日
サイズ
A4変形判
ISBN
9784041157305

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