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子育て・教育

会話に加わろうとする子ども、どう対応する?  専門家に聞く年齢別の適切な声かけとマナーの教え方


誰かと話をしている最中に「ねぇ、ママ」「パパ見て!」などと子どもから声をかけられることはありませんか? 場合によっては、話に割って入っているようにも思えて、イライラすることも……。お茶の水女子大学特任教授で、幼稚園教諭やこども園の園長なども務めてきた宮里暁美先生に、そんな時の対応について話を伺いました。


子どもが会話に加わろうとしてくるのはなぜ? コミュニケーション能力が低い?

子どもの言葉の発達には個人差がありますが、おおむね、生後数ヶ月から始まり、喃語、一語文、二語文へと進んでいきます。はっきりとした言葉を話すことができなくても、「おいしいね」「楽しいね」などの言葉を聞いたり、自分が発した「あー!」という言葉をそばにいた大人が「あー!」と柔らかな声で繰り返したりすることで、「言葉が行き交う」という嬉しさを体験しています。身近にいる大人と応答的な関わりを重ねる中で、人と関わる力(コミュニケーション能力)の基盤が育っていきます。4〜5歳頃になると、相手の言うことを理解しようとしたり、伝わるように話そうとしたりなど、話す力が伸びていきます。

幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の一つとして「言葉による伝え合い」があります。言葉を通して先生や友達と心を通わせ、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身につけるとともに、思い巡らしたりしたことなどを言葉で表現することを通して、言葉による表現を楽しむようになることが求められています。

相手の話の内容を注意して聞いて分かったり、自分の思いや考えなどを相手に分かるように話したりするなどして、言葉を通して教職員や友達と心を通わせることができるようになるためには、身近な大人である、お母さんやお父さんとの会話がとても重要になります。そのような意味で、お子さんが話に入ってきた時の受け止め方がとても大切だと思います。

会話の途中に子どもに話しかけられたらどう対処する?  具体的な2つの対策



①「何かな?」とまず受け止める
会話をしていた相手にちょっと待ってもらって、子どもの話を聞き、「そうなんだね」と受け止めます。そして、「もう少しで話が終わるから待っていてくれる?」などと、子どもにも分かりやすいゴールを伝えて、元の会話に戻ります。

② 先の話を切り上げて、じっくり話を聞く
例えばお兄さんと話していた時に、「聞いて!」と弟さんが言ってきたとき、いつもお兄さんの話を優先していると感じていたら、お兄さんにちょっと待ってもらって、弟さんの話を聞いてもいいかもしれません。

子どもが大人の話に加わろうとしてくる時には理由があります。「その話、私も知ってる!」「ぼくはこう思うから聞いて」「ねぇ、ちょっと話が長くない?」など、理由はさまざまですが、大人の会話を邪魔しようと思っているのではなく、自分も会話の輪の中に入りたいという積極的な気持ちの表れです。マナーが身についていないというわけではありません。おしゃべりをしているお母さんやお父さんを見て、「人と話すのは楽しそう」と感じたからこそ、「聞いて!」と加わってきたのだと思います。話したいことがあるって素敵なことです。どうぞ大事にしてください。

会話中に話しかけてくる子どもは空気が読めないのでは?と心配



子どもは話したいことを思いついたり、会話に加わりたいと思ったりすると、「聞いて聞いて」と言ってきます。小学生くらいになると「今、話しても大丈夫かな?」と考えるようになりますが、そのタイミングを測ることはなかなか難しいことですよね。そもそも、人の話に興味を持ったり、話に加わろうとしたりするのは、人と積極的にかかわろうとする大事な力。ですから困ったことと捉えるのではなく、大人の話に加わりたくなったらどうしたらいいかを教えてあげることが大切です。

「今は大切な話をしているから、あとでその話を聞かせてね」

今すぐに切り上げることのできない話をしていたら、子どもにこう伝えましょう。その時、必ず「あとで聞かせてね」と、子どもの話を聞きたい姿勢を示し、大人同士の会話が終わったら「さっきは待ってくれてありがとう」と伝えるといいですね。

「(会話の中で夕食の献立の話をしていたら)〇〇くんはハンバーグが食べたいのね。他にも食べたいものある?」などと会話を楽しみましょう。

夕食の話題への参加は大歓迎です。

 

何か話したいことがあるときに、じっと親の顔を見たり、ニコニコと笑いかけてきたりするなどの姿が見えることがあります。そのようなサインを見逃さずに、「何か話したいの?」と聞いてあげたり、「後でお話し聞くね」と声をかけたりすると、急に割り込んでくる、という話し方ではなくなります。

話しかけられて無視するのは効果なし! 過剰な叱咤もNG



子どもが人の話に興味を示したり、会話に入りたいと思ったりすることは、とても素晴らしいことです。お子さんの「聞いて!」という行動を「大人の話に割り込んできた」と捉えて、叱ったり無視したりすると、お子さんは悲しい気持ちになります。

お子さんが安心して「聞いて!」と言える相手が親なのです。お子さんの「聞いて!」を楽しみにして、「それは何?」「もっと聞かせて!」という対応をしていきましょう。

0~6歳、年齢別の対処法と家庭での習慣づけ



【0~3歳】
言葉を獲得していくとても大事な年齢です。子どもの心が動いて話したいことが出てきたその時を大事にして、しっかり聞いてあげましょう。大人の話はそのあとですればいいです。子どもの言葉を受け止めることは、心を受け止めることでもあります。言葉になる前の仕草や表情で表しているものも含めて、どうぞ、しっかり受け止めてください。

【4~5歳】

話したいと思うことを聞いてもらえたり、言葉にならない思いも受け止めてもらえたりという経験を重ねた子どもは、自分が感じたことや思ったことを言葉で表現するようになります。「聞いてもらえた」という経験を重ねた子どもは、相手の様子を見ながら今なら話しても大丈夫ということを感じ取れるようになってきます。しっかり待てた時には、「待ってくれたんだね。ありがとう」「静かに遊んでくれていたから、お父さんは大切な話ができたよ」と声をかけてください。

【5~6歳】
個人差はありますが、大人の都合も分かってきて、会話の流れを聞いて、今は話さないほうがいいと判断したり、小さな声で要望を伝えたりすることもあるでしょう。自分が考えたこと、感じたことを、相手に分かるように言葉にすることは、学童期の学びにおいても必要とされる重要な力です。親子での対話を大事にしましょう。

【家庭での習慣づけ】
普段から家族で会話をたくさんすることを意識しましょう。お風呂に入っている時、ごはんを食べている時など、おしゃべりの機会はたくさんあります。人の話を聞く、質問をする、説明するなど、おしゃべりの場でなければ体験できないことがたくさんあります。それをくり返す中で「待つ」「話す」のタイミングをつかむこともできます。
お子さんに「その時どう思ったの?」「次は何がしてみたいの?」などと聞いたり、「それはうれしかったね」「次も楽しみね。また聞かせて」などと、会話ができたことが幸せ! と感じられるような言葉をかけることは大切な大人の役割です。

具体的なお悩みに宮里先生がアンサー

子どもが会話中に話しかけて来ないようにするには?

A. 「聞いてもらえていない」と思っているのかも
「見て!」「聞いて!」とお子さんがあなたに言ってくるのは、「お母さん大好き!」の気持ちです。どうぞ、その気持ちをしっかり受け止めてください。しっかり受け止めて、しっかり話を聞いたり、見てあげたりすれば、安心して、ちょっと待てるようになってくるはずです。

何歳くらいから「順番を守る」を教えるべき?

A. 話に加わってくることと、「順番を守る」ことは別のことです
外遊びから戻って手を洗う、レジの会計待ちをするなど、順番は園生活の中でも家庭の中でも、何気ないシーンで学んでいます。どうぞ、そのような生活を大切にしてください。「誰かが話している時は話し出さない」ということ「順番を守る」とは違うものです。

兄弟間で話しかけるタイミングがかぶった時は、どう対処すればいい?

A. 二人とも大事だよ!の姿勢を貫く
親としては兄弟同じように話を聞いていても、自分は聞いてもらえていない、と感じるのが兄弟です。量の問題ではないのかもしれないです。どちらかにだけ偏っていないかな、と自分の関わりを反省しながら、時間を作って、それぞれの話をしっかり聞くようにしましょう。

普段からたくさん会話をして練習しよう!



「会話中によく話しかけられる」と感じると、「空気が読めないのでは?」「話を聞く時間が少ないのかな?」などと不安に感じることもありますよね。しかし、子どもは会話について学んでいる最中だということが宮里先生の話でわかりました。また、子どもの話を聞いてあげられない時は、「さっきはごめんね」「待ってくれてありがとう」と、伝えることも意識していきたいことです。普段からたくさん会話をして、子どもが会話を楽しむことができるよう、サポートしていきたいですね。

画像提供:pixta

監修:宮里 暁美(みやさと あけみ)
お茶の水女子大学特任教授
お茶の水女子大学こども園初代園長として5年間園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。



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