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「きょうだい喧嘩がひどい」「ひとりっ子はわがまま?」 きょうだい、ひとりっ子との接し方


兄や姉がいる弟や妹、弟や妹がいる兄や姉、まん中っ子、ひとりっ子。きょうだいの有無、何番目の子どもかによってなど、それぞれ、ならではの悩みや気がかりがありますよね。今回は、お茶の水女子大学特任教授で、幼稚園教諭やこども園の園長なども務めてきた宮里暁美先生に「きょうだいやひとりっ子」について、気になることを聞いてみました。


きょうだい:「いつでもどこでも平等に」は難しい!

年齢差やきょうだいの人数によるところもありますが、すべてのことを平等にするのは難しいですよね。
例えば、食事時のごはんをよそってあげる順番。兄が先、弟があと?それとも逆?「せーの」でお茶碗を二つ出して「はいどうぞ」で渡す? いろいろなやり方があると思います。
時に、そんなちょっとしたことで、「ずるい!」と不満が出ることもあるでしょう。子どもの言葉にイラッとしたり、心が痛んだりすることもあるかもしれません。
それに対して「よそったばかりだから、ごはんがホカホカだね」。そんなポジティブな声かけをしたり、「今日のかぼちゃおいしそうじゃない?見て見て」と、空気を変えるような声かけをするのがおすすめです。
もしくは、その場は「はいはい」と流して、次の日は順番を逆にしてもいいかもしれません。「ずるい」という言葉は「平等」を求めているのではなく、ただ、その瞬間の寂しさや苛立ちを言葉にしただけということもあります。
また、「ずるい」と言われたわけではないけれど、「いつも妹にかかりきりになっている気がする」など、自分の中で偏りを感じることもありますよね。子ども自身も同じように偏りを感じていることもありますが、意外と気になっていない場合もあります。
1日の中で全部を平等にするのは至難の業なので、1週間、1ヶ月の中でバランスを取っていくといいですね。「私はきょうだいへの接し方がうまくできてない!」と自分のことを責めずに、「ありがとう、大好きだよ」という気持ちを子どもたちにたくさん伝えてあげることが一番です。

 

きょうだいへの声かけで気をつけたほうがいいことの例

 姉妹の髪の毛をしばってあげる順番でもめた時 
 

【NG】
順番があとになってしまった子どもに対して
「あとになっちゃってごめんね。明日は1番にするからね」

【OK】
順番があとになってくれた子どもに対して
「待っててくれてありがとう!きれいに結んであげるね!」とゆっくり話しかける。

子どもは「最後」「1番」のような順位がつくような言葉を優劣のように感じてしまいます。なので、後回しになってしまったことを謝るのではなく、待ってくれたことに感謝をするようにしましょう。

 

ひとりっ子:「ひとりっ子だから」とラベリングしていませんか?




「男の子だから女の子だから」「お兄ちゃんだからお姉ちゃんだから」など、声に出してしまったり、思ってしまったり、ついラベリングをしてしまうことがありますよね。
「うちはひとりっ子だから、わがままにならないか心配」「ひとりっ子には社会性を身につけないと」と、ひとりっ子に関するお悩みを聞くことはよくあります。しかし、保育園や幼稚園、学校などの集団生活を送る中で、社会性はしっかり身につくので、心配することはありません。
ここ数年コロナ禍だったこともあり、人と会う機会が少なくなっていたので、ひとりっ子に限らず社会性を身につけるチャンスが少なくなっていたように思います。なので、積極的に人と関わる場に出かけていくことをおすすめします。
社会性と言うのは、子ども対子どもの中でだけ養われるものではなく、子ども対大人の中でも養われていきます。そのため、ひとりっ子の子どもに対して「お友達と会う機会を待たないと!」と思い過ぎなくても大丈夫。一人でいる時に培われる豊かさもたくさんあります。
私の夫は沖縄出身のひとりっ子ですが、沖縄という土地柄、家にたくさんの人が集まることもあり、小さい頃からたくさんの人の中で育ってきています。きょうだいがいるか、ひとりっ子か、という捉え方ではなく、その子がどんな環境に身を置き、どんな言葉をかけられているかのほうが重要なことです。


 




“きょうだい”“ひとりっ子”に悩むママ・パパからのリアルなお悩みにアンサー!



今、まさにきょうだいやひとりっ子のことで悩んでいるママやパパのリアルなお悩みの数々。
宮里先生の回答を見ていきましょう。




Q:上の子は厳しく育てたこともあり下の子は甘やかしていました。そのせいか、下の子はできないことが多め……。下の子にも厳しくするべきだったでしょうか?

A:上の子と下の子の育児は、環境の違いも大きい
このお悩みは、きょうだい育児のあるあるなのではないでしょうか。初めての子育てである上の子の時には、時に厳しく注意したり、いろいろなことができるようになるまで丁寧にサポートしたりと、慎重になりがちですよね。
ところがその点下の子に対しては、上の子の経験から気持ちに余裕もあり「このくらいいいか」と、容認することも増えてきます。甘やかすということとは少し違うように思います。
あとは、下の子が小さい時は特に、上の子の予定に合わせて行動することが多くなりがちですよね。
例えば、上の子の習い事の時間が迫っているから、早く家を出るために、下の子の着替えも靴を履かせることも全部やってしまっているなんてこともあると思います。そうなると、下の子は自分でできることも「やって」と言うようになるかもしれません。
上の子の育児をしていた時は、1人育児だったけど、下の子が生まれてからは2人育児になりますよね。そもそもそこの違いがあるので、きょうだいの育児に差が生まれることはさほど気にすることではありません。
もし、下の子のできないことや、甘えが気になることがあれば、できる時でいいので、下の子にとことん向き合って、自分でやり切るまで待ってあげてみてください。
例えば、靴を履くこと。うまくできなくて、途中で怒り出すかもしれません。それでも、見守って最後までやり切る達成感を感じさせてあげると、次からは自分でやってみたくなるかもしれませんよ。しかし、次の機会では急いでいて、また履かせてあげてしまう…そんなもんですよね(笑)。でも、いつかは履けるようになる日がくるから、大丈夫ですよ。

 


Q:下の子にはできて、上の子にはできないことがあった時、上の子にどんな声かけをしたらいいですか?

A:両方の子どもを認めるようなまなざしと声かけを
下の子は生まれた時から、上の子の刺激を受けて生活しているので、初めてのことも器用にやってのけたりして、上の子を追い越してしまうこともあるんですよね。
私の個人的な感覚ですが、下の子って追い越すのが好きだなぁと感じます。上の子からしたら、悔しいだろうし、下の子だってすべてを追い越せるわけではないだろうし、そうやって切磋琢磨するような時間を過ごして大人になっていきます。
家庭の中は、食事をしたり、その日にあったことを話したり、眠ったりする場であって、競い合うような場ではないんですよね。
だから、もし、ちょっと気まずい雰囲気になったら「それはそうと、みかんでも食べない?」「麦茶でも入れようか?」と、ちょっと空気を変えてみるのがおすすめです。ママやパパは、そんな空気を変えるワザをいくつか持っておくと、いろんな場面で重宝します。
きょうだい間で競い合うようなことがあった時は、両方を認めるまなざしや声かけが必要です。そんな時おすすめなのは、「七転び八起き」「失敗は成功のもと」「思う念力石をも通す」など、努力を表すようなことわざや、「うさぎとかめ」のような勝ち負けだけではない。ということがわかるものを用いて話をすることもおすすめです。そんな日常的な何気ない声かけやかかわり方が子どもの価値観の中に残るものになりますよ。




Q:きょうだい喧嘩が始まると手が出ることがよくあります。どのように対応したらいいですか?

A:「注意してもまたやるだろう」と思うとしても、諦めずに伝え続ける
きょうだい喧嘩は、きょうだいの悩みの中でも特に多いお悩みです。“手が出る”となると、ケガをしたりさせたりするかもしれないので、見ていて気が気じゃないですよね。
「何度も同じことを言っているのにやめない」「言い続けても意味がないのかもしれない」。そんな風に思うこともあると思いますが、いつかは必ず手を出さなくなると信じて、同じことでも伝え続けるようにしましょう。
手が出るような喧嘩も、始めからずっと見ていると、“手が出る兆し”のようなものが見えるようになってきます。できれば、そうなる直前で仲裁に入るのがいいですが、毎回そうはいきません。
そんな時は、あくまでも中立の立場で「なんでこうなったの?」と、両者に尋ねてみましょう。そうすると、「1回我慢した」「話を聞いてくれなかったから押した」など、すれ違っているところが見えてきます。
結果だけで判断するのではなく、両者の話に耳を傾けた上で、「次からはこうしてみようか?」と、前向きなアドバイスをしてあげるようにしたいですね。

 


Q:家庭の中ではいつも4歳のひとりっ子の娘を優先しています。譲り合いや思いやりを持たせるにはどうしたらいいでしょうか?

A:集団生活の中で少しずつ学んでいくから大丈夫!
ご家庭の中で娘さんを優先しているとのことですが、たまには、ママの都合を優先したり、パパのやりたいことをやったりするのもいいと思います。親のことは後回しにしがちですが、人間関係は子ども対子どもだけではなく、子ども対大人の場合もあります。
いつもは、お子さんが食べたいものを食べに行っているとしたら、たまには「今日はママ、おいしいパンを食べに行きたいんだけど、〇〇ちゃんも一緒に行ってくれない?」と誘ってみるのもいいですね。
また、ひとりっ子だからと言って、譲り合いや思いやりを持てないというのは、違うところもあるので、もし、心配であれば、保育園や幼稚園の先生に様子を聞いてみましょう。親がそのようなイメージを持っているだけで、園では違うということもよくあることです。




Q:7歳男、4歳女、0歳男の3人きょうだいです。末っ子に対しては上の二人は優しくしてくれるのですが、長男→長女の当たりが強く心配です。

A:長女も気にしているのなら、話し合いの場を設けましょう
7歳と4歳ということなので、ある程度、自分の思っていることを言語化できる年齢だと思います。なので、実際に当たりが強いと感じた場面で、「ちょっとごめんね」と話に入り、「今みたいな言い方、ママはちょっと気になるんだけど、〇〇(長女)はどう思った?」と聞いてみましょう。
「別に気にならない」と言うのなら、本人は気にしていないということ。逆にお兄ちゃんの方が「いじわるで言ってるんじゃない」と思われる場合は、「『やめろ!』っていう言い方は、ちょっときつく聞こえてしまうから、次からは『やめてくれる?』って言ってみようか?」と、具体的な直し方を示してあげるのもいいですね。
 そう言われて嫌だと思うか、なんとも思わないかの決定権は本人にあります。しかし、聞いているママが気になるような言葉遣いや態度であれば、それも伝えてあげていいと思います。
その際は、子どもの気持ちを察しながら、なるべく穏やかに伝えるようにするといいですね。

 


Q:5歳と2歳の姉妹です。姉にひらがなや数字を教えている時に妹が入ってきます。二人で机に向かえるようなアイデアがあれば知りたいです。

A:年齢によって発達段階が異なるので、「一緒に」が難しいこともあります
5歳になると、机に向かって絵や字を書くことができるようになる子もいますが、2歳は発達段階として難しいです。
どうしてもその時間にお姉ちゃんがやらなくてはいけないことがある時は、ママが妹の気を引いている間にお姉ちゃんにやってもらうなど、「一緒に」を諦めるのもひとつです。
妹がお昼寝している時間を利用するなど、姉妹それぞれにとって無理のない時間帯を探ってみるのもひとつですね。「年齢的に今は一緒にできないんだ」と、ママが理解することも大切です。


子どもが社会性を身につけるチャンスはさまざまなところにある




きょうだい間ではもちろん、ひとりっ子であっても園での集団生活や親や近所の方たちとの関わりの中で社会性は身につきます。きょうだいがいるほうがいい、何人いるほうがいい、ひとりっ子は良くない、などと決めつける見方を捨てましょう。
きょうだいの有無に関係なく、人との距離の取り方は人それぞれで、すぐになじむ子もいれば、なかなかなじめない子もいます。
どちらが優れているわけでもないので、我が子のタイプを受け入れて、いろいろな人と触れ合う機会を持たせてあげたいですね。



監修:宮里 暁美(みやさと あけみ)

お茶の水女子大学特任教授
お茶の水女子大学こども園園長として園運営に携わり、「つながる保育」を主軸に置いた教育・保育活動を展開。保育の現場や保育者の養成に30年以上にわたり従事。

 


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