2025年は、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』刊行10周年。これを記念して、『世界の歴史』を監修された羽田正 東京大学名誉教授、『日本の歴史 別巻 まんが人物事典』を監修された岡美穂子 東京大学准教授、そして角川まんが学習シリーズ10周年キャンペーンアンバサダー 阿部亮平さんのスペシャル座談会が実現しました!
大学では理工学部に進学し、大学院まで修了した阿部さん。理系のせいか、歴史に苦手感を感じていたそうですが、それは先入観だったかも!?と気づいたよう。後半では、角川まんが学習シリーズ『日本歴史』『世界の歴史』の効果的な読み方について、先生方とお話していただきました。
まんがとしての完成度が高い『日本の歴史』と『世界の歴史』
岡先生:ドラマなどのエンターテインメントをきっかけに歴史の扉を開けるというのはとても重要なことなんです。角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』『世界の歴史』は、まんがとしての完成度が高いのが特徴です。今の子どもたちが親しみやすい絵柄ですし、ストーリーもある。読者の没入感を高めるストーリーと絵がセットになっているんですよね。
羽田先生:教科書を読むよりはこちらを読むほうが、ストーリーとしておもしろいですから。だから、1回では覚えられなくても、2、3回読めば覚えちゃうんじゃないかな。大学受験にも役立つでしょうし、クイズ番組対策にもきっと役立ちますよ。
阿部:そうですね。勉強って繰り返すことが大事なんですよね。どうしても忘れてしまいますから、子どもたちも繰り返して読むことで身につくと思います。
羽田先生:そうしてくれると嬉しいですね。実はこの本、作るのは大変だったんですよ。
阿部:まんがに落とし込むだけでも大変そうなのに、歴史の学習まんがとして、頭にスッと入っていきやすいようにまとめないといけないですよね。きっと試行錯誤されたのだろうなと思います。
岡先生:『日本の歴史』の場合、それぞれの巻に主人公がいて、単なる歴史のストーリーだけではなく、その人を通して自分もその世界に入り込めるような構成を心がけています。
羽田先生:『世界の歴史』も各巻に4つの章があって、それぞれに主人公がいます。しかも、冒頭のまんがにはなぜか私もキャラクターとして登場しているんです。お恥ずかしい話ですが。
阿部:あの「もしもまんが」は僕もいいなと思っていたので、今日、羽田先生にお目にかかったときは「あ、ついにお会いできた!」と思いました(笑)。
角川まんが学習シリーズ『世界の歴史』第7巻の「もしもまんが」。羽田先生が大航海時代の歴史人物たちとクルーズ旅行に出る。
羽田先生:それはこちらが言うセリフですよ(笑)。まんがのキャラになるなんて、もちろん喜んでやっているわけじゃないですよ。編集部にどうしてもやれと言われてね。
阿部:あの構成はいいなと思いました。冒頭の「もしもまんが」で羽田先生と歴史上の人物たちが語り合って物語が始まり、その後の歴史本編で改めて、最初に出てきた人物たちが登場する。冒頭で世界史のまとめを知ることができるのはすごくおもしろいと思います。本編中でも、羽田先生がちょいちょい「実はこうだったんだよね」と言いながら出てくるのも楽しいですし、かつリアルでおもしろかったです。
羽田先生:よくある世界史の本は、ひとつの国の歴史をずっと時代順に縦に見ていき、次に別の国の歴史を見ていくというものが多いんです。でも、角川まんが学習シリーズ『世界の歴史』は、歴史を横に並べているわけですね。一つの巻に、同じ時代のいくつかの地域を必ず取り入れています。これは前例がないだけに、ストーリーを作るのは大変でした。
「グローバル・ヒストリー」をテーマにした『世界の歴史』
――阿部さんには『世界の歴史』から第7巻『ひとつながりになる世界』を読んでいただきましたが、そのご感想は?
阿部:いちばん思ったのは、「一方そのころ」という記述がすごく多いなということでした。でも、それが大事なんですね。ある国である事件が起こったときに、日本ではこういうことが起きていましたと知ることが。
岡先生:「グローバル・ヒストリー」※というのが角川の『世界の歴史』の一貫したテーマなんですよね。特に最近では、日本と世界がどのようにつながっていったのかということを子どもたちに学んでもらいたいという文部科学省の方針もあります。ところで阿部さんは、日本と世界のつながりを知ることが大事だなと思ったことはありますか?
※グローバル・ヒストリー…世界史を、縦の時系列だけでなく同時代の横のつながりにも着目して、世界全体で歴史の流れを捉える歴史理解の方法。
阿部:どうだろうな……(と考える)。クイズ番組で、日本がこの時代のときに世界で起きたできごとを選べという問題が出ることもあって、日本史も世界史も今改めて学びたい気持ちはあります。そのうえで世界の歴史を学ぶのなら、一元的な追い方ではなく、たくさんの国や地域を並べて多元的に学んでいく、この『世界の歴史』はいいなと思いました。
羽田先生:今現在、日本は日本だけでは成り立ちません。こういう状況を理解しようと思ったら、かつてはどうだったのか、今はどういう特徴があるのか、どこが新しく、どこが昔と同じなのかを比べてみなければなりません。『世界の歴史』では、できるだけ現代とある時代の世界全体の見取り図を比べようとしたんですね。一方で、大学受験にも役立つ本でなくてはいけないということで、教科書で重要とされている固有名詞や事項はできるだけ入れています。
阿部:本作りがますます難しくなりますね。そう考えると、よくこのページ数に収まったなと思います。
自分が生きてきた時代を「歴史」として振り返る
――阿部さん、『日本の歴史 第16巻 多様化する社会』を読まれていかがでしたか?
阿部:自分もたどってきた歴史なので、こんなことがあったなあと、ちょっと心がキュッとしました。自分が生きている時代のなかでも忘れちゃいけない歴史がたくさんあるんだなと思い、平成令和の時代の歴史の解像度が上がったように感じました。特に、保育園の待機児童のことが描かれていたところは印象的でした。あのネットの書き込みのことは覚えていましたから。
角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第16巻116-117頁。2016年2月のできごとをえがく。
岡先生:第16巻では2011年からの10年間くらいが描かれています。こうして歴史としてその時代を振り返ってみたとき、当時の20代前半だった阿部さんが感じていたことと違ったりしますか?
阿部:正直にいうと、僕はそこまで色んなことを考えていなかったかもという気が……(笑)。でも、この本では子どもたちが主人公として描かれているので、子どもたちに向けての考え方のガイドラインになっているところがいいなと思いました。あと、すごく今っぽいと思ったのは、いろいろな考え方を尊重した描き方ですね。
岡先生:この16巻で描かれていることは、今まさに問題になっていることだと思うんですが、この内容は子どもたちにも役立つと思いますか?
阿部:この本の子どもたちが、その時日本や世界で起きたできごとに自分たちなりに結論を出して、その上で自分の進路を決めるという描写がすごく印象的でした。実際の子どもたちも、将来を決めるきっかけは日々身の回りで起きていると思いますし、その中で日本や世界で起きていることに、より感度を上げていく手がかりになる本だと感じました。これから日本がどういう国であってほしいかを考えていれば、投票権を得て政治に参加するときに指標になる。それがもっと深まれば投票率も上がるんじゃないかとか、そんなことを考えました。
今、起きていることには必ず歴史的背景がある
羽田先生:阿部さんは、ご自分が生きている時代は歴史学習まんがで1冊分くらいでしょう。私はこの『世界の歴史』なら4冊分を生きているからね(笑)。現在の私たちはなぜこのような行動を取るのか、それはどういう意味があるのかといったことは、近現代をしっかり学ばないとわからないと思いますね。
岡先生:阿部さんはTVでコメンテーターのお仕事もされていますね。今起こっていることには必ず歴史的背景やつながりがありますから、そういったところをおさえてコメントをされると、ますますお仕事が増えそうです(笑)。
阿部:そうですね!(笑) それはまさに僕が今後学んでいかなくてはならないところだと思います。
――では最後に、今回の座談会の感想をお願いします。
阿部:今回、本を作られた方のお話を伺うという非常に貴重な体験をさせていただいたとともに、羽田先生や岡先生とお話しして、今まで歴史が苦手だと思っていたけどそうじゃないんだと思えたのが僕としてはすごく大きな収穫だったと思います。実際、歴史を食わず嫌いしている人は多いと思うんですよ。その人たちが歴史を学ぶきっかけ、勉強する第一歩を踏み出すまではすごく重いと思うんですが、『日本の歴史』『世界の歴史』はその第一歩をすごく軽くしてくれる教材だなと思います。
実は角川の『日本の歴史』は、もともと電子書籍で全部買って読んでいました。だから、今回のお話をいただいてすごく縁を感じたんです。ぜひ今度は『世界の歴史』も読みたいと思います。僕が読んでも楽しいし、しかも何度も読めるというのが角川まんが学習シリーズの唯一無二の強みであり、メリットだと思います。僕がアンバサダーをつとめることで、これから歴史を学ぶ人たちが楽しんで学ぶための一助になれたらなと思います。
羽田先生:阿部さんのお話を伺っていて、ほんとうにいろいろお考えになっていらっしゃるなと思いましたし、実際にお読みになっての感想もいただいて、ありがとうございますというしかありません。『世界の歴史』は意外と役に立ちますので、ぜひ「歴史に学ぶ」お気持ちで改めて読んでいただけると、ますます活躍の場が広がるのではないかと思います。頑張ってください。
岡先生:芸能界やメディアの第一線で活躍されている方が歴史に興味をもってくださると、子どもたちへの影響力もすごく大きいのではと思います。ぜひTVやいろいろなところで「歴史ってこんなにおもしろいよ!」ということを伝えていっていただけたらと思います。
阿部:ありがとうございます。頑張ります!
(終わり)
【座談会参加者プロフィール】
阿部 亮平
1993年11月27日生まれ。千葉県出身
2020年1月にSnow ManのメンバーとしてCDデビューを果たす。
上智大学大学院理工学研究科を修了しており、気象予報士資格をはじめ、世界遺産検定1級、漢検準1級など数々の資格を持ち、クイズ番組にも多数出演するほか、2025年1月からは「ZIP!」金曜レギュラーパーソナリティーとしても活躍。
羽田 正
1953年生まれ。大阪府出身。京都大学大学院文学研究科修了。東京大学名誉教授。著書に『イスラーム世界の創造』(東京大学出版会)、『東インド会社とアジアの海』(講談社学術文庫)、『新しい世界史へ:地球市民のための構想』(岩波新書)、『グローバル化と世界史』( 東京大学出版会)など。2024年文化功労者。
岡 美穂子
1974年生まれ。兵庫県出身。京都大学大学院人間環境学研究科修了。東京大学史料編纂所准教授。著書に『商人と宣教師―南蛮貿易の世界』(東京大学出版会)、『大航海時代の日本人奴隷―アジア・新大陸・ヨーロッパ』(ルシオ・デ・ソウザと共著、中央公論新社)など。
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監修: 羽田 正
- 【定価】
- 27,280円(本体24,800円+税)
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- 【ISBN】
- 9784041153710
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