2025年は、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』刊行10周年。これを記念して、『世界の歴史』を監修された羽田正 東京大学名誉教授、『日本の歴史 別巻 まんが人物事典』を監修された岡美穂子 東京大学准教授、そして角川まんが学習シリーズ10周年キャンペーンアンバサダー 阿部亮平さんのスペシャル座談会が実現しました!
歴史「を」学ぶのではなく、歴史「に」学ぼう
――阿部さんはかねがね、歴史と地理が苦手だったと発言されています。どういうところに苦手意識を感じておられたのですか?
阿部:高校2年の科目選択のときに、世界史か日本史か物理を選ぶことになって、僕は理系だったので物理に進みました。それで相対的に歴史を学ぶ時間が少なくなってしまい、歴史に苦手意識を感じてしまったのかもしれません。
――嫌いというわけではないのですね。
阿部:少しずつですが、歴史のことを知ってみるとおもしろいところがたくさんありますし、今、世界で起きていることと歴史はこうつながるのか!ということをもっと知りたいと思いますね。歴史が苦手というよりは、クイズ番組のジャンルとして苦手ということなのかもしれないです。
羽田先生:クイズ番組というと、暗記したものを頭に入れておいて質問に答えるということですよね。でもそれって、本当に歴史なのかと思うところがあるんですよ。
阿部:そうですね。歴史を理解するということとはちょっと別だと思います。
羽田先生:入試やクイズの場合、どうしてもひとつの答えだけが正解になります。そうすると、「この事件があったのは西暦何年」というのを覚えるしかないのですが、入試を意識した学習のやり方では歴史そのものを学ぶということはできないと思います。本来、歴史には複数の解釈や考え方がありますから。歴史は論理の立て方がいちばん大事なのですよ。論理がなかったら歴史にならない。
阿部:僕が算数や数学が得意だと思った理由は、ひとつ法則を覚えればほかに応用がきくということだったんです。それと、答えがひとつに決まるほうが好きだと考える理系の人は多いかもしれません。
羽田先生:答えがひとつしかないか、複数か、というのは重要なポイントですね。クイズ番組の場合は答えがひとつでもいい。でも実際の世の中には、複数の答え・複数の考えがありうる。歴史の解釈も人によって、または国によっても違います。ただ、最近は、答えがひとつにスパッと決まるほうが好きだと考える人が多くなっていて、世の中がそちらへ向かっているような気がしますね。でも、複数というか、さまざまな考えを知ることができるのが歴史を学ぶおもしろさなんですよ。
阿部:羽田先生のお話を伺ううちに、理系だから歴史が苦手と言いたかっただけかもしれないと思うようになってきました。僕自身、歴史を学ぶこと自体は好きで、楽しいと感じることはありますから。
羽田先生:「歴史を学ぶ」のではなく、「歴史に学ぶ」のが大事なのです。中学・高校くらいまでに基本的なことは学んでおかないといけませんが、その知識が頭に入っていれば、社会に出て実際に活用することができるでしょう。
歴史を学びたくて始めた「世界遺産検定」の勉強
阿部:ここまであまり歴史を勉強してこなくて、大人になって少し学んでみたいなと思って始めたのが「世界遺産検定」の勉強だったんです。旅行に行く気分になって勉強ができるんです。たとえば、富士山という世界遺産があったら、お参りの方法の変化などから歴史的背景を知ることができる。世界遺産検定の勉強で、歴史を感じられたと思います。
岡先生:その勉強はクイズ番組のためという範囲を超えていますね。学ぶモチベーションがほかにもあったのですか?
阿部:クイズの勉強をしていると、いろいろな知識を広く浅く学ぶことになるのですが……以前、「表千家」「裏千家」「武者小路千家」という茶道の三大流派をクイズの勉強で学んだ後に、たまたまお仕事で茶道の先生とお話する機会があったんです。そこで、前に学んだ知識から「どこの流派なんですか?」と、会話のきっかけをつくることができたんですよ。
羽田先生:私も裏千家のお茶を習ったことがありますよ。
阿部:こうしてまた会話がつながりましたね! こんな感じに、知識は、人と人をつなぐ最初のきっかけになると実感するんです。入口しか知らなくても、そこからもっともっと知りたいと思えますし。
岡先生:コミュニケーションのきっかけにもなるんですね。
阿部:それが勉強のおもしろいところです。
――「世界遺産検定」の勉強で、いちばん印象に残っている場所はどこですか?
阿部:大好きなのは姫路城です。僕自身、2度行きました。1993年に日本で最初に認められた4件の世界遺産のうちのひとつで、僕とちょうど同い年なんです。また、尊敬する鈴木亮平さんも世界遺産に精通しておられて、「城を見るときは攻める側から見ろ」とおっしゃっていました。それで実際に攻める側の気持ちで姫路城を見ると、ここから矢で狙われたら太刀打ちできないなとか、ここでは道を間違えたと戸惑うだろうなとか、そういう発見がたくさんありました。自分の中でそういう体験を大事にしていくとよりおもしろいし、もっと知りたいなと思います。
エンターテインメントから入る歴史の扉
岡先生:阿部さんは、戦国時代がお好きなんですか?
阿部:うーん……今のところ、「推しの時代」は見つけられていませんね。
岡先生:もしも将来、時代劇への出演のオファーがあったら、どういうものをやりたいですか?
阿部:たくさん作品がありますけど、やっぱり戦国時代なのかな。義理人情などの感情が交錯した結果として生まれる合戦とか、ダイナミックでおもしろいと思います。学校で学ぶできごとだけではちょっともったいないなと思える史実がたくさんありますから。
岡先生:日本の歴史に関しては、毎年NHKで放送される大河ドラマに合わせて、歴史学のトレンドが変わったり、関連書籍の刊行が増えたりするんです。今年は江戸時代ですが、来年は戦国時代。大河ドラマに合わせて視聴者もその時代に興味をもつので、歴史学もそれに引っ張られてその時代の研究が進展することがあります。その中でも戦国時代は2年に1度くらいは大河ドラマのテーマになるので、やっぱりそこにひかれる人が多いのかなと思います。
阿部:そうなんですか。そういえば大河ドラマで「どうする家康」をやっていたころは、クイズ番組でもそのあたりの時代をすごく取り上げていましたね。僕は友人のえなりかずきさんと一緒に、駿府城跡まで勉強旅行に行ったんです。静岡市の観光名所を回ってみたりもしました。やっぱりそういうトレンドがあるんですね。
角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第9巻66頁。徳川家康が隠居後に住んだのが駿府城だった。
岡先生:はい。エンターテインメントという“歴史への入り口”はすごく広いんです。そういう意味では今回、阿部さんのアンバサダー就任をきっかけに、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』『世界の歴史』を知ってほしいと思います。
【後編】(2025年11月12日公開予定)へつづく
【座談会参加者プロフィール】
阿部 亮平
1993年11月27日生まれ。千葉県出身
2020年1月にSnow ManのメンバーとしてCDデビューを果たす。
上智大学大学院理工学研究科を修了しており、気象予報士資格をはじめ、世界遺産検定1級、漢検準1級など数々の資格を持ち、クイズ番組にも多数出演するほか、2025年1月からは「ZIP!」金曜レギュラーパーソナリティーとしても活躍。
羽田 正
1953年生まれ。大阪府出身。京都大学大学院文学研究科修了。東京大学名誉教授。著書に『イスラーム世界の創造』(東京大学出版会)、『東インド会社とアジアの海』(講談社学術文庫)、『新しい世界史へ:地球市民のための構想』(岩波新書)、『グローバル化と世界史』( 東京大学出版会)など。2024年文化功労者。
岡 美穂子
1974年生まれ。兵庫県出身。京都大学大学院人間環境学研究科修了。東京大学史料編纂所准教授。著書に『商人と宣教師―南蛮貿易の世界』(東京大学出版会)、『大航海時代の日本人奴隷―アジア・新大陸・ヨーロッパ』(ルシオ・デ・ソウザと共著、中央公論新社)など。
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監修: 羽田 正
- 【定価】
- 27,280円(本体24,800円+税)
- 【発売日】
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- 【ISBN】
- 9784041153710
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