インタビュー【前編】では角川まんが学習シリーズについて、また“学びと愛”について、熱く細やかに語ってくれた阿部亮平さん。阿部さんといえば、芸能のお仕事と両立して大学院まで修了し、その後も気象予報士をはじめとする様々な資格試験に合格するなど、大人になっても学びを継続している人としても有名。インタビュー【後編】では、その学習意欲や粘り強さの源、そして“学び”全般に関する彼の考え方に迫ります。
小学生の時に「得意を伸ばすこと」が何より大切
――子どもの頃、ご家族から「勉強しなさい」って言われた記憶はありますか? それとも、言われなくても自分から勉強する子でした?
「しなさい」って言われたことは、もちろんあると思いますよ。例えば「ゲーム1時間やったら宿題しなさいよ」とか、そういうのは全然あったなと思う。でも基本的に“怒られなきゃ勉強しない”タイプではなかったと思います。
というのも――これは本当に一番大事なことだと思うんですけど、得意な科目を伸ばすのが自分でもすごく楽しかったから。小学校の時に算数・国語の夏期講習に通ったことがあるんですけど、算数は好きだからどんどん先に進めるんですよ。級にすると“特級”みたいな。でも一方の国語は5級のままで、全然バランスが取れてない(笑)。でも僕の持論として、初等教育においては“得意”を伸ばしてあげるのが何より大事なことだと思います。レベルが上がるたびに達成感も得られるし、本人が自信を持てる。前編でも話しましたけど、学習まんがで読んで知っていた事柄が授業で出てきたときに「これ知ってるぞ! みんなより先に知ってたぞ」って思える、誇らしい気分。それって何気にめちゃめちゃ大事じゃないかなって。
――得意科目は誰にとっても楽しいものですよね。では逆に、ある程度年齢を重ねて苦手科目を克服せねばという段になったとき、そのモチベーションはどこから引き出したんでしょうか?
これはもう、何かしらの方法で自分を騙すしかないです(笑)。世界遺産検定(※2024年に1級を取得)の勉強を始めた理由も、本当に僕、地理と歴史が苦手で…でも旅行は好きだったので、「旅するときに地理や歴史も知ってりゃ得だぞ」って、目的のすり替えをして、自分を焚きつけてました。そういう意味でも、学習まんがを使うことによって勉強を楽しい作業にすり替えるというのは、本当に僕には合ってましたね。
苦手だとか得意だとか人それぞれありますけど、どちらも“楽しく学ぶ”っていうところに尽きると思います。僕が一番伝えたいのは「勉強って大変なものじゃないんだよ」ということ。ゆくゆくは自分の生活とか人生を豊かにしてくれるものだし、そんなふうに思える環境が大事だなと思います。
多忙な中でも勉強を諦めなかった、過去の自分への気持ち
――何にせよすごいなと思うのが、お仕事をしながら資格試験にチャレンジしようと決意すること。そして目標達成までやり切ることがさらにすごいです。
いやぁ、最近ちょっと勉強が滞ってる分、耳が痛いです(苦笑)。僕の場合はそもそもの性格が負けず嫌いでしたし、アイドルの仕事をする上で“学力”だけがほかの人に負けない取り柄だったから、これを自分の武器にしたかったというところもありますけど…。目標達成まで頑張る粘り強さの秘訣は?って聞かれたら、「過去の自分が決めたことだから、大事にしてあげたい」っていう気持ちですかね。
――ああ、それも自分自身への愛ですね。
そうですね。あと、もしかしたら“もったいない精神”もあるのかも。「せっかくここまで勉強したのに、ここでやめちゃったらもったいない」と思えば、繰り返しやれるんじゃないかな。一度覚えたことでも、人間、ある程度時間があくと絶対忘れるんですよ。これはもうしょうがない。僕もそういうことがかなりありますけど、そうして一回ブランクができちゃったとしても、なるべく早い段階で(勉強を)再開すると、また記憶が戻ってくるんです。人が物を忘れていく忘却曲線っていうのを理解することも大事かもしれません。「今ここまで忘れかけてるから、そろそろやらないとまずいぞ」とかね。
これは仕事にも関係があって、ちょうど(取材当日時点で)明日Snow Manのミュージックビデオの撮影があるんですけど、今回もダンスがめちゃくちゃ難しいんですよ。最初の振り入れが10日前ぐらいにあったんですけど、「本番までの日数を考えると、次は大体〇日までにもう一回リハしたいな」とか、「△日に一旦動画見直しておかないとまずいな」っていうタイミングが自分の中にあって。
――阿部さんほどにもなると、おさらいの期日がだいたい分かるんですね(笑)。
やっぱり人は忘れるものだから、限度はこの辺だなって。社会人で忙しい人とかが勉強に挑戦するなら、そういう計算も大事かもしれないです。そして「せっかく一回覚えたこと忘れちゃうの、もったいないじゃん」って自分に呼びかけること。だから、僕もそろそろ世界遺産の勉強をもう一回やり直さないと…(笑)。検定一級を取ったとはいえ、世界遺産って1000個以上あるんで。常に復習してないとすぐ忘れちゃって、もったいない。あと天気・気象のことも、引き続き学びたいなとは思っています。
阿部さん流・誘惑に打ち勝つ勉強法
――聞いてみたいのが、誘惑に打ち勝つ方法です。友達に誘われて遊びに行きたい、眠たい、動画を見たい、勉強とは関係ないほかの本を読みたい…と、山ほど誘惑があるじゃないですか。そこをどう振り払うかについて、何か阿部さん流のコツはありますか?
誘惑に負けそうになる気持ち、よく分かりますよ。でも「誘惑がある」っていう人は、もしかしたらチャンスかもしれない。その誘惑を“ご褒美”に設定したら、それが一つのモチベーションになるんじゃないかな?「テスト終わった後に読もう」とか、「1時間勉強したら見よう」とか。僕もそうだけど、そうやっていかに上手に自分を騙すかっていうのが、コツなのかもなと思います(笑)。
あとは、いろんな人が言ってることですけど、本当に最初の一歩が大事。時にはどうしても腰が上がらないことだってありますよね。そういう時は「5分でいいからやろう」と思うこと。本当に5分でやめてもいいし、そこから呼び水的に「よし、30分できそうだ」「1時間できそうだ」とつながる場合もあるし。
――以前、カフェでもよく勉強していると仰っていました。だらけないよう、敢えてパブリックスペースでやるというのもコツの一つでしょうか。
それはあります。家でやってたらいつでも寝っ転がれるじゃないですか、それを断つという意味もありますし、「せっかくわざわざ家から出て来たんだから、もっと勉強して行くか」って思えますし。ただしその場合のアドバイスとしては、休憩時間もちゃんと設定しておくこと。「ここまでは勉強する。ここから携帯いじったり、コーヒー飲んだりする時間」とあらかじめ決めて、メリハリをつけてカフェでの時間を過ごせるようにしています。
子ども時代の勉強が「将来役立つ理由」
――ためになります(笑)。ところで勉強が苦手な子がよく感じがちな疑問の一つに、「こんなのやったって、社会に出て何の役に立つの?」というのがあるかと思います。それに対して、阿部さんなら何と答えてあげたいですか?
うーん、こんなこと言ったらあれですけど、確かにそれも否定できないところがあります。僕らの時代で言う「数ⅢC」を社会に出て使うかって言ったら、それ自体は使わないよなぁって(笑)。
だけど使うことがなくても、それを学ぶときに使った思考の過程は確実に役立つと思います。例えば算数に関しては、問題を解決するためにどういう策を採るかっていう順序立てと、その試行錯誤。「これがダメならこっちの方法で行こう」「こういう道筋で解き明かしていこう」みたいな発想は、やっぱり数学の証明とかに通ずる部分があって、今もいろんな問題の解決に応用できていると感じるんです。スムーズな論理立てとか、どう結論づけるかの判断とかは、やっぱり数学を学んできたからこそなんじゃないかなって。
それに、大人になって新しく学ばなきゃいけないことだって沢山あるじゃないですか。お金の管理とか。そういうときにどう取り組んだらいいかっていうのが、小さい頃から勉強している人には、すんなり見えるものだと思うんです。勉強って、“何を”のほかに“どう”学ぶかっていう訓練も兼ねていると思うんですよね、副次的な意味で。だから、どんな科目も将来使わないからといって、やっぱりおざなりにはできないなと。
勉強に苦手意識がある子ほど「学習まんが」を読んでほしい
――最後に、この角川まんが学習シリーズを読む小学生と、その保護者の方へメッセージをお願いします。
僕が小さい頃にも、もちろん学習まんがというのはありましたけど、「学習しよう」と思って読むわけじゃなく単にエンタメとして読み始めたんですよね。そしてそこで得た知識が授業での成功体験につながった。これって、繰り返しになりますけど、大いに勉強のモチベーションになったなぁというふうに思います。きっと子どもたちにとっては新しい知識に出会ってワクワクできる体験にもなるだろうから、まずはエンタメだと思って気軽に手に取っていただければいいんじゃないでしょうか。
とりわけ角川まんが学習シリーズは、『日本の歴史』の16巻に出てくる子どもたちみたいにいろんな立場に立って物事を考えられるようになる、そういう視点を育てる上でも、いい教材だなと僕は思います。
角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第16巻 134-135頁
“地頭の良さ”なんていう言葉がありますけど、一口に頭の良さと言ってもいろんな種類があると思うんですよね。それでいうと僕は、決して記憶力や要領がいい方ではないし、勉強して吸収するまでに時間のかかるタイプだと思います。本人にとってそれが苦じゃないってだけで(笑)。そんな僕でも目指した試験に合格できたりとか、それなりに結果を残せているのは、やっぱり“最初”が良かったんだろうなという気がしていて。小学生の時に得意な科目で「楽しい」と思えたことが今でも勉強へのモチベーションを支えてくれています。だから、特に勉強に苦手意識がある子ほど、本当に面白くて、人生変わるかもしれないから、角川まんが学習シリーズを一回読んでみてほしいです。
(終わり)
【プロフィール】
阿部 亮平
1993年11月27日生まれ。千葉県出身。2020年1月にSnow ManのメンバーとしてCDデビューを果たす。上智大学大学院理工学研究科を修了しており、気象予報士資格をはじめ、世界遺産検定1級、漢検準1級など数々の資格を持ち、クイズ番組にも多数出演するほか、2025年1月からは「ZIP!」金曜レギュラーパーソナリティーとしても活躍。
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