年齢を重ねると、「やりたいことがあるのに体力がついてこない」と感じることがありませんか。
疲れやすさや風邪をひきやすい体質などに悩んでいるけれど、「自分の体力の状態や改善法がわからない」といった人も多いでしょう。
そんな悩みに応えるために、トレーナーと医師が一緒に考案した「体力を底上げする習慣と運動法」を紹介したのが本書です。
集中力や行動力が上がる「体力づくり」のヒントを、すべての人に向けてお届けします。
※本連載は『体力おばけへの道 頭も体も疲れにくくなるスゴイ運動』から一部抜粋して構成された記事です。
<はじめに>体力はいくつになっても伸ばせる
「体力がないから、もう歳かな」。そのように思っている方に、まずお伝えしたいことがあります。
体力は、年齢に関係なく、誰でも伸ばせます。
現在、私はパーソナルトレーナーとして中高年の方々や運動不足の方々の体力づくりをサポートしていますが、実は学生時代は体力に自信がありませんでした。
運動は苦手で、体育の時間はいつも後ろのほう。そんな私でも、体力は徐々に積み重ねて身につけてきました。
そして50代になった今、昔よりもずっと元気です。
「体力」とは、筋力や持久力だけでなく、日々の生活を軽やかにこなし、疲れにくい身体の土台となるものです。
体力があれば、朝の目覚めもよくなり、仕事の集中力も上がり、家事や趣味、旅行ももっと楽しめるようになります。さらには、健康寿命を延ばす効果もあります。
つまり体力とは、人生を前向きに生きる〝エネルギーの源〞なのです。
今の時代、生活が便利になった一方で、身体を動かす機会はどんどん減っています。健康診断の数値が気になってきた……そんな方も多いでしょう。
でも「病気になってから運動しよう」では、正直遅い。
だからこそ〝今〞、始めてほしいのです。
本書では、特に「体力がない」と感じている方に向けて、無理なく、確実に体力を高めていく方法をご紹介していきます。
目指すのはアスリートでもボディビルダーでもありません。
「階段を息切れせずに上れる」
「疲れずに買い物や旅行ができる」
「仕事のマルチタスクも適度にこなせる」
そんな快適な日常を支える〝生活体力〞を育てていくことです。
この本でご紹介する運動の柱は3つ。
実はすべてスクワットの動きがベースです。
なぜスクワットベースなのか?
それは、大腿四頭筋や大殿筋といった、体の中でも特に大きな筋肉を効率よく使えることもあります。
そして何より、「立つ・座る・歩く」といった日常の動作に直結しているからです。筋力・心肺持久力・バランス力のすべてを同時に鍛えられる〝キングオブエクササイズ〞とも呼ばれています。
効率よく、怪我なく、体力を積み上げられるように改良を重ねたエクササイズです。
体力づくりに必要なのは、特別な器具でも時間でもありません。
必要なのは、ほんの少し体を動かす習慣と、「自分にもできる」と信じる気持ちです。
この本が、あなたが〝体力おばけ〞予備軍になる第一歩になれば、これ以上うれしいことはありません。
さあ、今から始めましょう! あなたの体は、まだまだ変わります。
澤木一貴
監修者の言葉 「運動は薬」という考え方
私は現在、大学病院で循環器内科医として診療に携わっています。
日々向き合っているのは、心疾患だけでなく、高血圧や糖尿病などの生活習慣病に悩む方々です。
「循環器の医師がなぜ運動を語るのか?」と不思議に思われるかもしれません。
しかし、私はこれまでの診療を通して、運動の力こそが、人生の質を根本から変える〝鍵〞であると信じています。
近年では、「Exercise is Medicine(運動は薬である)」という考え方が、医療や健康づくりの現場で世界的なムーブメントになりつつあります。
これは、運動を薬と同じように「処方すべきもの」ととらえ、健康維持や病気の予防において科学的に有効な手段とする流れです。
私もまた、臨床現場からその重要性を実感している一人です。
現代社会では、便利さの裏側で、私たちの生活から「動くこと」が急速に失われつつあります。
SNSやスマートフォンに多くの時間を奪われ、気づけば1日中座っている。
このような〝静かな習慣〞の積み重ねが、気づかぬうちに健康をむしばんでいきます。
運動不足は、高血圧・糖尿病・心疾患に加え、一部のがんや認知機能の低下、うつ病などとも関連していることが、世界中の研究で明らかになってきました。
病気は、ある日突然やってくるものではありません。
「小さな動かない習慣」が、「未来の大きな病」をつくっていくのです。
では、実際にどれくらいの運動をすればよいのでしょうか。
必要なのは特別な運動ではありません。
週150分の早歩きや、週2回の筋力トレーニングだけでも、心疾患や糖尿病のリスクは20〜30%も下げられることが報告されています。また、うつ病や認知機能の低下にも、運動は確かな予防効果を示します。
一方で、私たちは「健康のために生きている」わけではないことも、もちろん承知しています。
人生には、仕事や家庭、人間関係、そして楽しみがあります。
ですが、私は信じています。
小さな運動習慣を持つことが、日々の中に〝できた〞という達成感をもたらし、自分自身の成長や喜びへとつながっていく。
それは決して義務ではなく、自分を少しずつ整えていく時間なのです。
そしてその積み重ねが、結果として「健康」という、すべての活動の土台を静かに支えてくれるのではないでしょうか。
この本では、忙しい日常の中でも実践できる、シンプルで効果的な運動法を紹介します。
この本で紹介するスクワットをベースとした運動は、いずれも気軽に始められます。下半身の筋肉量を増やして基礎代謝を高め、心肺機能までも鍛えられる。
またリズミカルな動きは、あなたの心も軽やかにするエクササイズです。
体を動かすことが苦手な方でも、「これならできそう」と思っていただける工夫をたくさん盛り込んでいます。
ぜひ、最初の一歩を踏み出してみてください。
体が軽くなり、気持ちが前向きになり、ふとした瞬間に「あれ、最近疲れにくいかも」と感じる日がきっと来ます。
その日こそ、あなた自身が運動の力を実感できる瞬間になるはずです。
國本充洋
体力は、一生の財産になる
体力とは、若さの象徴ではなく、人生を楽しむ力のこと。年齢に関係なく育てられ、そしてあなたを守り、支え、導いてくれる一生の財産です。
この本がきっかけとなり、「自分も変われる」と思えたなら、もうあなたの中には〝体力おばけ〞の芽が育ち始めています。
これからも、あなたのペースで、無理なく、でもあきらめずに、体を動かし続けてください。
人生100年時代。これからが本番です。
未来の自分を笑顔にするために、今この瞬間から、できることを始めていきましょう。あなたの体は、きっと応えてくれます。
【書籍情報】
- 【定価】
- 1,540円(本体1,400円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784046077387