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【専門家監修】スナック菓子は何歳から? 管理栄養士が教える市販のお菓子との上手な付き合い方

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市販のスナック菓子や甘いお菓子が好きな子どもは多いもの。そのまま食べられる市販のお菓子は親にとっても手軽ですが、「何を」「どれくらい」子どもに食べさせていいのか迷ってしまいますよね。そこで、NHK Eテレ『すくすく子育て』などメディア出演も多数の管理栄養士の川口由美子さんに、小学生の市販のお菓子との付き合い方についてアドバイスをいただきました。


おやつの2つの役割とは

 おやつの役割は、大きく2つあります。ひとつは、「エネルギー補給」。子どもの身長が気になるという声をよく耳にしますが、子どもの成長のためには、消費エネルギーを上回るエネルギー摂取が必要です。よく動く子どもは消費エネルギーが高く、体育の授業がある日はそうでない日よりエネルギー消費量が増えます。小学校入学以降もおやつは大切です。

 もうひとつは、帰宅後の「気分転換」としての役割です。食べる楽しさも子どもに味わってほしいものですよね。おやつは、エネルギー補給と気分転換という2つの役割を果たしています。



ポテトチップスやチョコレートなどのお菓子はいつからOK?

「チョコレートとポテトチップスは何歳から食べさせていいですか?」とよく質問されますが、残念ながら明確な答えはありません。どちらのお菓子も、積極的にはおすすめしませんが、幼児期に食べても基本的には問題ないからです。

 ただし、食べる量と頻度、シチュエーションは意識しましょう。大人も子どもも、塩分の摂り過ぎは昨今の生活習慣における大きな課題です。スナック菓子は塩辛く、食べ過ぎると塩分の摂りすぎに直結します。塩辛いお菓子は、塩分とともに油脂も多く含まれていることがあり、カロリーの摂りすぎにもつながります。

 チョコレートなど甘みが強いお菓子は、むし歯の原因になります。また、空腹時に甘みが強いお菓子を食べ過ぎると、血糖値が急上昇したのち下がり、再び甘いものを食べたくなります。ポテトチップスもチョコレートも、たくさん食べるのは何歳であれ避けたほうがいいでしょう。



お菓子やジュースは多くても1日200キロカロリーまで

 小学生は市販のお菓子を1日にどれくらい食べていいのでしょうか。厚生労働省と農林水産省が共同策定した「食事バランスガイド」を見てみましょう。


※小学校高学年男子の量 出典:農林水産省「食事バランスガイド」について


 コマの形をしたイラストには、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物という5つのグループごとに、食事で摂取するのが望ましい食材と1日の目安量が記載されています。この目安量は小学校高学年の男子の量をさしています。左側の青色の「ヒモ」が「菓子・嗜好飲料」を意味していて、食事というコマが楽しくまわるように“適度に”とることが大切です。具体的には、1日200キロカロリー未満が推奨されています。この範囲内であれば、ポテトチップスやチョコレート、アイスやジュースもOK。和菓子でも洋菓子でも、好きなものを食べて構いません。しかしながら、これだけの量が食べられる小学校高学年のお子さんが対象になります。

 では、200キロカロリー未満の市販のお菓子とは、どれくらいの量なのでしょうか。いくつか例を紹介します。

・ポテトチップス小袋(約25g):約140キロカロリー
・板チョコ1/2枚:約150キロカロリー
・炭酸飲料コップ1杯(200ml):約100キロカロリー
・プレーンドーナツ1/2個:約150キロカロリー



 小学校高学年の場合、200キロカロリーということになりますので、それよりも少ない小さな幼児さんの場合はだいたい半分くらいと考えると、おそらく、これだけでは物足りないと感じる子どもは少なくないはずです。しかし、鉄分やカルシウム、ビタミン類など、必要な栄養分がほとんど含まれていない市販のお菓子を200キロカロリー以上食べさせるのはおすすめしません。1日の食事の足りないエネルギーをなにでどう補うかが非常に重要です。

子どもが市販のお菓子で足りないときは

「もっと食べたい!」という子どもに我慢させるのは難しいものです。適量の市販のお菓子を食べて、子どもがさらに何かを食べたいとリクエストしたときは、「食事バランスガイド」のコマの中にある食材からおやつになるものを探しましょう。

 たとえば、ヨーグルトや牛乳、果物やおにぎりは「食材」です。これらと市販のお菓子を組み合わせれば、満足感と栄養バランスの両立を実現できます。ポテトチップスの小袋を食べるならジュースではなく牛乳や麦茶と、ジュースを飲みたいならおにぎりやおもちなどを組み合わせましょう。

 もし子どもがスナック菓子と甘い飲み物を食べたがるようなら、冷凍フルーツ・バナナ・牛乳をミキサーに入れてスムージー風ドリンクを作るのはいかがでしょうか? 冷凍フルーツも、バナナも、牛乳も、すべて「食材」です。嗜好品のカウントには入らず、甘みを楽しめて、しっかり満足感を得られます。



夕飯前に食べたくなってしまったときは

 夕食まであと1時間程度というときに子どもから「おなかすいた」「何かある?」といわれたときも、「食材」をあげましょう。たとえば、ひと口チーズやちくわやハム、ゆでた野菜や小皿に盛った白米などです。“本日の味見セット”のようにして子どもに渡すのも楽しいですね。夕飯の一部を先に食べたと考えれば、栄養の偏りを心配することもありません。

「これって食材? それともおやつ?」と判断に迷ったら、「これは食事として食べるかな?」と考えてみてください。たとえば、ドーナツや菓子パンは食事ではないけれど、サンドイッチや惣菜パンは食事になるといった具合です。胃が小さい子どもは、大人のように夕食までの数十分間をなかなか我慢できません。我慢を強いると、泣いて、泣き疲れて、夕食前に寝てしまう困った事態になることもあるため、この方法をぜひ試してみてください。



上手な市販のお菓子との付き合い方

 市販のお菓子との付き合い方として、ほかにも次のような工夫があります。

● 甘いお菓子と塩気のあるお菓子は入れ物を分ける
甘いものや塩辛いものに偏ると、食のバランスが崩れやすくなります。市販のお菓子は、甘いものと塩気のあるもので入れ物を分け、「ひとつずつどうぞ」と子どもに選んでもらいましょう。味のバランスがとれ、選ぶ楽しさが加わり、子どもの満足度が上がります。あらかじめ1週間分をカゴに入れておくと、親は管理しやすく、子どもがおやつの選び方を知るきっかけにもなるのでおすすめです。

● 食べきりサイズのお菓子を用意する
最近は、グミなど甘いお菓子も食べきりサイズのものが増えています。200キロカロリー未満に抑えるために、市販のお菓子は量が少な目のサイズを選びましょう。


※小さいグミは、喉につまらせないように気をつけましょう。


● パッと食べやすい「食材」をストックする
子どもが市販のお菓子だけでは物足りないと感じたときや、夕食前におなかがすいたときなど、いざというときに子どもに食べさせやすい「食材」をストックしておきましょう。チーズやヨーグルト、バナナは、季節を問わず購入できておすすめです。


保護者の悩みにアンサー!

Q. おやつを食べ過ぎて夜ごはんが食べられなくなってしまいます。

A. おやつは食事に影響しない範囲で食べましょう
おやつはあくまでも食事が足りない時に補うものです。それでも子どもが何かを食べたがるときや食事に影響が出そうな時間帯は、「食材」をおやつとして食べさせましょう。食材をおやつとして食べた場合、そのあとの夕食の量がいつもより少なくても心配ありません。夕食の一部と考えれば気楽に食べさせられます。


Q. スナック菓子を食べ続けていると、子どもが濃い味好きになってしまいますか?

A. 頻度と量の問題。多くなければ、それほど心配する必要はありません
スナック菓子の食べすぎはNGですが、適切な量であれば、味覚への影響をそれほど心配しなくていいでしょう。気になるようなら、スナック菓子は週1〜2回にするなど、子どもとルールを決めておくのもいいですね。最近は、塩分控えめのスナック菓子もあるので、そうしたものを活用するのも一案です。小さいころから薄味に慣れておくと、成人後も健康を維持しやすくなります。薄味を楽しむには、うまみを上手に活用するのが得策です。鶏だし、コンソメ、トマトや根菜、チーズや牛乳など、さまざま種類から子どもが好むうまみを見つけていけるといいですね。


※4歳以下は1/4以下に切ってあげましょう。


Q. お菓子を選ぶとき、パッケージの成分表示で特にチェックすべき項目は?

A. もっともチェックしてほしいのは「エネルギー」です
200キロカロリーを超えるお菓子は、脂質や糖質が多く含まれている可能性が高いです。成長期のお子さんが、脂質や糖質ばかりをとってしまうのはあまりよくありません。エネルギーをチェックして、おおまかな脂質や糖質の摂りすぎを予防しましょう。余裕があるときは、「塩分量」を確認するのもいいですね。2つのお菓子でどちらを選ぶのか迷ったときの目安にしてください。

おやつタイムを親子の楽しい時間に

 市販のお菓子との付き合い方を紹介してきましたが、習いごとの発表会や試合でがんばった日、家族や友達の誕生日など、特別な日は例外としてもちろんOK! 特別な日やごほうびタイムは週一度までにするなど、メリハリをつけて楽しみましょう。



 市販のお菓子は絶対NGなどの厳しいルールを設けてしまうと、子どもも親も選択肢が減ってつらくなってしまいます。家庭は、学校でがんばってきた子どもがほっとできる場所にしたいもの。全面禁止にするより、適切な量や選び方など、市販のお菓子との付き合い方を子どもに少しずつ伝えていけるといいですね。成長すれば、子どもは自分でお菓子を購入するようになります。この先続いていく食生活を、楽しく、無理なく、適切なものにしていくために、ぜひできることから試してみてください。


取材・文:三東社

<プロフィール>

川口由美子
一般社団法人母子栄養協会 代表理事。管理栄養士。女子栄養大学にて小児栄養学を研究後、育児用品メーカー勤務を経て独立。学生時代の離乳食相談のアルバイトを含め、約30年にわたり子どもの食事に関する業務に携わっている。離乳食や幼児食のレシピ提案、コラム執筆、栄養監修などメディア出演多数。



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