KADOKAWA Group

Life & Work

暮らし・働く

ととけん1級史上最年少合格 伊藤柚貴のおいしいお魚でなに作る? 第9回 鹿児島旅・前編 錦江湾のとんとこ漁!


日本さかな検定(愛称ととけん)1級に史上最年少で合格した日本一お魚が大好きな伊藤柚貴くんに日本のお魚の魅力を教えてもらおう!
自分の住む街にはどんなお魚がいるのだろう?
季節ごとにおいしさの違うお魚をどのように食べたらおいしいのかな? 
柚貴くんといっしょにお魚研究していきます!(毎月1回更新予定)

こんにちは! 伊藤柚貴です。
ぼくは小学1年生の時に、鹿児島大学の大富潤教授の著書『食べる地魚図鑑』(南方新社)を読んでから、魚を食べることがますます好きになり、食べた魚を記録していくことの楽しさを知りました。とんとこ漁や魚種の多い鹿児島の海に興味をもつようになったのも、先生の本がきっかけです。



そして先日、なんと大富先生と一緒にとんとこ漁の取材へ行かせていただくという夢みたいな鹿児島旅をしてきました! たくさんの海の生き物にも出会いましたよ(^o^)
そこで今回は、鹿児島県の錦江湾で行われている「とんとこ漁」と鹿児島の魚についてお届けしたいと思います。

「とんとこ漁」というのは、深海に網を沈めて、深海性のエビを狙う底曳網漁のことです。昔の船のエンジン音が♪とんとことんとこ♪鳴っていたからだとか、「遠いところ」を意味する“とんとこ”など、色々な由来があります。



早朝、鹿児島県の垂水(たるみず)港からとんとこ漁へ出港します! 船長の大瀬さんにお会いするのは、今回で2度目です。1度目はぼくが小学3年生(9才)の時に、とんとこ漁で獲れる鹿児島の深海魚をどうしても見たいとお願いをして、特別に船に乗せてもらったことがあり約4年ぶりの再会でした。

↓2018年(右が大瀬船長、左がリポーターの岡本啓さん)
 



↓2021年



出港から約10分で、船の下はもう水深200mを越える深海です。錦江湾(きんこうわん)は火山活動の影響で、内湾でありながら深海でもある世界でも珍しい地形なのだそうです。今回の漁場は水深211m、おろしたロープの長さはなんと1500m。その先に網がついています。絡まないようにゆっくり巻き取ること30分、上がってきた網の中にはたくさんのエビと魚が入っていました。
この漁のターゲットの、ナミクダヒゲエビとヒメアマエビは、濃いピンク色をした美しいエビで、まさに深海の生きた宝石のようです!

 



ナミクダヒゲエビは、手のひらサイズの大きなエビで、鹿児島県では通称“赤えび”と呼ばれています。普段は泥底にもぐっていて、束ねて管(くだ)状にした第1触角を泥から出して呼吸します。そして最も多く獲れるのがヒメアマエビです。長い間他のエビの混獲物で“名無しのエビ”だったのを、なんと! 大富先生が“華奢で甘海老のようなエビ”から「ヒメアマエビ」と名づけました。どちらも甘みが強くていくらでも食べられちゃう美味しさです。
\エビも魚も大漁です!/



漁港に戻るとすぐに選別作業をします。エビと魚類に分けた後、エビを種類別に分けます。さらにヒメアマエビは一つ一つ丁寧に頭を取って出荷すると聞いて驚きました。冷たく小さなエビの頭取りはとても大変で、気が遠くなるような作業です。美味しさが詰まっている頭を捨てるのはもったいない上、重さも6割ほどに減ってしまいますが、そうしないと、値段が非常に安くなってしまうのだそうです。



お刺身も抜群に美味しいのですが、ヒメアマエビの殻は柔らかいので、そのまま素揚げにしたり、炊き込みご飯やかき揚げにしても旨味が凝縮されてとっても美味しいです。頭付きでも美味しいことがもっと伝わって、そのままでも流通可能になればいいなと思います。




そして、エビと一緒に獲れるのがキュウシュウヒゲ・ワキヤハタ・ナミアイトラギス・ボウズコンニャク・アイアナゴなど、たくさんの深海魚です。中でも多く獲れたのは桜色のしっぽが可愛くて、唐揚げにすると美味しいマルヒウチダイでした(第8回登場)



\4年前の箱にもたくさんいますね!/



この深海魚たちは、以前は自家消費のみで商品価値がほとんどなく、獲れても大半は捨てられていた「未利用魚」で、一般の消費者の見えないところで“もったいない現象”が起きていました。
しかしその状況を知った大富先生をはじめとする漁師さんや市場の方々が協力して、実は食べるとおいしい深海魚をもっと普及させよう! と地元の飲食店に勧めているそうです。
そのおかげで、まとまって獲れるキュウシュウヒゲやマルヒウチダイ、アイアナゴ、ニセツマグロアナゴ、キホウボウ類などが、鹿児島市内の居酒屋さんなどで食べられるようになってきています。まずは食べてもらって、その存在と美味しさを知ってもらうということが大事なのだと改めて分かりました。
\このまま市場へ出荷されると聞いて嬉しくなりました♪/



夜に、グーグルマップで「鹿児島中央駅 深海魚」と検索をして見つけた「貴宝丸」というお店にお母さんと行ってみました。メニューに、メヒカリの天ぷらやキュウシュウヒゲの唐揚げがあり、漁の光景を思い出してワクワクしました。キュウシュウヒゲはサックサクふわふわでとっても美味しかったです。柔らかいので骨ごと食べられるのも嬉しいポイントです!



ヒメアマエビとあおさのかき揚げは、ヒメアマエビの殻が香ばしく身はプリッとしていて、あおさの磯のいい香りとサクサク感が絶妙にマッチして美味しかったです。帰ったら作ってみたいメニューがいっぱいでした!



鹿児島の地魚のお造りも美味しかったです。甑島(こしきしま)産のゴマフエダイの刺身は、4日間熟成していたそうで、ねっとりと甘くて、とくに飲み込む瞬間にくる味わいは格別でした。



鹿児島の魚市場と魚屋さんで、買って帰ってきた魚がこちらです♪



\どれも最高に美味しかったです!/




①タイワンカマス・カゴカキダイ・オニアジの刺身と炙り、ヨロイヒメキチジの湯引き
②カゴカキダイ、マツバゴチ・ハダカイワシの塩焼き(第8回登場)
③オニアジ・タイワンカマスの頭などの塩焼き
④オニアジ・マルヒラアジ・カゴカキダイの唐揚げ
⑤マルヒラアジの姿造り
アイブリは、刺身・漬け丼・唐揚げにしました。もちもちな食感と極上の旨味がやみつきになります。
タイワンカマスのしめじ巻…フワフワジューシーな身がキノコの強いうま味と相性抜群でした。



桜島へ渡った道中では、タクシーの運転手さんから桜島の歴史や愛情あふれる話をたくさん聞けてとても楽しかったです。この山から出ている白いのは水蒸気なのだそうです。見るたびに風で色々な形に変化していました。これは鳥の口ばしっぽい…ダチョウかな? シャンプーのボトルにもみえるような…と滞在中、色々考えるのが面白かったです。間近に見る桜島はどこから見てもかっこよくて、突き抜けるような空の青さときれいな景色に圧倒されました。



貴重な「桜島小みかん」もいただきました。桜島で栽培されている世界一小さいみかんだそうで、皮の香りが強くて、実の味も濃くとっても甘くて美味しかったです。
\ぼくの手のひらに3個のるサイズです。かわいい!/

 



次回は、とんとこ漁で獲れた深海魚を、家で料理します! お楽しみに♪


この記事をシェアする

特集

ページトップへ戻る