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<海外の翻訳絵本>ロングセラーにはわけがある! 子どもの読書の土台となる、長年愛され受け継がれてきた絵本の魅力をご紹介♪

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絵本には、半世紀以上も長く読み継がれてきた名作絵本が数多くあります。それぞれの時代で子どもたちに愛され続けてきたのは、時代を超えたメッセージや気持ち、楽しさが詰め込まれた作品であるからこそ! 今回は、何世代にもわたって読まれてきたロングセラー絵本のすばらしさを2回にわたり北海道にある公共図書館の館長・富田歩美さんにご紹介いただきます。
第1回目では、外国のロングセラー翻訳絵本をご紹介します。


途絶えさせたくない名作たち

富田歩美さん:今回ご紹介する絵本は、ロングセラーであり何世代にもわたり、たくさんの人々が読み聞かせしてきたものばかりなので、読み聞かせをする立場からすると「もう読んでいるんじゃないかな?」と思ってしまいがちです。ですが、皆さん、そう考えてしまうのか、今の子どもたちは意外とロングセラーの絵本を知りません。教科書に載っていて一部は知っていても全部の内容は知らないという子もいます。

ロングセラーの絵本がなぜ読み継がれてきたのかというと、そこには昔から続く、他のものとは替えられない想いやテーマが織り込まれているからです。そういった普遍的で大切な物語をこれからも読み継いでいってほしい、途絶えさせたくないという思いを私は強く持っています。以前に読んだことがある本でも、読む人や空間が違えば、まったく新しい気持ちでその魅力に触れられます。だからこそ、ぜひ何度でも読み聞かせてみてください。 

そして読み手の方にアドバイスしたいのが、ロングセラー絵本の読み聞かせをマスターすれば、読み聞かせ会のバリエーションを広げることができることです。この後ご紹介する『おおきなかぶ』や『三びきのやぎのがらがらどん』などはパネルシアターやエプロンシアターなども作られているので、これらの絵本を読み聞かせできれば、読み聞かせ会をよりいろいろな形で演出することができます。

ロングセラーの絵本はたくさんありますので、まずは今回、外国作品のロングセラー絵本を取り上げてみました。読み聞かせ会にぜひ取り入れてみてください。

「うんとこしょ どっこいしょ」教科書にも載る名作! 『おおきなかぶ』

おじいさんがかぶを植えました。「あまい あまい かぶになれ。おおきな おおきな かぶになれ」と願いをこめると、とてつもなく大きなかぶに育ちました。

おじいさんは早速かぶを抜こうとしましたが「うんとこしょ どっこいしょ」、それでもかぶは抜けません。そこで、おばあさんを呼び、孫を呼び、犬と猫まで呼びますが、それでもかぶは抜けません。どうすればかぶは抜けるのでしょうか!?

「うんとこしょ どっこいしょ」というフレーズを聞けば誰でもピンとくる、教科書にも載る世代を超え、受け継がれている絵本です。



『おおきなかぶ』 
再話/A・トルストイ 訳/内田莉莎子 画/佐藤忠良 福音館書店 1,320円

富田歩美さん:『おおきなかぶ』の魅力の一番は、みなさんが知っている“うんとこしょ どっこいしょ それでも かぶは ぬけません”というかけ声だと思います。このかけ声で子どもたちとの一体感が生まれます。

絵も魅力的で、このおじいさんは、最初かぶができたところで「イエーイ イエーイ」と喜ぶ動きをしていたり、抜けなかったときに足を抱えてがっかりした背中などが、とても個性的に描かれているんです。大人になると、そんな細部にも新たな発見ができる楽しい作品だと思います。




絵の佐藤忠良さんは彫刻家として高名で、福音館書店さんは絵本の刊行初期にそのようなすごい美術家の方々をたくさん挿絵に起用されているんですよね。「おおきなかぶ」は誰もが知るロシアの昔話ということもあり、さまざまな絵本作家さんによるバージョンが存在します。でもこのロングセラー版の『おおきなかぶ』は唯一無二の魅力があり、いつもこの一冊に行き着きます。この横長の判型もかぶを引っ張る描写にぴったりです。

お話自体にも「みんなで協力したらかぶが取れた!」「みんなでやったらできる」と、達成する喜びという普遍的なものが描かれているので、これからもぜひ受け継いでいきたいです。

やぎたちの機転と勇気にびっくり!『三びきのやぎのがらがらどん』

あるところに、三びきのやぎがいました。名前はどれも“がらがらどん”。たくさん草を食べようと山を登りますが、大きくて恐ろしい魔物のトロル(おに)が住みつく橋を渡らなければいけません。

はじめに一番小さいがらがらどんが渡りますが、トロルに「きさまを ひとのみにしてやろう」と言われます。小さながらがらどんは「すこし まてば、二ばんめやぎの がらがらどんが やってきます。ぼくより ずっと おおきいですよ」と言って逃れます。もっと大きなやぎを食べたいトロルは二番目のがらがらどんを待ちますが……。

やぎたちの知恵とトロルにも負けない勇気が爽快な、ノルウェーの昔話を元にしたお話です。



『三びきのやぎのがらがらどん』 
絵/マーシャ・ブラウン 訳/せたていじ 福音館書店 1,430円

富田歩美さん:この絵本は特に男の子が大好きな作品で、トロルという怪物に立ち向かう冒険要素があったり怪物への怖さにおっかなびっくりしたり、身をのりだして聞いてくれます。絵は古風ですが迫力があり、ファンシーではなくワイルドさがあるので、そこも子どもたちには魅力なのだと思います。



トロルをやっつけるお話なので内容的に「こっぱみじん」「くしざし」など、現代の感覚では少し激しく思える表現も出てきます。ですが、子どもには物語の世界をしっかり識別し、楽しむ力があります。こうしたダイナミックな世界観も絵本の魅力のひとつとして、大人の方にも温かく受け取っていただければ幸いです。



そして、この絵本から子どもたちに一番感じてもらいたいことは、なんといっても「知恵を使う大事さ」です。先頭の小やぎは力ではかなわないトロルに対して「後からくるやぎの方が大きいよ」と知恵を使って交渉します。そうしたのは、最後の大きながらがらどんを信じているからだと思っています。昔話特有の知恵比べ的な面白さも楽しい物語ですね。

世界的絵本作家 レオ・レオーニの描く温かな世界 『あおくんときいろちゃん』

青くてまんまるのあおちゃんの一番の仲良しはきいろちゃん。きいろちゃんと遊ぼうと思いおうちにいきますが、おうちは空っぽ。きいろちゃんを探しに行くと街角でようやく出会いました。二人はうれしさのあまりどんどん近づいて、溶け合ってみどり色になってしまいました!

その後、あおくんがおうちに帰ると「うちの あおくんじゃないよ」と言われ、きいろちゃんのおうちにいけば「うちの きいろちゃんじゃないよ」と言われてしまいます。あおくんときいろちゃんは悲しくなって泣き出して……。

世界的絵本作家・芸術家レオ・レオーニが孫のために作ったという本作。青と黄色の丸を子どもに見立てたアーティスティックな世界観でありながら、子どもたちの気持ちを優しく表現した名作です。



『あおくんときいろちゃん』 
作/レオ・レオーニ 訳/藤田圭雄 至光社 1,540円

富田歩美さん:作者のレオ・レオーニさんは世界的アーティストで多くの作品があり、どれもロングセラーになっていますが、この絵本はちょうど「色」に興味を持った子たちにお薦めしたいです。

丸という抽象的な形を主人公にお話が進みますが、テーマが明確なので「この色とこの色を混ぜたらこんな色になるんだ」という色の変化が分かり始める3歳くらいから、すっと理解してもらえると思います。特に、三角でも四角でもなく、主人公たちが丸というのが受け入れやすい理由かなと思います。



色の概念がストーリーにも連動しているので、「うれしくて うれしくて とうとうみどりに なりました」というところも、あおくんときいろちゃんが重なりあって仲良くなったということがストレートに子どもたちに伝わります。



色が変わってしまったので、お母さんもお父さんもあおくんやきいろちゃんのことを分からなくなってしまうところでは、聞いている子どもたちもちょっと心配そうな顔をします。



最後には無事に元通りになるのでほっとする安心感のあるお話です。

この作品は、小さな子どもたちにもわかる色彩の美しさや造形の美しさがあり、これからも子どもたちにぜひ楽しんでいってもらいたいです。

ラッキーの次にはアンラッキー!? 『よかったねネッドくん』

ある日、ネッドくんに「びっくりパーティーに いらっしゃい。」という手紙が届きました。ネッドくんはパーティーを想像してにっこり。ですが、パーティーは遠い田舎でやるので行けそうにありません。

けれども友だちが飛行機を貸してくれました。よかった! と、思ったのもつかの間、なんと飛行機が爆発! でも、パラシュートで脱出できました。

…という、ネッドくんにラッキーな出来事とアンラッキーな出来事が代わる代わる起きていくお話です。そのアンラッキーな出来事が、爆発だったり転落だったりなかなかハードな内容で読み手もハラハラ。果たして、パーティーにはたどり着けるのでしょうか!? 1960年代から読み継がれるドキドキユーモア絵本です。



『よかったねネッドくん〈英文つき〉』 
作/レミー・シャーリップ 訳/やぎたよしこ 偕成社 1,540円

富田歩美さん:こちらはとても分かりやすいユーモラスな絵本で、よいことが起きたときの絵がカラーで悪いことが起きた時は白黒に描かれ、それが繰り返されていきます。




子どもたちも読んでいるうちに構成が分かってくるので、カラーの絵の時にはほっとした顔をしたり白黒の時は「困ったね、どうするの?」と不安そうになったり、そんなメリハリが面白い一冊です。

この絵本も『三びきのやぎのがらがらどん』と同じく、トラやサメに追われるような、ちょっぴりスリリングな展開が登場します。けれど子どもたちにとって、それは現実とは離れた異世界を体験するようなもの。子どもたちは良いできごとと悪いできごとが交互に進むうちに「次どうなるのかな?」とワクワクしながらきゃっきゃと楽しんでいますね。

この天国と地獄のようなコントラストのある繰り返しから、「悪いことがあっても、前向きにいけば大丈夫!」というテーマも伝わり、これからもこの前向きさをぜひ学んでもらえるといいなと思います。

映画にもなったモーリス・センダックの名作 『かいじゅうたちのいるところ』

ある晩、マックスはおおかみの着ぐるみの格好でいたずらを始めました。おうちの中で大暴れしたマックスはお母さんに怒られて、夕ご飯抜きで寝室に放り込まれます。

すると寝室には、にょきりと木が生え出して、部屋の壁も消えるとあたりはすっかり森や野原に。そこに波がざぶりと打ち寄せて船が運ばれマックスは航海を始めます。

1週間過ぎ2週間過ぎ1年と1日経つと、かいじゅうたちのいるところに到着したのです! マックスはこの後どうなってしまうのでしょうか!?

世界各国で翻訳されアニメや映画にもなった名作絵本。壮大で無限な想像の世界を子どもたちが存分に味わうことができます。



『かいじゅうたちのいるところ』 
作/モーリス・センダック 訳/じんぐうてるお 冨山房 1,870円

富田歩美さん:このお話は子ども部屋から違う世界に行くというファンタジーなのですが、子どもたちはさも自分のことのように思って楽しんで絵本の世界に入っていきます。お母さんに怒られて部屋に閉じ込められるようなことは、子どもたちにも実体験があるからかなと思います。

部屋の中がどんどん森になっていくような急な変化は、本当だったら子どもたちが不安な気持ちになると思いますが、主人公のマックスくんは笑っています。それを、読んでいる子どもたちが見て「絵本の中のこの子が笑っているなら大丈夫」と思うからこそ、子どもたちはすんなりこの物語に入っていって楽しむのではないでしょうか。

特に子どもたちが見つめるのが、文章のないページです。





私はこの画面を見せるときには、1ページずつ、心の中で「1・2・3」と数えながら何秒か止まります。子どもたちはその間真剣に、このかいじゅうたちを見つめます。かいじゅうたちの中には、実は一体だけ人間の足をしたかいじゅうがいるんですが、子どもたちはそういったところもさっと見つけて、なぜだろうと想像をふくらまします。

物語の終わりには、おうちに帰った後、部屋にはまだ温かいスープが置いてある描写があります。豊かな空想の世界が広がっていつつ最終的には「お母さんに会いたいな、おうちが安心だな」という、絵本的な優しい温かい気持ちに包まれるところがとてもよく、この絵本からこうした温かさを感じ取ってもらいたいと思っています。


現代は毎年たくさんの絵本が刊行されています。そうした時代だからこそ、私はロングセラーの絵本たちは読書の“土台”として大切なものだと思っています。建物も土台がしっかりしていないとその上にどんどん建てていっても倒れてしまいますよね? 子どもたちの読書の土台に、こういう普遍的なロングセラー絵本があるからこそ、今の時代に沿ったいろいろな絵本を楽しむことができると思うのです。

もちろん新しい絵本を生み出すことも大切です。新しい絵本が生まれないと絵本の世界が先細りになってしまいます。ロングセラー絵本というのは絵本の指標であり絵本の世界の根幹を支えるものです。時代が移り変わっていく中で、日本の豊かな絵本をこれからも育むために、ロングセラー絵本も新しい絵本もどんどん楽しんで読んでいってもらえたらと思います。

<プロフィール>

富田歩美
公共図書館館長。学生時代に図書館司書の資格を取り、公共図書館に勤務する。北海道内の図書館、7館で勤務し、館長として現在5年目。以前、児童書に特化した図書室の立ちあげを経験する。近年、図書館運営に活かすため、絵本セラピスト協会認定基礎絵本セラピストⓇ、JPIC読書アドバイザーを取得。


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