KADOKAWA Group

Children & Education

子育て・教育

リアルで知的なおもしろさ! 子どもたちの好奇心を引き出す「写真絵本」の魅力を図書館司書さんが紹介します

NEW

絵本好きの方々でも「写真絵本」を見かけることは意外と少ないのではないでしょうか?
最近では多くの写真絵本があり、ノンフィクション・自然科学的なものもあれば、写真を用いてファンタジックな表現をした絵本など種類も内容もさまざま。
そんな写真絵本はリアルさがダイレクトに伝わるのも魅力で、写真絵本の中の身近なものにシンパシーを感じたり、自分も同じ体験をしている感覚を持ったり思い思いの楽しみ方が可能です。また科学的な内容のものも多いので、写真のリアルさがそうした知的好奇心も刺激します。
今回は、そんな写真絵本のおもしろさを北海道にある公共図書館の館長・富田歩美さんからご紹介いただきます。


写真絵本は、子どもたちに実物の魅力を伝えてくれる

写真絵本のよさは、写真ならではの“リアルさ”にあります。「あ、これは本物なんだ」と思うと子どもの心にもダイレクトに届きます。

私が写真絵本の楽しさを知った原点に『イエペはぼうしがだいすき』(写真/石亀泰郎、文/文化出版局編集部 文化出版局)という絵本があります。デンマークに住む帽子が大好きな男の子が主人公で、お気に入りの帽子をかぶっていないと具合が悪くなっちゃったりするんです。こうした自分らしさを大切にする男の子が実際にいるんだな、いいなと、写真からダイレクトに感じられました。この子の住む家や保育園、取り巻く家族の写真も素敵で、こんな世界が実際にあることにも興味がかき立てられました。

そんな写真絵本はリアルな世界なので、実際の知識であったり科学的なことを教えたりすることとも、とても相性がよいです。子どもたちの中には物語系の絵本などにはあまりはまらないけれど、図鑑とかは好きという子も少なくありません。そういう子たちへの呼び水のような形で写真絵本を読むこともできます。

写真で紹介されたものを知識的に補完するページなどもあるので、普段読み聞かせに乗ってこない子でも写真絵本には興味を惹かれることも多いですよ。

絵本というと、一般的には「絵で描かれている」と思うので、子どもたちは写真絵本を見ると「写真なんだ!」と新鮮に感じるようです。今は写真の絵本もさまざまで、いろいろな方向性のものがたくさん出ておもしろいので、手に取るきっかけになったらうれしいです。

まっかなりんごがどうなるの? 『りんご だんだん』

写真には、まっかなりんごが一つ写っています。最初は「りんご つるつる」。じーっと見つめながらページをめくると、「りんご しわしわ」。そして、りんごはぱんぱんにふくれあがって汁が染み出し、全体が「ぐんにゃり」となって……。

一つのりんごが「つるつる」の状態からどうなっていくのか、同じアングルで撮影し続けることで、りんごの346日の変化の過程を知ることができる写真絵本です。おいしく食べるところまではよく知っていても、1年経ったりんごの、ほとんどの人が知らないリアルな姿を伝えてくれます。



りんご だんだん』 
写真と文/小川忠博 あすなろ書房 1,430円

富田歩美さん:この絵本は、りんごが腐って朽ちていく過程を見せていくのですが、「りんご」そのものは、身近でよく知っていても腐った姿を見ることはなかなかないですよね。そうした身近なものの意外な姿にびっくりできるところがポイントです。最初のつるつるしたりんごの写真は子どもたちも普通に見ているのですが、



ページをめくるにつれてりんごはしわしわになって、ぐにゃっとなって腐り始めます。



そうすると子どもたちは苦々しい顔をし始めるんです。そんなりんごを見たことがないのでとても悲しいというか、いやーな顔をするんですね。あと、写真なので匂いはしないのに「臭い」っていう子もいます。リアルに伝わるから反射的に感じるのかもしれません。

そうした反応があると「みんなが食べないと、こんな風にだめになっちゃうんだね」など声かけしたりもしますが、やっぱり腐っていくところから断然盛り上がりますね。身近なものの見知らぬ姿が見られる大好きな絵本です。

恐ろしく美しい雷の正体 『かみなり』

夏、入道雲が出てくる季節によく起こる“かみなり”。ピカッと光ってゴロゴロゴロと音が響き渡り、稲妻が見えた瞬間、みんな怖がって安全な場所に隠れようとします。そんな漠然と「怖いもの」と思っている“かみなり”の正体とはなんでしょうか?

空に光る美しい姿で人をひきつけながら、その強い力で建物を壊したり人や動物の命をうばったりする怖さを持つ“かみなり”のさまざまな神秘的な姿を写真で見せながら、科学的情報も伝えてくれる知識絵本です。



かみなり』 
監修/妹尾堅一郎 協力/音羽電機工業「雷写真コンテスト」 ポプラ社 1,760円

富田歩美さん:かみなりの危険性はよく知られていても、その光は一瞬なので、実際に目にすることは少ないと思います。この絵本は、そんなかみなりの怖くて美しい姿がたくさん紹介されていて、さらにかみなりの知識も丁寧に書かれています。

子どもたちにとっては 、かみなりというとやはり“ピカチュウ”を思い出すんですよね。 そこで、ピカチュウというファンタジーの話から「雨が降ったときにはね~」などとリアルなかみなりの話につなげたりもします。

かみなりの写真はどれも美しくて迫力があるのですが、特に 11ページの海に落ちるかみなりの写真はとてもきれいで広げるとどよめきが起こります。



そうして写真を堪能した後は、巻末の「もっと知りたい! かみなりのふしぎ」のコーナーで知識も深められる、非常によくできた構成の絵本だと思います。



 

おかたづけをしたら、こんなに楽しくなっちゃった! 『あーっとかたづけ』

おうちの玄関に、砂だらけのくつやサンダルが散らかっている! おかたづけしなきゃ!と思ったら、なんと砂だらけの玄関が海水浴場に! 勉強道具がぐちゃぐちゃに広がっている部屋が、あーっというまにロケット発射場に! など、くつを海の中の洞窟に見立てたり、えんぴつをロケットに見立てたり、おうちの中の身近なものを組み合わせると、あっというまに思ってもみない空間に大変身。

ミニチュア写真家・見立て作家として日常のものを別のものに見立てるアート活動を行う田中達也さんの、あっと驚く楽しい写真絵本です。



あーっとかたづけ』 
作/田中達也 福音館書店 1,650円

富田歩美さん:絵本の作者・田中達也さんは最近の絵本界でも大変ブームとなっていて、身近なものをミニチュアの視点で見ると、「こんなに楽しいものになるんだ!」という想像力を刺激する楽しさを伝えてくれます。

また、子どもたちはレゴが大好きですよね? ですので、身近なものを組み合わせていくことがレゴ的な楽しさにもつながって、日常のものの変化がぱっと現れると、子どもたちも非常に盛り上がります。




このように、身近な学校道具を組み合わせてロケット発射場になったり、食卓やトイレのバージョンもあったり、あっと驚く変化がとってもファンタジックです。

また、子どもたちは『ミッケ!』シリーズなどの探し物絵本も好きなので、その延長線上で「あのえんぴつが、こっちではこんなところに!」と反射的に探し始めてしまったり、そういった楽しみ方もできます。

リアルな写真なのに、ファンタジックな世界観が楽しめるところがポイントの絵本ですね。

富士登山の気分が味わえる 『富士山にのぼる』

富士山は、日本一高い山として知られる有名な山です。この絵本は、その富士山に登山家・写真家である著者が実際に登った過程を写真でつづっています。

富士山は、近づくにつれて私たちの記憶にある姿からどんどん変わっていきます。冬の富士山は静かで、聞こえてくるのは「ザクッ ザクッ ギシッ ギシッ」という自分の歩く音と呼吸音だけ。吹き付けてくる風に耐えながら、一歩ずつ一歩ずつ足を前に出して登ります。

登っていく途中の景色や足元の写真から、読み手も冬の富士山の風や氷を感じるような体感型写真絵本です。富士登山のための装備や富士山周辺の知識もふんだんに盛り込まれています。



富士山にのぼる』 
文・写真/石川直樹 アリス館 1,760円

富田歩美さん:富士山というものは日本の象徴的な山です。読み聞かせ会でもこの絵本を読むときは「日本で一番有名な山だよ」という話から始めます。富士山という名前は小さな子でも知っているので分かってもらいやすいですね。



著者が写真家であり登山家でもあるので、本人が登っている状況をつぶさに収められていて、リアルな風景写真から「富士山ってこういう感じなんだ」と、子どもたちが実際の富士山の姿を感じることができます。

写真もさることながら文章がとても素晴らしいです。著者の登山中の気持ちが描かれているので臨場感があり、読んでいるうちに「自分も登ったら、こう感じるかもしれないな」と追体験するような感覚が味わえます。

最後には、登山の装備一式の紹介などもあり、登山へのイメージをリアルに持てる一冊です。

北国のさくらがエールを送る 『さくららら』

主人公は、北海道に生える背の低い桜の木。北海道では4月でも雪が残っています。5月になり、ようやく雪が溶けましたが、まだ水は冷たく桜の花はつぼみのまま。本州では桜は咲ききっていますが北海道の桜はまだ咲きません。でも、咲くのが遅くても一番最後でも、初夏の光の中、美しい花を咲かせます。

北海道の自然の中、春を迎えた桜の木が、ゆっくりゆっくりと準備をして咲く姿を丁寧に追った写真絵本。日本で一番遅く咲く桜の、小さくても遅くても豊かに花開く様が、読者にエールを送ります。



さくららら』 
文/升井純子 写真/小寺卓矢 アリス館 1,540円

富田歩美さん:この絵本には大好きな部分があります。北海道は北国なので桜は5月になってから咲くのですが、この絵本の桜は焦らずじっくり準備をしていくんです。



そしてようやく咲くのですが、咲いたシーンで「わたしがさく日はわたしがきめる」と、この桜が語るんですね。とても素敵な言葉だなと思いました。「遅くても早くても、いつ咲くかは自分で決めることができるよ」と、子どもたちへのメッセージにもぴったりなので、卒業シーズンの3月あたりに読み聞かせをすることも多いです。

桜の咲くまでの道のりを描いた写真絵本なのですが、自然に対しては人の思い通りにはならないからこそ咲きほこる姿がとても素晴らしく感じます。



子どもたちもまた、日々の生活の中で思い通りにいかないことが多いからこそ、この絵本のメッセージが胸に迫ると思います。それ以外にも、とても普遍的なメッセージが絵本全体に詰まっているので、大人の方にもファンが多い絵本です。


写真絵本には、実物の魅力を子どもたちにダイレクトに伝えられる素晴らしさがあります。実際に存在するものを撮影しているので、身近なものを題材にした絵本もたくさん。

そこを活かして、読み聞かせ会ではその季節に沿った写真絵本を選ぶのもおすすめです。例えば、『さくららら』 は、3月4月くらいのお花見の時期に、桜を愛でながら野外などで読むと自然も体感できて盛り上がります。『富士山にのぼる』は、冬の富士山なので雪の時期にもぴったりです。『かみなり』は、雨が多くなって雷の季節がやってくる6月など、写真絵本は読み聞かせ会で季節を感じるための題材として非常によいと思います。

一般的な絵本とは少し違って、見た目から「写真? なんだろう?」と子どもたちを惹きつけることができます。そして、自分の知っているものと比べながら写真を見ることで「あれが、こんな風になるんだ!」と驚き興味を持ちます。こんな、日常からつながった楽しい写真絵本の世界をみなさんもぜひ読んでみてください。

<プロフィール>

富田歩美
公共図書館館長。学生時代に図書館司書の資格を取り、公共図書館に勤務する。北海道内の図書館、7館で勤務し、館長として現在5年目。以前、児童書に特化した図書室の立ちあげを経験する。近年、図書館運営に活かすため、絵本セラピスト協会認定基礎絵本セラピストⓇ、JPIC読書アドバイザーを取得。


この記事をシェアする

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • LINEでシェアする

特集

ページトップへ戻る