「読み聞かせ」によって言葉のシャワーを浴びることが子どもの言語発達につながることがうたわれ、ブックファースト運動も根付き、現在はいろいろなところで絵本の読み聞かせ会が開かれています。
しかし、読み聞かせ会を繰り返し開催していると途中で盛り下がったり、同じような内容の会になってしまって子どもたちが飽き始めるようなことはありませんか? そんなときにおすすめしたいのが“動く”絵本です。読みながら体を動かすことで、一体感が生まれ積極的に読み聞かせに参加するなど、子どもたちの関心を一気に引き戻します。
今回は、そんな“動く絵本”の効果・おもしろさを北海道にある公共図書館の館長・富田歩美さんからご紹介いただきました。
「一緒の動作を一緒にする」参加者全員で楽しむ経験
最近では図書館や書店・オンラインなど、さまざまなところで読み聞かせ会が開催されています。ですが、読み手の悩みとして、どうしても会の内容が単調になったり、読み聞かせ会の定番である“手遊び”などを「ちょっと苦手だな」「照れくさいな」と思ってしまうこともあるかもしれません。そんなときにおすすめしたいのが、聞き手も読み手も“自然に動いてしまえる”絵本です。
読み聞かせで一番大事な点は、一冊の絵本を通じて読み手と聞き手が“コミュニケーションを図ること”ですが、今回おすすめする「動く」がテーマの絵本では、「一緒の動作を一緒にする」ことでコミュニケーションを図ることができて、参加者全員に一体感も生まれます。
また、同じ動きを一緒にすることは子どもたちにとって楽しいもの。同じ空間で読み手と聞き手が同じことをして楽しむ経験は、その子の楽しい思い出として残っていきます。そうすると「本って楽しいな」という思いが芽生え、成長とともに「次は自分で選んで読んでみよう」という主体的な姿につながっていくのではないでしょうか。
動物と同じポーズに挑戦! 『できるかな?あたまからつまさきまで』
みんなで一緒に身体を動かせば自然に仲間になって愉快な気分。作者のエリック・カールさんも「いっしょにやってみて!」と呼びかける、楽しい動きが満載の参加型の絵本です。
いろいろな動物が「あたまを くるんと まわせるよ」「くびを ぐいんと まげられる」と、自分のできることをアピールしてきます。そして絵本に登場する子どもたちに「きみは できる?」と問いかけると子どもたちも「できるよ できる」と、動物たちと同じ動作をしてアピールします。
そのやり取りを見聞きした読み手の子どもたちも「できるよ!」と一緒になって身体を動かし始め、ページをめくるたび、さまざまな動きをすることが楽しくなっていきます。
『できるかな?あたまからつまさきまで』
作/エリック・カール 訳/工藤直子 偕成社 1,320円
富田歩美さん:子どもたちの大好きな動物たちが、まず体の動かし方を見せてくれます。その後、一緒の動作を読み手の子どもたちもまねしていきます。そうしてまねっこをすることが楽しい絵本ですね。
また、動物たちが「できるかな?」と聞いてくれるのですが、それを子どもたちが「できるよ できるよ」と答えることで、お互いに交流する心地よさも味わえます。
何でも新しいことに挑戦することはドキドキすると思うのですが、この絵本のように「できるよ できるよ」って肯定してくれると大人も子どももうれしいですよね。そうした肯定して認めてくれるうれしさを感じられる点もおすすめです。
拍手で褒めまくる『えらい えらい!』
くつは、えらい! なぜなら、毎日いっぱい歩くから。かばもえらい! なぜなら、あんなに大きいのに浮かんでるから。そうしていろいろなものを、「みんなえらい!」と、褒めまくっていくこちらの絵本。
絵本の中で「なぜえらいのか」理由を述べると即座に「えらいこっちゃ えらいこっちゃ はくしゅ~!」と拍手がうながされます。拍手はみんなでするととっても楽しく、小さな子から大きな子まで盛り上がります。
作者のますだゆうこさんは、“エビカニクス”で有名な「ケロポンズ」として子どもたちに大人気の音楽&体操作品を作り続けており、子どもたちの関心をぎゅっとつかむのはお手の物。この絵本『えらい えらい!』にも曲がついているので、読んで歌って褒め合って「うれしい~」気持ちを伝えあう読み聞かせ体験ができる一冊です。
『えらい えらい!』
作/ますだゆうこ 絵/竹内通雅 そうえん社 1,100円
富田歩美さん:『えらい えらい!』の良さは、まず絵本の文章で掛け合いが楽しめる点です。「えらいこっちゃ えらいこっちゃ はくしゅ~!」と読み手が言うと、聞いている子どもたちも「はくしゅ~!」と言いながらパチパチ拍手してくれるんです。
「えらい」って言われると、自分のことを直接褒めているわけではないけれど、なんだかうれしい気分になってきますよね。そうして子どもたちの笑顔があふれてきます。
この画面の“子ども”は、なんでえらいと思いますか? ワクワクしながら次をめくると理由があります。それを聞いてみんなで「わー、すごいねー。おめでとう~」というような勢いでパチパチ拍手をして大盛り上がり。「うれしいね~」という一体感も生まれます。
拍手は手をパチパチと鳴らすだけなので小さな子でも参加できますし、内容がまだ理解できなくても「拍手ってきっといいこと!」というのは乳幼児くらいから分かっているので、みんな楽しそうにパチパチしてくれますよ。
絵本の中は臨場感満載の動物園 『パタパタどうぶつえん』
絵本の中は動物園、いろいろな動物たちがいます。ですが、この動物園は動物が紹介されるだけではありません。なんと、しかけのページをパタパタめくることで動物たちが動いていく、“パタパタどうぶつえん”なんです!
「グア゛ア゛~」と伸びをしていたトラがページをパタリとめくると急にこちらを「ググッ」とにらんでいたり、スンと止まっていたコンドルが、「ヴァッサー」と翼を広げて威嚇してきたり、ページをめくることで動物たちが生き生きと動き出して臨場感満点! ワクワクドキドキしながら動物たちを楽しむことができます。
『パタパタどうぶつえん』
作/岡田善敬 絵/タケウマ ブロンズ新社 1,320円
富田歩美さん:この『パタパタどうぶつえん』にはしかけページがあって、しかけページをパタパタめくることで、動物たちがぐっと姿を変えていきます。
例えばこのトラさんの画面。ページをパタッとめくると
こんな風に違った姿を現します。
こうして絵本自体がパタパタ動くことで、動物たちがまるで生きているように動き出す躍動感が魅力です。
ページをめくる前は、動物がどんな姿になるか分かりませんよね。分からないから「次どうなるんだろう?」と想像し、そうすることで絵本の世界に引き込まれるという点もポイントです。子どもたちは次の展開を期待して「どうなるの~?」と身を乗り出してきてくれます。
自然に体を動かしたくなる『たいそうするよ』
最初は控えめな反応であっても、やっていくうちにどんどん楽しくなっていく体操。大勢でやってみるとさらに楽しくなっていきます。それを表現しているのがこの絵本。
「1,2,3,はい!」の掛け声とともに手を上げたり下ろしたり、伸ばしたり縮めたり。動きを見たあと、みんな一緒に「はい!」とやると、大人も子どももなんだか気持ちが上向きます。
簡単な体の動きの繰り返しで小さな子でも問題なく行えるものばかり。絵本を見ながら自然に体を動かしたくなるような一冊です。
『たいそうするよ』
作/高畠純 光村教育図書 1,210円
富田歩美さん:この絵本は最初に紹介した『できるかな?あたまからつまさきまで』と同じように、聞き手の子どもたちと一緒に体を動かす内容です。しかし、こちらは動きを見せた後「前のページにもどり もう一ど」という指示があって、もう一回同じ動きを繰り返させる点がポイントです。同じ動きを繰り返すのは子どもにとって「これ、知ってる、できる」という安心感がありますし、繰り返し読むことも好きですよね。
参加している子どもたちの雰囲気を見て、一度だけでなく何回か繰り返してみるのもおもしろいですよ。「しつこいよー」と子どもたちが笑いだすまでやってみることもありますし、調整して遊んでみてくださいね。
いろいろな体操のポーズが出てきますが、例えばゴリラとコアラが両手を上に広げるポーズは、胸を開く大きな動きで気持ちのいいポーズ。誰でも簡単にできて子どもたちに人気です。
無意識で行っている“呼吸”の動きに目を向ける『すっすっはっはっ こ・きゅ・う 』
空気を吸って吐く“こきゅう”。だれもが、いつでもどこでもどんな時でも空気を「すう~」と吸って「はあ~」と吐いています。そんな呼吸をテーマに「みんなが毎日している呼吸を楽しんでみようよ」といろいろな呼吸を紹介し一緒にやってみる絵本です。
最初は「すう~はあ~」という普通の呼吸から、だんだん呼吸に声をのせていきます。笑うと「あははは」という声になったり、うれしい声、変な声…声はいろいろな音、気持ちを伝えてくれることが分かります。
いつも自然に行っている呼吸は、イライラすれば浅くなり、うれしいと深くなって気持ちも明るくなる、まさしく「命の音」。自分の呼吸に耳を傾け「こんな気持ちの時、私はこんな呼吸でこんな声が出るよ」ということを感じ取れます。
『すっすっはっはっ こ・きゅ・う』
作/長野麻子 絵/長野ヒデ子 童心社 1,540円
富田歩美さん:こちらは「動く」というテーマの中でも私たちが普段、無意識で行っている“呼吸”の動きに目を向けて、呼吸をすることで遊んだりして楽しむ絵本です。
いろんな呼吸をしていくうちに「うれしい声」「変な声」をしてみようなどの指示があって、呼吸にはさまざまな声があり、だんだんいろいろな気持ちが声で表れるようになります。そうして“呼吸”という動きのおもしろさに子どもたちが気づいていきます。
呼吸に着目した絵本というのはとても珍しいと思いますが、最初に「おもしろいことやってみようよ」という文章があって、
そこから「なにがはじまるんだろう」と参加者の子どもたちの気持ちが上がっていきます。読み手も聞き手もいろいろな呼吸で「うわー」「うおー」と声を出したり、オリジナルの声を編み出したり、みんなで一緒に声を出すことで、すっきりした気分に。いろいろな方向から盛り上がることのできる絵本です。
今回ご紹介した「動く」絵本は、ぐっと子どもたちを引き付けるので読み聞かせ会のスパイスにぴったり。ちょっと子どもたちが飽きてきた頃、こういう参加型の絵本を取り入れれば強弱がついて読み聞かせも再度盛り上がります。
実際のお話会ではストーリー性のある絵本や低年齢から読める絵本などいろいろなラインナップで行われると思いますが、その中に一冊みんなで「動く」絵本があると子どもたちも飽きずに参加できます。
こうした絵本を用いて読み聞かせ会が楽しく盛り上がることで、ぜひ「本って楽しいなあ」と子どもたちの将来の本への興味につながっていってもらえたらと思います。
<プロフィール>
富田歩美
公共図書館館長。学生時代に図書館司書の資格を取り、公共図書館に勤務する。北海道内の図書館、7館で勤務し、館長として現在5年目。以前、児童書に特化した図書室の立ちあげを経験する。近年、図書館運営に活かすため、絵本セラピスト協会認定基礎絵本セラピストⓇ、JPIC読書アドバイザーを取得。