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紙の“芝居”の臨場感!! 日本固有の文化「紙芝居」の魅力を図書館司書さんが読み手ならではの視点で紹介します

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みなさんはこれまでに“紙芝居”に触れたことはありますか? 大勢で同時に楽しめる紙芝居は、幼稚園や保育園、学校はもちろん、最近では高齢者施設でも親しまれています。
紙芝居は昭和の初期に街頭で演じられた“街頭紙芝居”を発祥とし、今では「KAMISHIBAI」という名で海外にも広がっています。

今回、そんな「紙芝居」の魅力や読み聞かせ会でどう取り扱うべきかを北海道にある公共図書館の館長・富田歩美さんに質問形式で伺っていきます。
「現在の読み聞かせは絵本が主流ですが、紙芝居も欠かせない大人気コンテンツです。ぜひその奥深い魅力をお伝えしたいですね」と語る富田さん。存分に語っていただきます。


絵本との違いは? 紙芝居ならではの絵や演出の魅力

――紙芝居と絵本にはどのような違いがありますか?

富田さん:紙芝居は「芝居」であるという点が一番の違いです。絵本の読み方はさまざまで抑揚をつけずに淡々と読むことも多いのですが、紙芝居は芝居であり劇なので抑揚や演出がついていて当たり前なのです。

劇として作られているのでダイナミックな絵と、生の声の臨場感によるワクワク感ドキドキ感によって会場に一体感が出るのが紙芝居のだいご味です。読み手と聞き手の空気がピタッとはまったときに起きる盛り上がりはすばらしいですよ。

また、絵本ですと“ノド”と言われるページの継ぎ目が真ん中にあるので左右に絵をわけざるを得なかったり、真ん中に折り目がありますが、紙芝居は1枚の画面なのでそうした制約がありません。そのため、画面中央に登場人物をどーんと描くなど、迫力と躍動感あふれる表現が可能です。サイズも大きいので迫力がリアルに伝わります。

例えば、『こたろうと りゅう』のザ・キャビンカンパニーさんの絵も、紙芝居ならではの迫力ある絵が楽しめる作品ですよ。

【おすすめ紙芝居①】竜と少年が大迫力で迫る!



こたろうと りゅう』 
脚本/津田真一 絵/ザ・キャビンカンパニー 童心社 2,200円(税込)



竜の母から生まれた人間の男の子・こたろう。力持ちの立派な少年に育ったこたろうは、やせた土地で苦労している村人たちのために竜の母の力を借り、湖の水を抜いて豊かな土地を作ろうとします。
長野県に伝わる昔話をもとに、大画面で迫る竜の姿から目が離せない紙芝居。竜が空をかけ岩山にぶつかっていく大迫力さは圧巻です。


観客参加型から大勢に向けた演出まで! 年齢や人数に合わせた楽しみ方

――紙芝居にはどんな種類がありますか?

富田さん:大きく分けると物語を読んでいく「物語完結型」と、聞き手も参加する「観客参加型」があります。観客参加型の紙芝居ですと小さな子から参加でき、さらなる一体感が高まります。

例えば、『ごろん』という作品は、動物たちが次々とやってきて、地面に“ごろん”と寝転がっている場面があります。それを見た子どもたちも一緒になって“ごろん”と体を伸ばすと、のんびりリラックスしたような雰囲気になります。2、3歳の小さなお子さんから楽しめる観客参加型のおすすめ紙芝居です。

【おすすめ紙芝居②】みんなで一緒に体を動かそう



ごろん』 
脚本・絵/ひろかわさえこ 監修/三石知佐子 童心社 1,650円(税込)



富田さん:紙芝居の大きな画面をいかして右にいったり左にいったりごろごろ転がる絵を見ているだけでも楽しくなりますね。



富田さん:演出ノートには「1回目に演じて見せた後に、「今度はいっしょに『ごろん』しようね」とくりかえし演じてもいいでしょう」とあり、紙芝居をより楽しむための豆知識もついています。

また、紙芝居は特に大勢に向けての読み聞かせ会にぴったりです。読書週間等に“スペシャルお話会”と称して50人前後の子どもたちを集めて読み聞かせをするのですが、大勢でもとっても見やすいです。
紙芝居は「舞台」に入れて読むので扉を開いて読み始めたり、終わるときに余韻を感じながら蓋を閉めたり、という流れにも特別感があります。さらに拍子木をカンカンと鳴らして始めるのもワクワクします。


紙芝居で使用される舞台 画像提供:PIXTA


ほかにも四季の行事を伝えたり、最近では小学校で防災の学びのために地震の紙芝居を読んでいる話も聞きます。

さらに、紙芝居には通常の2倍の大きさの“大型紙芝居”というものもあり100人規模での読み聞かせにも対応できます。童心社さんという絵本・児童書とともに紙芝居も出版している会社では、通常の大きさの紙芝居と大型紙芝居の両方を出していて、これらを使って読み聞かせ会を盛り上げるテクニックもあるんです。

『おおきくおおきくおおきくなあれ』という楽しい紙芝居があるのですが、まず通常版を紙芝居の舞台に入れておきます。そして「私、魔法が使えるのよ。みんな目をつぶって」と言って子どもたちに目をつぶってもらい、「1,2,3」とカウントしている間に下に置いていた大型紙芝居を「ドーン! 大きくなった!」と出して見せると「うわー!」と大喜びしてくれるんです。そうした遊びも取り入れながらこの紙芝居を読むと、内容の楽しさもあいまってとっても盛り上がりますよ。

【おすすめ紙芝居③】魔法の言葉で“おおきくなっちゃった!”



おおきくおおきくおおきくなあれ』 
脚本・絵/まついのりこ 童心社 1,650円

ちっちゃなぶたが一匹います。みんなで声をかけてあげましょう。「おおきく おおきく おおきくなあれ」、すると次の画面ではあらふしぎ! 大きなぶたに変身! 次々登場するものが魔法の言葉で大きくなっていって……。


富田さん:小さなケーキもでてきますが、あまりの小ささに子どもたちが「見えなーい!」と前のめりになっていきます。「じゃあ、見えるように するね」と言って、「おおきく おおきく おおきくなあれ」を唱えると……



富田さん:ドーンと、このくらい大きくなるとワッと声が上がります。みんなでケーキを食べる真似をしたり、みんなで呪文を唱えたりと、楽しめる参加型のおすすめ紙芝居です。

赤ちゃんから高齢者まで。広がる紙芝居の可能性

―紙芝居はどのくらいの年齢の子から楽しめるのでしょうか?

富田さん:一般的な紙芝居は4、5歳ころの幼児からが対象ですが、乳幼児向けの紙芝居もあります。小学校に入る前の子たちには、アンパンマンの紙芝居が大人気です。紙芝居は、小さな子から小学生くらいまで幅広い子が楽しんでいますよ。

また最近では高齢者施設でも紙芝居が読まれていて問い合わせも多く、図書館に「高齢者向け紙芝居」コーナーを作ったこともあります。防犯目的で、オレオレ詐欺を防ぐ紙芝居なども出ているんですよ。

昔話要素のあるものやユーモラスな内容の紙芝居は、高齢者から子どもまで多くの人が楽しんでいます。
次におすすめする『あんもちみっつ』は、幅広い年齢層に楽しんでいただけると思います。


【おすすめ紙芝居④】テンポの良い掛け合いが魅力のほんわかユーモア民話



あんもちみっつ』 
脚本/水谷章三 画/宮本忠夫 監修/松谷みよ子 童心社 1,650円(税込)

なかよしのおじじとおばばが、あんもちを三つもらいました。おじじとおばばは一つずつ食べました。しかし、残った一つのあんもちをめぐり「はんぶんに するのは おしいねえ」と思い始め、にらめっこで勝った方が残りの一個を食べられることに。
「そおれ、あっぷっぷ」とにらめっこを続けますがなかなか勝ち負けが決まらず、とうとう真夜中に。そこへどろぼうが忍び込んできましたが、二人はにらめっこ勝負を続けてしまい……。
古くから語り続けられている笑い話をもとにした紙芝居。おじじとおばばのあんもちの取り合いが妙にかわいらしく、二人のユーモラスな表情に子どもも大人も「どっちが食べるの!?」とワクワク見守ってしまいます。



読み方のコツは? 上手に演じるための「抜き方」と「演出ノート」

―紙芝居の読み方は絵本と違うと伺いましたが、どう読むのがいいでしょうか?

富田さん:「芝居をしなければいけない」と思って構えてしまう読み手の方も多いと思いますし、私も最初は演じることに恥じらいもありました(笑)。でも、そんなに大げさにせず、まずはセリフのときにちょっと大きい声を出したり、そのぐらいからスタートすればいいと思います。

紙芝居で特徴的なのは、「抜く」という点です。絵本ではページをめくりますが、紙芝居では次の画面にする際は抜きます。しかし抜き方にさまざまな指定があって「ゆっくり抜く」だったり「ガタガタさせながら抜く」などがあります。画面を展開させる部分なのでタイミングが難しく、読み手の方は一度練習してから読むことをお勧めします。

紙芝居の下の方には「演出ノート」があって、とても丁寧に読み方の演出法が書かれているので、事前に読んで自分のものにしておくと焦らず演じることができると思います。

私の好きな紙芝居『あひるのおうさま』にも、詳細な演出ノートがついていて、「ここから劇的に」と言い回しの指定があったり、「あひるはわりとらくてんてきです」など、あひるの性格を教えてくれたりと、舞台の状況を説明してくれて、演じるときの豆知識も豊富です。



【おすすめ紙芝居⑤】あひるの活躍にワクワク! ドラマチックな紙芝居。



あひるのおうさま』 
フランスの民話 より 脚本/堀尾青史 画/田島征三 童心社 2,200円(税込)

とてもぜいたくで無駄遣いばかりしている王様に、働き者のあひるはお金を貸してあげました。しかし王様はちっともお金を返してくれません。あひるはお金を返してもらいに向かい、道中できつね・はち・川を味方にして王様に立ち向かいますが……。
フランス民話をもとにし、劇的な展開にワクワクドキドキします。




富田さん:このお話は、あひるのおなかの中に味方を入れておいて、危機の時に飛び出してくるという奇想天外な展開で、飛び出してくる様子のダイナミックな絵に子どもたちも目を見張りますよ。

難易度別の選び方と、未来へつなぐ紙芝居文化

―これから紙芝居の読み聞かせを始めてみたいという初心者は、今回紹介したおすすめの作品でいうとどれから練習するのがいいでしょうか?

富田さん:紙芝居は面白いのですが読み慣れるまで少々時間がかかります。初めて読まれる方は、最初は昔話や物語などよりも『おおきくおおきくおおきくなあれ』や『ごろん』など、聞き手も積極的に参加してくれる参加型紙芝居から始めるのがおすすめです。そして紙芝居に慣れてきたら民話紙芝居などにチャレンジしてもらえたらよいと思います。

今回ご紹介した紙芝居の中では、読みやすさの難易度としては

『おおきくおおきくおおきくなあれ』→『ごろん』→『あひるのおうさま』と『こたろうとりゅう』が同じくらいで、最後に『あんもちみっつ』でしょうか。『あんもちみっつ』は、おじいさんとおばあさんの掛け合いでお話が進むので、一人芝居みたいになり、なかなか演じるテクニックがいるんですよね。

未来へ読み継がれてほしい紙芝居

富田さん:紙芝居というと昔のもののようなイメージがありますが、紙芝居の出版で有名な童心社さんは今も毎月新しい作品を刊行しています。先ほど紹介した『こたろうとりゅう』も元は民話ですが、それに一世を風靡しているザ・キャビンカンパニーさんが絵を描かれていて新しい風を感じました。こちらは、1年に一度優れた紙芝居に贈られる五山賞 奨励賞を受賞しています。童心社さんでは紙芝居の講習会も行われていて、紙芝居を守ろうとする気概をとても感じます。これからも紙芝居の文化をつないでいってほしいです。

読み聞かせ会には絵本も紙芝居も大事で、紙芝居は絵本とは違った形で子どもたちとコミュニケーションを取ることができます。画面を“抜く”際の子どもたちとの一体感は絵本では味わうことができない紙芝居独特の世界だと思うので、読み手の皆さんもぜひチャレンジしてみてください。

<プロフィール>

富田歩美
公共図書館館長。学生時代に図書館司書の資格を取り、公共図書館に勤務する。北海道内の図書館、7館で勤務し、館長として現在5年目。以前、児童書に特化した図書室の立ちあげを経験する。近年、図書館運営に活かすため、絵本セラピスト協会認定基礎絵本セラピストⓇ、JPIC読書アドバイザーを取得。


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