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【中学受験のプロがおすすめ】子どもの共感力を育む小説11選

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「思いやりがある子どもに育ってほしい」「人の気持ちがわかるようになってほしい」。そう願う保護者は多いのではないでしょうか。他者は自分と異なる感情や考えを持っていると気づくきっかけのひとつが「小説」です。今回は、SAPIXなどで講師をつとめ、現在は独自の読解メソッドで中学受験のコーチングを行っている齊藤美琴さんに、「子どもの共感力を育む小説」11冊についてお話を聞きました。


主人公の気持ちに心を寄せやすい一人称の小説

 本を1冊読むだけで、知らなかった世界に飛び込めるのが読書の醍醐味。なかでも小説は、登場人物のさまざまな感情にふれられる絶好の機会です。

 小説には、主人公や登場人物を「彼」「彼女」など三人称で描く形式と、登場人物の語りで描く一人称の形式があります。「私」「僕」など主人公の語り口で綴られる一人称の小説は、読書の導入におすすめです。『〇〇君がそう言った。僕は頭にきた。』のように、出来事と感情が主人公の目線で語られるため、主人公の気持ちに乗って物語の世界に入り込みやすいという魅力があります。

「自分とは異なる感情や考えを持つ人がいる」ということに気づいていない子どもはめずらしくありません。主人公の感情をなぞり、心を寄せやすい一人称の小説は、登場人物の気持ちを追体験しながら、他者の考えにふれるいいきっかけになります。主人公と同じ気持ちになれなくても、「そう思う人もいる」とわかるだけで、子どもの世界は広がります。こうした経験が、共感力を育む一歩になります。

齊藤さんがおすすめ! 共感力を育む小説11選

「子どもが自分から本に手を伸ばさないようなら、友達を紹介するように主人公のキャラクターを説明して本を渡すのがおすすめです」と齊藤さん。等身大で共感しやすい小学生が主人公の作品から、少し背伸びをして知らない世界をのぞける中学生が主人公の作品まで、齊藤さんおすすめの一人称の小説11作品を紹介します。

■料理をテーマに小6男子と家族の絆を描いた
『天の台所』 作:落合 由佳 講談社



 5人家族の食事づくりを一手に引き受けていた料理上手な祖母を亡くした小学6年生の天。ひょんなことから、近所で有名なガミガミ怒るおばあさん「がみババ」から料理を教わることになり、料理を通じて人との温かなつながりを取り戻していきます。料理の師匠・がみババの哲学的なセリフが印象的で、読み手の心にしっかりと残ります。「台所」シリーズの1作目で、同シリーズは主人公を変えて現在3作が刊行されています。2作目は引っ込み思案な中学1年生の女の子と隣に引っ越してきたネパール人の女の子、3作目は不登校を選択した小学5年生の男の子と大学生になった天が、料理を通じて心を通わせる様子が描かれています。シリーズで読むのもおすすめです。

■読みやすい物語が多文化共生を考えるきっかけに
『となりのアブダラくん』 作:黒川裕子 講談社



 クラスメイトからの信頼が厚く穏やかな小学6年男子のハルは、ある日パキスタンからの転校生の“お世話係”に任命されます。豚肉を食べなかったり、礼拝の時間が必要だったり。宗教や文化の違いに戸惑う主人公やクラスメイトの姿が、ありありと描写されています。じつは主人公のハルには、人には言い出しにくい「趣味」があります。「こうあるべき」という価値観を押し付けられるのを恐れながら、自分も同じように相手に価値観を押し付けているのではないか。そんな多文化共生や合理的配慮の難しさを、やさしいタッチで読者に問いかける作品です。スカッとするラストシーンは痛快。すべての漢字にルビがふってある総ルビで、ところどころに挿し絵があり、状況理解を助けてくれます。学年を問わずスムーズに読み進めやすい作品です。

■がんばる意義を考える。小学校の合唱クラブが舞台
『ラベンダーとソプラノ』 作:額賀澪 絵:いつか 岩崎書店



 主人公の小学6年生の真子が所属している小学校の合唱クラブは、合唱コンクールで全国大会常連の強豪校。顧問の先生も部長も、いつしか部員にがんばることを求めるようになっていました。プレッシャーと厳しい練習が続き、雰囲気が悪くなっていく合唱クラブ。そんなとき、真子はたまたま知り合った男の子の誘いで、商店街の合唱団の練習に参加して「歌うのが好き」という気持ちを取り戻していきます。上を目指す人もいれば、純粋に楽しみたい人もいる。そんな合唱部員の心が交錯するさまが、吹奏楽部で活動していた作者・額賀さんならではの視点で巧みに描かれています。がんばることだけが正解なのか。周囲と歩調を合わせることに疑問を感じた経験がある子どもにぜひ手にとってほしい一冊です。

■忘れられない小学6年生の夏の日々
『夏の庭 The Friends』 作:湯本香樹実 徳間書店



「死んだ人って見たことある?」。そんなたわいもない会話から、町はずれに暮らす老人を観察し始めた小学6年生の男子3人。夏休みになってもいつもと変わらない淡々とした日常が続くなか、男の子3人と老人の距離は次第に縮まり、不思議な交流が生まれ、やがて男の子たちが一生忘れられない出来事が訪れます。小学6年男子がひと夏で大人になっていく様子が、丁寧な描写とともに描かれた作品です。実写映画化されているので、本を読んだ後、答え合わせするようにして映画を見る楽しみ方もおすすめです。刊行30年以上経っても色あせない名作です。

■きょうだい児が抱える生きづらさを赤裸々に描いた
『君の火がゆらめいている』 作:落合由佳 講談社



 障がいを持つきょうだいがいる「きょうだい児」をテーマにした物語です。主人公の葉澄は、発達障害のある双子の姉・菜々美を持つ小学6年生の女の子。姉を大事に思っているものの、通院や登校の同行など日常的に行っている手伝いから解放されたいという切実な思いを抱えています。本作では、そんな葉澄の葛藤が赤裸々に描かれています。人間の良心を「火」にたとえたタイトルは秀逸。きょうだい児が抱える生きづらさを、読み手に伝わりやすい形で描いたヤングアダルト作品です。第72回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(中学校の部)にも選ばれた注目作です。きょうだい児の存在を知るきっかけとして、たくさんの子どもに、そして大人にも届いてほしい一冊です。

■オンラインで育まれた中学生の友情をそれぞれの視点で
『オンライン・フレンズ@さくら』 『オンライン・フレンズ@ユナ』
作:神戸遥真 絵:カシワイ 講談社




 容姿に関するコンプレックスを持つ中学1年生のさくらと、友達関係に悩む中学2年生のユナ。好きな漫画をきっかけにSNSでつながり、ビデオ通話で友情を育む2人の気持ちや事情が、1冊ずつ一人称で語られています。友達のことは信頼しているけれど、どこまで本音を打ち明けるべきか。主人公のさくらとユナが抱えるジレンマに共感する子どもも多いのではないでしょうか。どちらの作品からでも読めるようになっていて、もう一方を読むことで、相手側の事情や気持ちを知ったうえで、物語を別の角度から楽しめます。SNSやオンライン通話など、まだ知らない世界をのぞいてみたいという小学生の心をくすぐるテーマ設定も魅力です。著者の神戸遥真さんは中高生を主人公に、多様性をテーマにしたヤングアダルト小説を多数執筆しています。同じ作家のほかの作品にも興味が広がるきっかけになるかもしれません。

■友人関係で悩む中学1年女子の成長ストーリー
『12音のブックトーク』 作:こまつあやこ 絵:友風子 あかね書房



 生徒がそれぞれ好きな本を静かに読む「朝読書」。小学校の友達関係で失敗してしまった中学1年生の初奈は、ひょんなことから朝読書の10分間だけ、別の学校に通う中学1年生の柚菜と「入れ替わる」ようになります。「入れ替わり」という設定により、初奈の視点で2人分の人間関係を味わえるところが大きな特徴。入れ替わりの謎を2人で解き明かしながら、「押しつけがましい」と「自分を出す」のちょうどいい塩梅を探して成長していく主人公の姿が描かれています。表紙に惹かれる子どもも多く、ファンタジーやおしゃれ好きが入り込みやすいストーリーです。字組がゆったりしていて読み進めやすいので、ふだん本を読まない子どもにもおすすめです。

■思春期女子の複雑な友人関係を描いた
『文通小説』 著・作:眞島めいり 講談社



 思春期女子の心をリアルに描いた作品です。中学2年生の最後の日、親友から突然転校すると打ち明けられた主人公のちさと。別々の学校で中学3年生となった2人は、親友の提案で「文通」という形でコミュニケーションを続けることになります。スマホですぐ返信することが当たり前になったいま、文通はタイムラグがあって既読もつかない非日常の連絡手段。手紙はまだかな、きっともうすぐ届くだろうと期待しながら、離れてしまった親友は私のことをどう思っているんだろうと不安になり、「相手にとって自分がいちばんの親友であり続けてほしい」と願う。そんな思春期女子の複雑な心が、繊細で丁寧な筆致で表現されています。友人関係に悩んだ経験がある子どもが感情移入しやすい作品です。

■人付き合いが苦手な中3男子の成長物語
『ぼくたちの卒業写真』 作:天川栄人 絵:くまおり純 文研出版



 将来カメラマンになることを夢見ている蔵木は、人付き合いが苦手で風景写真ばかり撮影している中学3年生。ある日、学年一の人気者・星野から「一人ひとりの個性が光る自由な卒業アルバムをつくりたい」と持ちかけられるところから物語が動き出します。形に残る卒業アルバムで、どうありたいと願うのか。人との関わりが苦手で面倒くさいことは避けてきた蔵木でしたが、同級生一人ひとりとカメラを通して向き合うことで、同級生それぞれの物語を知り、心の殻を破っていきます。卒業を迎える中学3年生を描いた物語は、小学校高学年の子どもたちにも想像しやすいはず。蔵木の成長を通じて、読み手の他者理解も深まります。

■2人の小6女子の視点を1冊で楽しめる
『あの子の秘密』 作:村上雅郁 絵:カシワイ フレーベル館



「イマジナリーフレンド」という言葉を聞いたことがありますか? 『あの子の秘密』は、誰にも見えない秘密の友達「黒猫」がいる小学6年生の小夜子と、黒猫の存在にいち早く気づいた転校生・明來(あくる)の視点が交互に入れ替わりながら描かれた作品です。それぞれまわりには言えない“秘密”を抱えた2人が、クラスの複雑な人間関係のなかで少しずつ心を通わせていきます。友達関係に悩んだことがある子どもに刺さるストーリー展開です。イマジナリーフレンドを持つ子どもは、それほどめずらしくないと聞きます。そうした子どもたちがこの物語に出会い、心を整理するきっかけになるといいですね。読んだあと話が弾む作品です。ぜひ親子で読んで、感想を話してみてください。

■章ごとに語り手が変わりテンポ良く読み進められる
『おにのまつり』 作:天川栄人 講談社



 岡山の夏の風物詩として知られる「うらじゃ」という夏祭りで踊ることになった中学3年生たちの物語です。成績や評価に問題のある生徒の救済措置としてつくられた「うらじゃプロジェクト」。コーチとして関わることになった主人公と、学校で“問題児”とされる4人の同級生は、それぞれトラウマやコンプレックスを抱え、心の壁をつくっています。踊りの練習に打ち込むことでそれぞれが変わり、成長していく姿が、章ごとに5人それぞれの視点でテンポ良く描かれています。祭りにかける意気込みや地域の関わりの強さ、熱量の高さも特徴。物語の展開が早く、クライマックスの「うらじゃ」に向けて熱量がどんどん高まっていきます。先が気になる展開で、するすると読み進められる一冊です。

声かけや音読で子どもが本を開く手助けをしよう!

「子どもが自分から本に手を伸ばさないようなら、さまざまな手助けをしてまずは本を開いてもらいましょう」と齊藤さん。具体的なサポート方法を教えていただきました。

「おすすめは、小説の冒頭部分を親が音読すること。物語が動き出すまでの5〜10ページほどを音読して、『この続き、どうなるのかな?』『感想を知りたいから読んでみて』とうながしてから本を渡してみてください。音読できないときは、親子で本を一緒に開いて、子どもとともに目次やあらすじに目を通したり、親がストーリー設定を解説したりするといいですね。本の帯には、どんなジャンルで、どんな人におすすめで、どれくらいの人が読んでいるのかという情報が記載されているので、子どもの心をくすぐる要素があるか参考にしてみてください。近年のヤングアダルト作品は表紙が魅力的なものが多いので、本棚にしまわず、表紙が見える状態でリビングなどに置くと、手にとるきっかけになるかもしれません。まずは本を開き、物語が動き出すところまで読めれば、子どもが一人で読み進める可能性がグッと高まりますよ!」

 すぐれた小説は、子どもの心の成長に大きな力を発揮します。長期休暇や読書の秋に、齊藤さんおすすめの作品とアドバイスをぜひ試してみてください。


取材・文:三東社


プロフィール



齊藤美琴
中学受験のコーチングをメインに、教科指導、幼稚園・小学校受験の相談など、家庭の力を引き出すレッスンを行う。SAPIXの個別指導部門・プリバート東京教室での国語科専任講師、ジャック幼児教育研究所(四谷教室)での講師を経てフリーランスとして独立。読解トレーニングときめ細かい学習コーチングに定評がある。2022年に渋谷ヒカリエ8階のシェア型書店に『みこと書店』をオープン。PICCOLITA(ピッコリータ)代表。



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