
ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第十四回は、ネコの自由な様子が愛らしい絵本『ねこはるすばん』です。

『ねこはるすばん』 (町田尚子:作 ほるぷ出版刊)

今日は『ねこはるすばん』ですね。

表紙の絵がぐっときますよね。

いわゆる“かわいいネコ”ではないんですよ、表情がね。

茶目っ気もあるし、いたずらっ気もある。人間くささもあるというか。いいですよね。本屋さんで表紙のネコと目が合ったら欲しくなりますよね。
僕は絵本の見返しの部分のこだわりがすごく好きです。

見返しっていうのは、物語が始まる前と後に入っている、物語に直接関係しない部分のところですね。
表紙のネコと同じ、茶トラ柄なのかな?

この紙もこだわりがあるんですよねきっと。

ザラザラしている。

そう。毛の感じがあるんですよね。

そうですね。

毛の質感、ここにネコ愛を感じました。

本当ですね。

『ねこはるすばん』の見返し

町田尚子さんの絵本は『ねことねこ』も持っているんですけど、それもまず見返しに惚れて、中身も好きになって、買ったんですよ。
表紙に黒猫と白猫がいるんですけど、最初の見返しが黒くて、最後の見返しが白いのです。何だか素敵だなぁと思って。
ここまで丁寧に作ってもらうと、収集して家に置いておきたい本、にもなりますよね。

本当ですね。ネコ絵本ってたくさんありますけれど、収集したくなるというのは、何がちがうのでしょう。

ネコ愛かな? ネコ好きによるネコ好きのための絵本っていう感じが伝わります。

なるほど。

物語のなかで、ネコが「にんげん、でかけていった」って言うんですよね。“人間”っていう言い方がすごく印象的で、一気に引き込まれますよね。

本当ですね。“飼い主”よりも“人間”っていう、ちょっと引いて見ているみたいな「あいつ出かけていった」みたいな雰囲気がありますね。

そうですね。あとは「ヒゲのむくまま きのむくまま」とか、「きたいにシッポを ふくらませる」とか、すごくネコらしいフレーズが入っているんですよ、各ページに。ネコっぽくていいなと思いました。

本当ですね。

文章が短いから、絵を読むというか、絵を見て味わうしかない部分があって、余計に目がいくというか。

そうですね。とにかく絵をじっくり見ようって思いますね。

ネコがこういうことをしていたらおもしろいよねっていうのを、じっくり味わう絵本だと感じました。

そうですね。

これ、僕みたいに文章だけを考える人間が、この文章を提出しても出版社の会議には通らないですよね。

その可能性はあります(笑)。

「絵描きさんに、こういう絵を描いてもらいたいんです」ということを言葉で伝えるのは、非常に難しいんで。僕みたいな文章作家がこういう文章を提出して、「これ面白いんですよ町田尚子さんに描いてもらったら」……などと熱意をもって伝えても、「いやあ、けいたろうさん……そうだとは思うんだけどちょっと説得力ないな」みたいな。「絵がないとわからないな」ってなりますよ(笑)。この絵本は絵の力が想像力を掻き立てるというか、ネコの世界を覗き見るような感じなのですごくいいなと思います。

いいですよね。

絵本っぽい、すごく絵本っぽい。

本当ですね。犬派のけいたろうさんをも引き込む魅力を持ったネコ絵本でした。どうもありがとうございました。

けいたろうさん作『ねこはるすばん』のポップ