小さいころから、学校以外にも習い事や塾などでとても忙しい子どもたち。「寝る時間を削ってでも……」となりがちですが、「睡眠」こそ賢い子・生き抜く力を持つ子に育つためにとても重要なもの。
そうはいってもなかなか時間がとれない、とお悩みの保護者のみなさんのために、親も子もがんばりすぎないベストな睡眠のためのよい方法をお伝えするのがこの本です。
※本連載は『忙しくても能力がどんどん引き出される 子どものためのベスト睡眠』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。
とにかく時間がない高学年の子どもたち。学校で元気に活動ができて、塾では勉強に集中するために、就寝・起床時間を毎日一定にして睡眠リズムを整えることは基本です。これに加えて質の良い睡眠をとるには、「ひとり寝でぐっすり眠るための6つのポイント」をぜひ参考にしてください。
ただ、高学年だからこそ起こり得る睡眠のお悩みも出てきます。ここではその解決法をご紹介します。
■ 夕食のタイミング
塾が21時に終わり、帰宅後に夕食というご家庭もあるでしょう。消化時間を考えると、本当は食事を睡眠の3時間前までに終えるのがベスト。しかし、育ち盛りの子どもたちは、塾に行く前に食べても、塾の授業の合間にあるお弁当時間で軽食を食べても帰宅後にはお腹が空いているはず。塾から帰宅後に食事をするなら、消化に時間がかかる揚げ物や脂肪分の多い肉などは控えたほうがよいでしょう。睡眠の直前に満腹になるまで食べると、食べたものを消化するために胃腸が働き、どうしても脳や体が休まりません。ですから、できれば塾に行く前か塾のお弁当時間で軽く夕食を食べて、帰宅後もお腹が空いているようならおにぎりなどを追加で食べるようにすると、より良い睡眠がとれます。
とはいえ、仕事やきょうだいの子育てなどで忙しい場合、子どもが塾に行く前に食事をさせるのは難しいですよね。そんな時、私がおすすめしているのは具だくさん味噌汁とおにぎりです。おにぎりは事前に作って冷凍をしておき、前日にお味噌汁を多めに作っておいて冷蔵庫に保管しておきます。子どもが一人で塾に行く前におにぎりと味噌汁をレンジで温めて食べれば、火を使う心配もなく、お腹も満たされます。そして帰宅後、主菜と副菜、サラダなどを食べるといいでしょう。このおにぎりとお味噌汁を塾弁として持っていってもよいでしょう。
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もし、塾が自宅から遠くにあって帰宅時間が遅くなるようなら、塾前に作り置きの主菜と野菜などを食べてもらいましょう。そして帰宅途中の車の中でおにぎりを食べれば、寝る直前に胃もたれする脂っこいものを食べることを避けられ、かつ食事時間を短縮することができるので睡眠時間を犠牲にすることもありません。
なお、一つ注意をしてほしいことがあります。それは夕食をとる時間帯です。ある日は19時に食べて、ある日は22時、と夕食の時間に90分以上の差があると入眠時間がずれ、疲労や精神面にも影響があるという報告があります。塾で忙しいでしょうが、なるべく同じ時間にしましょう。
■ お風呂は無理に入らなくてもいい
疲れを取るために、塾から帰宅後にお風呂に入るように子どもに伝えている家庭もあるでしょう。でも、睡眠直前のお風呂はあまりおすすめできません。
眠りに入っていく時、脳と体(内臓)の温度、いわゆる「深部体温」は下がっていきます(図7)。この深部体温が下がると眠気は強く、深くなるという研究結果が出ています。でも、お風呂に入って温まった直後は脳も体も温度はかなり高くなっていて、ここから体温が下がるまでには時間がかかります。そのため、入浴した直後に布団に入ると深部体温を下げることができず、すぐに眠ることができないのです。塾から帰宅して就寝時間まで時間がないようならお風呂には入らず、パジャマに着替えて睡眠を優先して、翌朝お風呂に入る方が、結果的に良い睡眠をとることができます。
入浴後90分、最低でも60分が経過すれば皮膚から熱が放出されて深部体温が下がります。どうしてもお風呂に入りたい場合、例えば子どもが22時30分に寝るのであれば、21時までにお風呂に入れば睡眠を阻害することはありません。ちなみに40℃前後のお湯に15分程度入ると深部体温が上がり、90分後には温度が下がるので深い眠りに入ることができます。一方、お風呂に入りたいけれど、その時間がないようであれば、足湯がおすすめ。リフレッシュもできますし、軽く温めるだけなので深部体温が下がるまでの時間が短くなり、深い眠りも得やすくなります。
日中、人間は脳をフル活用しています。そして子どもたちは寝る直前まで勉強をして脳の機能を働かせています。そんなオーバーヒートぎみの脳の温度を下げて、休ませるためにも、お風呂を上手に使うことを考えましょう。
■ 寝室の温度調節で睡眠中の体温をコントロール
寝室の温度は大人が肌寒いくらいがいいとお伝えしました(P76)。これはまさに体から上手に放熱をさせ、深い睡眠を促すためです。暖房が強すぎたり、夏で室温が高すぎたりすると眠りは浅くなります。ですから、冬は眠ってから少ししたら暖房を下げる、夏は眠りに落ちるまでは熱を放出しやすいように室温を低くして、その後は寝苦しくない程度に冷房をつけ続けるなど、寝室の温度をタイマーで調節をすると、子どもはよりぐっすりと寝られます。
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■ 塾帰りにコンビニに寄らない
塾帰りに「甘いものを買いたい!」と子どもとコンビニに行くこともあるでしょう。でも、帰宅時にコンビニに行くのはなるべく避けてほしいのです。睡眠と光の関係について説明をしましたが、夜間に明るい光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制されてしまいます。コンビニは照明が煌々と照っていて明るいので、その強い光が眠気を遠のかせてしまいます。同じように自動販売機やスーパーマーケットなどもかなり明るいので、なるべく避ける方が良いでしょう。
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■スマホや動画は刺激の少ないものを少しならOK
テレビを見る時間がない受験生の子どもたちは、自宅までの移動時などのスキマ時間でゲームや動画コンテンツ、またSNSを楽しむこともあるはず。ただ、電子機器から発せられるブルーライトは脳の強い覚醒を引き起こし、刺激的なゲームやコンテンツは脳を活性化させてしまいます。さらには視聴をやめられなくなりこっそりベッドの中でスマホを見て、睡眠時間を削っているということもあるでしょう。
現代においてスマホは睡眠を阻害する一番の要因と言っても過言ではありません。特に子どもにとっては楽しい情報が次々と出てくるので、やめることは難しいはず。だからこそスマホ使用のルールを決め、その悪影響も伝えてほしいと思います。「毎日頑張っている勉強を定着させるためにも、そして健康な体を維持するためにもしっかり睡眠をとってほしい。だからスマホの利用ルールを一緒に決めよう」と親の気持ちを伝えつつ、子どもの意見を尊重しながら話し合ってみてください。
ルール決めの際に気をつけたいのが視聴時間と場所、そしてコンテンツの内容。本来であれば就寝時間の2時間前にはスマホを見るのをやめてほしいのですが、そうなると塾から帰宅したタイミングではスマホ利用の時間を設けることができません。それではスマホを取り上げられたのと一緒で、子どももストレスがたまるはず。例えば「車で移動中の15分」「帰宅後の食事を準備する間の15分」など自室での利用はやめて、親の目の届くところでなるべく就寝時間直前ではないタイミングで時間を決めて利用の許可をするのがよいでしょう。
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また、視聴するコンテンツにも注意が必要です。ショート動画など次々と新しい内容が出てくるものや、刺激的なゲームは脳を興奮状態にさせてしまいます。SNSなどコミュニケーションをするものも、お友達の言葉や反応が気になってしまい眠れなくなることがあります。どうしても見るのであれば刺激が少なく、悩みの種にならない情報が発信されるコンテンツを時間内で見るのがいいでしょう。スマホ使用はすべてNGではなく、睡眠を妨害しない程度に子どもの息抜きツールとして賢く使いましょう。
■ 「休む時はしっかり休む」を心がける
私(著者)が自分の子どもたちに願うのは、「自分自身を好きでいること」と「やり抜く力を身につけること」。しかし、しっかり睡眠がとれていないと、この2つを育むのはなかなか難しいのです。
そして大人が幸せで幸福度が高いことも、子どもの笑顔に大きく影響します。ですので、この本では大人の睡眠についてもふれています。
親も子も、睡眠をないがしろにせず「休む時はしっかり休む」を心がけていただけることがとても大事。この本がみなさんにとって、「最高のねむり」を手に入れられるヒントになることを心から祈っています。
書籍情報
- 【定価】
- 1,650円(本体1,500円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784046068576