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子育て・教育

体内時計を整えるのは「朝日」「定時起床」「朝ごはん」


小さいころから、学校以外にも習い事や塾などでとても忙しい子どもたち。「寝る時間を削ってでも……」となりがちですが、「睡眠」こそ賢い子・生き抜く力を持つ子に育つためにとても重要なもの。

そうはいってもなかなか時間がとれない、とお悩みの保護者のみなさんのために、親も子もがんばりすぎないベストな睡眠のためのよい方法をお伝えするのがこの本です。

※本連載は『忙しくても能力がどんどん引き出される 子どものためのベスト睡眠』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。


 夜になると眠くなり、朝になれば目が覚める。この人間のサイクルはどうして起きていると思いますか? これには「体内時計」が大きな役割を果たしているのです。 アメリカ人科学者のホール、ロスバッシュ、ヤングが体内時計に指示を出す遺伝子を突き止め、2017年にノーベル生理学・医学賞を受賞して話題になったので聞きなじみがあるのではないでしょうか。体内時計は「概日リズム」とも呼ばれ、私たちの体内の時間を調整するシステムのこと24時間周期の昼夜の変化に合わせ、体がその時間の適切な状態になるようにコントロールをするものです。だから夜になればメラトニンという睡眠を促すホルモンが出て自然に眠くなり、朝になれば体が活動できるような状態に変わるのです。



 しかし私たちの体内時計は、1日約24 時間10分の周期で動いています。でも、1日は24時間ですよね。つまり、人間の体内時計の周期は24時間よりも少し長いのです。だからどこかでこのズレをリセットしなくてはいけません。そのリセットに必要なのが「朝日を浴びる」「毎日同じ時間に起床する」「朝食を食べる」なのです。これらができていれば、体内時計が1日24時間に合わせてきちんと働いて、日中眠くなることもなく活動できます。

■ 朝日を浴びる

 体内時計を整えるためには、朝起きて太陽の光を浴びることが大切です。太陽の光を浴びることで、脳が「朝だ!」と認識し、少しずつ遅れていた体内時計のずれをリセットできるのです。

 また、太陽の光を浴びると脳内で働く神経伝達物質「セロトニン」が分泌されます。このセロトニンの分泌量が増えると、夜間に自然な睡眠を促す睡眠ホルモンともいわれる「メラトニン」の分泌量が増えることがわかっています。つまり、セロトニンはメラトニンを分泌するための材料なのです。だから、体内リズムを整えてしっかり寝るためにも、朝起きたら曇りや雨の日でもカーテンを開けて自然光を浴びましょう。晴れている日は外に出て太陽の光を十分に浴びましょう。



 ちなみにメラトニンは起床してから14時間経った頃から分泌され始めます。起床時間が遅くなるとその分メラトニンが分泌されるのも遅くなり、自然と眠くなる時間が遅くなってしまいます。日に当たって体内時計を朝のうちにリセットできないとおのずと夜型になり、翌朝も起きられなくなってしまいます。だから朝の早い時間に太陽の光を浴びることが重要なんです。

 なお、1日30分程度太陽の光を浴びるのが効果的といわれています。体内時計がもっとも敏感に太陽光に影響するのは6〜8時半なので、朝起きたらカーテンを開けて窓から光を入れ、登校中に日に当たるだけでも十分体内時計はリセットされます。意識的に朝は子どもに太陽の光を浴びさせてあげましょう。

 ただ、ここで注意したいのが日焼け止めの利用です。最近は強い紫外線を気にして子どもにも日焼け止めを塗っているご家庭もあるでしょう。環境省が発行した『紫外線環境保健マニュアル』によると、SPF30の日焼け止めの使用でビタミンDの体内生成量が5%以下に減少するといわれています。ビタミンD不足は骨に障害の出る「くる病」を引き起こす原因となります。日焼け止めを塗っている時や、長袖・長ズボンなどを着用している時は手のひらなどを太陽に向けるようにしましょう。肌のどこかを直接日光に当てれば効果は得られるので、日焼け止めを使用する時期や秋・冬などはこれを頭の片隅に置いておくとよいですね。ちなみに我が家は子どもたちも大人もビタミンDのサプリメントを飲んでいます。

■ 毎日同じ時間に起床する

 「起きる時間が遅くなるとメラトニンの分泌もその分遅くなって、就寝時間も遅くなる」ということを前述しましたが、この状態を引き起こさないためにも、毎日なるべく同じ時間に起きることが大切です。

 でも、週末くらいは平日の疲れを取るために親子とも朝はゆっくり寝たいと思いませんか? 実はこれが落とし穴なのです。平日はきちんと早起きをしているのに、週末は遅く起きるという生活になると、週末で体内時計をリセットするのが遅くなり、その結果、月曜日の朝に起きるのがつらくなってしまうのです。



「早寝早起き」とよく言いますが、実は「早く起きる」ことで「早く寝られる」のです。毎日同じ時間に起きれば、自然と毎日同じ時間に眠くなります。そうすることで体内のリズムも整っていくのです。小学校に入学して疲れが見えてくると、親としてはなるべく朝ギリギリまで寝かせてあげたいと思いがちですが、質の良い眠りのためにも平日も休日も起床時間は一定にしましょう。ただ、無理は禁物です。子どもの様子を見て疲れがたまっているようなら、早めに寝かせて睡眠時間を長めに確保して、翌朝はいつもの起床時間より遅くなっても少しなら大丈夫です。

■ 朝食を食べる

 体内時計には脳にある「主時計」と、内臓や血液などにある「副時計」があります。朝日を浴びて「朝になった」と認識するのは主時計ですが、内臓にある副時計は光ではなく、朝食を食べることで動いて、体内時計をリセットさせます。7時に起きても朝食を食べないと副時計が進まないので、体の中が時差ボケ状態になってしまいます。主・副時計の両方とも同じリズムで時を刻むためには、起床時間を整えるのと同時に、朝食もなるべく同じ時間に食べることが大切です。



 また、メラトニンを分泌しやすくする朝食を食べると、より睡眠の質が向上します。メラトニンの素となる必須アミノ酸「トリプトファン」と「ビタミンB6」を意識して朝食を用意できるといいですね。栄養素だけ聞くと調理するのが大変そうに聞こえますが、トリプトファンやビタミンB6を多く含むのは鮭やマグロ、鶏胸肉、納豆などです。特に魚の脂は体内時計をリセットする力が強いのでおすすめです。焼いた鮭をほぐしておにぎりにして海苔を巻く、ごはんに納豆を乗せるなどで十分。ここに、前日のうちに多めに作った具だくさんのお味噌汁をプラスすればバッチリです。朝から食欲がわかない子どもには納豆だけを食べさせたり、ヨーグルトやチーズなどタンパク質を意識して少しずつ食べられるようにしましょう。

 

■ 「休む時はしっかり休む」を心がける

私(著者)が自分の子どもたちに願うのは、「自分自身を好きでいること」と「やり抜く力を身につけること」。しかし、しっかり睡眠がとれていないと、この2つを育むのはなかなか難しいのです。

そして大人が幸せで幸福度が高いことも、子どもの笑顔に大きく影響します。ですので、この本では大人の睡眠についてもふれています。

親も子も、睡眠をないがしろにせず「休む時はしっかり休む」を心がけていただけることがとても大事。この本がみなさんにとって、「最高のねむり」を手に入れられるヒントになることを心から祈っています。

書籍情報


著者: 愛波 あや 監修: 三池 輝久

定価
1,650円(本体1,500円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046068576

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