
子どもの伸びようとする力を、知らず知らずのうちに妨げていませんか?
子どものすることには、すべて理由があります。
「ダメ!」と言う前に一呼吸おいて、「なぜこんなことをするのかな」と見守ってみませんか?
娘を有名小学校に合格させ、受験対応型保育園の園長としても実績を上げてきた「花まる子育てカレッジ」ディレクターが、子育て中の悩みや疑問100に答え、世界で生き抜く力をつける、具体的なメソッドを伝える『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』
連載第1回は、本誌の中から『「自己肯定力」をはぐくむ』をピックアップします!
※本連載は『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。
きびしくすることも子どものためには必要?
【焦りや不安からのきびしさはマイナスに】
不安解消のためのしつけは子どもに響かない
子どもの将来を思って、きびしくする。しっかりしつける。うっかりしているマイペースの子どもが心配でしかたない。お勉強についていけるか不安で、つい先取りで教えたくなる。真面目で一生懸命なママたちは、そんなことを感じているかもしれません。
ところが子どもは、きびしいママや心配するママが、なぜ不安になっているのか理解できません。そして、そんなママの焦りや不安だけをキャッチしてしまいます。

子どもはやさしい笑顔のママが好き
「いいママ」になる前に、ハッピーなママでいつもニコニコしていたら、子どもは心が満ち足りて、張りきっていろいろなことにチャレンジしてくれます。まずは、ママの笑顔! なのです。
とにかく恐竜が好きな男の子の小学校受験の本番の面接で、こんなことがありました。
「園でお友だちと、どんな遊びをしますか?」
「恐竜ごっこです」
「お父様と一緒にどんなことをしますか?」
「お風呂に入ります。お風呂で恐竜ごっこをします」
「大きくなったら、何になりたいですか?」
「ティラノサウルスです」
練習をしていた通りに、恐竜尽くしの答えで順調に面接は進みました。何せ、将来の夢は恐竜博士ですから、自信満々にお返事をしていたそうです。ただ最後の問い「あなたの宝物は、何ですか?」には、いつもならば「恐竜図鑑です」と答えていたのに「やさしいママです」と答えたそうです。
小さな6 歳の子どもでも、本番の緊張感や真剣さを受け取っています。そんな時に思わず出た言葉は、家族にしかない思い出であり、ママにとっては宝物。これを話してくれたママはうっすら光るものを目に浮かべて、いつもの笑顔が輝いていました。

子どもの心を満たすためには?
【「ダメ」はできるだけ言わず親も一緒におもしろがる】
心が満たされている子は問題が少ない
子どもが「満たされる」というのは、どういうことでしょうか。お腹がいっぱいになる、よく眠れている、たくさん体を動かしている……など、体が「満たされる」ために必要なことはわかりやすいものです。
園長時代には、心が「満たされている」と感じる子どもは、お友だちにもやさしくできるし、努力することを楽しめることが多いなと感じました。落ち着いた気持ちで、話を聞くことができるし、お友だちともめることもほとんどありません。親であれば、わが子が「満たされた」状態で成長してほしいと願っていることと思います。子どもの心が「満たされる」には、何が必要なのでしょう? わたしは子どもの気持ちや考えを大人が想像することがとても重要だと感じています。子どもの頃の自分の気持ちを思い出してみると共感できるのではないでしょうか。

「ダメ」と思える行動は子どもの発達に必要
大きなけがをするなどの危険なこと以外では、子どもに「ダメ」という言葉をかけないほうがよいと考えています。大人の目から見ると、「ダメ」なことばかりをしたがるように見えてしまう幼児の行動には、その子どもの発達のために必要なことが秘められているからです。一見「ダメ」に見える「地面に寝っころがる」「水たまりでジャブジャブ遊ぶ」などの行動の奥にある、子どもの気持ちに寄り添うこと、そして子どもと同じ目線でおもしろがりながらその行動に付き合って、大人もその行動で楽しんでいると、子どもは「満たされる」ように思えます。
シェイクスピアは「ものの良し悪しは、考え方ひとつで決まる」と『ハムレット』で書いています。客観的事実よりも「本人にとってどういうことなのか?」がとても大切ということ。子どもにとって、「コップの水をこぼした」のは、「水の様子を知る実験」かもしれないし、「水にさわりたい欲求」かもしれません。それを「部屋をよごす」「服をぬらす」行為と決めつけてしかるのは、どうでしょう。子どもの行動を大人の論理で測るのではなく、子どもの意図を想像しながら、こうしたかったのかな? と寄り添うことで、子どもの日常がわくわくするものになります。

できるところから無理のない範囲で!
連載第1回は、本誌の中から『「自己肯定力」をはぐくむ』をピックアップしました。
まずは「これなら、できそう」「こんなふうに考えればいいのか!」と共感できたことから、試してみてください。子どもの様子を見ながら、そして自分の気持ちの負担になっていないかを確かめながら、できる範囲で。きっと今の子育ての時間がより楽しいものになるはずです。
【著者プロフィール】
●「花まる子育てカレッジ」ディレクター。
慶應義塾大学文学部卒業。雑誌「オレンジページ」編集部を経て、公式サイト初代編集長。出版社勤務のかたわら、長女を難関私立小学校に合格させる。その後、受験対応型保育園で初代園長を務め、生活の中で学ぶカリキュラムを立案する。認可保育園保育統括や企業主導型保育園の立ち上げにも従事。小学校受験の個人指導でも、慶應義塾横浜初等部、早稲田実業学校初等部、立教女学院小学校、
桐朋小学校などの合格実績を上げ、現職に。子育てに悩む親が、自らの価値観に沿って子どもに向き合う手助けをすることを信条としている。