フンをころがす不思議な昆虫・フンコロガシを主人公にした絵本、『フンころがさず』が発売中です。「作」を担当された大塚健太さんにつづき、今回は「絵」を手掛けられた高畠純さんに、本作でこだわったところなど、お話を伺いました。
▶コチラ 大塚健太さんのインタビューは
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■結論を急がず、絵本全体に遊びがある
──大塚さんの原稿を、初めて読まれたときの感想をお聞かせください。
絵本としてのテキストを、きちんと15画面に書き分けてありました。
これは、画面を想像しながら作業を進められたと感じました。
誰でもですが、まず作者が何を伝えようしているのかをつかみます。
その内容がはたしてぼくの絵で表現できるのか、作に共感できるかが大切なところです。
自己肯定がテーマであれば、ややもするといちもくさんに、自分は自分でいい、と結論を急ぎたくなるのですが、この絵本では、フンコロガシが“フンなげ”とか“フンふんづけ”とか、ほかのフンコロガシになることを想像する場面がでてきます。この場面があるから絵本全体にゆとり、遊びが感じられます。後半キツツキと出会うことにより、自分を見つめなおすのですが、それは心ゆさぶるきっかけであると思います。
そのとき心軽やかになったフンコロガシ。
でも、ひょっとしてまた落ち込むこともあるでしょう。
なので、絵本でありがちな、「あーよかったね、フンころがしくん」とみんなにこにこの画面は逆に嘘っぽくなるでしょう。
独立心のあるフンコロガシにしたいと思いました。
フンコロガシといえども、ここでは人間の気持ちを表すのですから。
──本作で好きなシーン、こだわった点はどこですか?
フンコロガシがさまざまなフンコロガシに変身する場面は描いてておもしろいところです。ただ、絵本は連続性を持っていますので、一概にこの場面が一番好きとはいえないところがあります。前後の関係から場面は設定されますから。
絵を描く際は、まず図鑑や資料でフンコロガシを探るのですが、いまいちよくわからないところが出てきます。そのとき、フンコロガシの本物を見たい、見なきゃと思い、奈良市に糞虫館があることを知りました。
フンコロガシ、やはり代表格はアフリカにいるスカラベでしょう。
それが、この糞虫館にいたのです。
糞、もちろんころがしていました。
後足で器用に、思ったよりも速くころがしていました。スカラベの目はどこにあるのか、口先の特徴、脚の付き方など、見るところはいっぱいありまあす。
それでも初めて描くフンコロガシですから、絵本としてのキャラクターの形をあーだこーだ描いてみました。
色はほとんど黒一色ですから、その黒の調子の模様もヒントになるところを探ります。ま、そんな感じで描いていきました。
──高畠さんが絵本を制作される際、大切にしていることはどんなことでしょうか?
フンコロガシを決してリアルに描くわけではありませんから、それらしく感じるにはどこをおさえて、どこを自由にしていいか、どう嘘を描くかが大切かと。
──高畠さんの子ども時代は、どのようなお子さんでしたか。やはり絵がお好きだったのでしょうか。
絵を描くのは好きだったと思います。描くことには抵抗はありませんでした。普段は、いわゆる昭和の遊びでした。近所の子たちと道路やお宮や、校庭で遊んだりしていました。思いかえすと、子どものころは道路が幅広く感じました。
──最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。
絵本は1冊1冊メッセージが異なるし、描いていると何か、どこか発見します。読者のみなさんはぜひ絵本の画面、また言葉を感じ取っていただけたらと思います。
──高畠さん、ありがとうございました。
“自己肯定”という一見するとシリアスなテーマですが、高畠さん手により、生き生きと楽しく描かれており、まるでその世界に入り込んだ気持ちになります。子どもへの読み聞かせでは、ぜひ、いろんな“フンあそび”にチャレンジしてみてください。