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子育て・教育

子どもの「コミュニケーション力」をはぐくむ


子どもの伸びようとする力を、知らず知らずのうちに妨げていませんか?
子どものすることには、すべて理由があります。
「ダメ!」と言う前に一呼吸おいて、「なぜこんなことをするのかな」と見守ってみませんか?
娘を有名小学校に合格させ、受験対応型保育園の園長としても実績を上げてきた「花まる子育てカレッジ」ディレクターが、子育て中の悩みや疑問100に答え、世界で生き抜く力をつける、具体的なメソッドを伝える『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』

連載第2回は、本誌の中から『「コミュニケーション力」をはぐくむ』をピックアップします!

※本連載は『入学後の学力がぐんと伸びる 0~6歳の見守り子育て』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。
 




誰とでも仲良くしてほしい

【子ども同士はもちろん大人にもいっぱい会わせて】

 人と会う回数が多いほど仲良くなりやすい 
 子どもに「いろんな人と仲良くしてほしい」と望んでいる場合に有効なことは、その子にとって「好きな人」「素敵な人」に出会う機会をたくさん持つこと。初めのうちは恥ずかしがったり、どんなふうに振る舞ったらよいのかがわからなかったりしても、回数を重ねることと、子どもならではの高い順応性で、「親しくなる」という行動に慣れていきます。とにかく、無理のない範囲でいろんな人に会わせる機会を作ること。公園や児童館はもちろん、親戚や親の同僚、学生時代からの友だちなど、つながりのある大人にもどんどん会えるとよいと思います。子ども自身が好きだなと思える方との出会いが楽しく積み重なっていけば、自然と「楽しい人がいっぱいいる」という記憶がふえていき、人との出会いがうれしいものになるはずです。




 人との関わりが幼児期に育てたい能力を伸ばす 
 2015 年にベネッセ教育総合研究所・次世代育成研究室が実施した「第5 回 幼児の生活アンケート(※)」によると、1990年の「出生率1.57ショック」後、1995年からの20年で、もっとも変化したのは、幼児の成育環境とのこと。友だちと遊ぶ機会が減り、親と過ごす時間がふえ、友だちとの関わりが希薄になってきているというのです。幼児期にこそはぐくまれるべき、自己の形成、他者との協調性、自己抑制といった「社会で生きていくためのスキル」には、お友だちとの関わりや、多様な大人との出会いが必須です。基本的な人への信頼感や人との関わり方は、実際に多くの方々と関わる中で、喜びや楽しさ、悩みや葛藤を味わいながら学んでいくべきものでもあると報告されています。

 人見知りは、繊細な人がなりやすいと言われています。そのため、人見知りの人は周囲や他人の空気を察知する力にたけた人が多く、「リーダーの資質がある」という有識者の見解もあるほどです。「人見知り」がわるいことと決めつけずに、克服できるための関わりをしながらも、その子自身の個性を大切に見守っていきたいですね。

※参考:第84回 幼児に、“多様な人と関わる機会”を~「第5 回 幼児の生活アンケート」より、幼児の成育環境の20年間の変化~



 


 

「ごめんなさい」が言えません

【心からの言葉が出るまで催促せずに待ってみて】

 いけないことをしていても、気持ちを尊重して 
 園長時代のこと。折り紙で犬の顔を折って、黒のクレヨンで目鼻やひげを描いたわたしの見本を見ながら、子どもたちも同じものを作っていました。思い思いに描いた顔は、長いまつげ、舌を出している、ウィンクしているなどさまざま。3 歳児さんたちが、表情を豊かに描く姿に、自分の思うままに顔を描きたいという気持ちが追い風のように背中を押しているのを感じました。

 そんな中でうまく描けないTちゃんは、クレヨンの線が折り紙からはみ出したことをきっかけに、机に黒のクレヨンでギザギザした線をどんどん描き始めました。周りの子どもたちは「いいの?」と見ています。わたしが制することなく見ていると、次には椅子にも。もう黒い線が止まりません。
 「先生、Tちゃんが、机や椅子に黒く描いている」「そうだね。描きたいのね」とわたし。「いいの? 描いても?」と心配する子どもたち。そんな空気を感じてか、Tちゃんは黒のクレヨンを投げだして立ち去ってしまいました。


 「ごめんなさい」を大人が言わせようとしないで 
 「黒のクレヨンを消すのを手伝ってくれる人はいますか~?」と尋ねると「は~い!」と3 人が集まり、汚れが落ちるスポンジでゴシゴシとこすってくれました。Tちゃんは部屋の隅から見ています。

 あと少しで終わりというところで、ちょっと困ったような表情でTちゃんがやってきました。「ごめんなさい」とひと言。お友だちが掃除をするのを見ながら、自分の気持ちと折り合いをつけていたのかもしれません。そして、スポンジを手にとり、最後まできれいにしてくれました。お友だちとにこにこと笑い合いながら。

 自分からやってきて言えた、心から絞り出すような「ごめんなさい」は、とても価値があります。たまに街中で親に促されて、セリフのように「ごめんなさい」と言う子どもを見かけると、「言えば、すむ」という空気を感じてしまいます。本来学んでほしかったことが身につくとは思えません。Tちゃんの「ごめんなさい」の素直な思いは、きっと周りのお友だちにも届いていたからこそ、笑顔のクレヨン落としになったのです。本物の「ごめんなさい」が言えるように、子どもの言葉が出てくるのを待ってみてはいかがでしょうか。




 親の影響を軽く見すぎていませんか? 
連載第2回は、本誌の中から『「コミュニケーション力」をはぐくむ』をピックアップしました。

誰とでも仲良くできて、人間関係に悩まない子どもになってほしい。そのために環境に気を配ったり、声かけをしたりしたいもの。普段の親の接し方からも子どもは多くを学んでいるので、そのことを意識して子どもと向き合いたいですね。



【著者プロフィール】

●「花まる子育てカレッジ」ディレクター。
慶應義塾大学文学部卒業。雑誌「オレンジページ」編集部を経て、公式サイト初代編集長。出版社勤務のかたわら、長女を難関私立小学校に合格させる。その後、受験対応型保育園で初代園長を務め、生活の中で学ぶカリキュラムを立案する。認可保育園保育統括や企業主導型保育園の立ち上げにも従事。小学校受験の個人指導でも、慶應義塾横浜初等部、早稲田実業学校初等部、立教女学院小学校、
桐朋小学校などの合格実績を上げ、現職に。子育てに悩む親が、自らの価値観に沿って子どもに向き合う手助けをすることを信条としている。


書籍情報


著者:井坂 敦子

定価
1,595円(本体1,450円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784048976275

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