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社会が大きく変化するにあたり、子育てを取り巻く環境も大きく変わっています。その中で、親が抱える悩みには昔ながらの考えにしばられている「思い込み」も多く、他人軸ではなく自分軸で考える習慣をつけることで、そうした無駄な悩みから解放され、気持ちよく生きることができます。
また、そうした過度の思い込みを外し、空いた時間や気持ちの余裕を使って、自分の人生も考えることが大切です。なぜなら、親が幸せであることが子どもの幸せに直結しますし、子どもが独り立ちしたあとも自分の人生におけるキャリアを継続させることができるから。『子どもも自分も一緒に成長できる これからの親の教科書』では、これらを体現してきた著者・廣津留真理さんが詳しく紹介しています。
連載第3回は、『お金は貯めることだけが正解じゃない。投資にもなる正しいお金の使い方』にスポットを当てていきます。
※本連載は『子どもも自分も一緒に成長できる これからの親の教科書』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。
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お金はあればあるほど安心する?
「時間がない」という悩みと同じくらい、多くの人が抱えているのが「お金がない」という悩みではないでしょうか。
子どもを大学まで行かせた場合、一人育てるのにかかる養育費・教育費の総額は2000万〜4000万円と言われており、それを考えると、「お金がない」と考えてしまう親の気持ちは痛いほどわかります。
時間を作るには無駄な時間をなくすという方法が有効ですが、お金に関しても同様に無駄な出費を防ぐということに尽きると思います。
ただ、お金の考え方について、時間以上に多くのマインドブロックがあるような気がします。
その一つが、「お金を持っていれば安心」という考え方です。
2019年に「老後2000万円問題」が大きく取り沙汰されました。実際に老後に必要な金額が具体的に提示され、その金額のインパクトから連日のニュースで扱われるなど大きな話題となり、中には自分の老後に不安を抱いた人もいるのではないでしょうか。
でも、その後に多方面から検証され、すべての人に「老後2000万円問題」が当てはまるわけではないとか、実際はもっと少ない額でも問題ないとか、さまざまな説が出ています。
その真偽がどうであれ、「老後2000万円問題」から見えてくるのは、多くの人が老後のためにお金を貯めておく必要性を考えていて、その金額も多ければ多いほど安心できると考えていることです。
でも、それこそがマインドブロックだと、私は思っています。
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お金を使うことのメリットを知る
日本人の生涯を終えるときの所有財産は多く、「人は死ぬときに最もお金を持っている」という説もあります。つまり、老後に備えて貯めたお金を使い切ることなく、多くの人が必要以上にお金を貯めているのです。
もちろん、財産を子どもや孫に残しておきたいと考えることも大切ですが、それでも、せっかく苦労して貯めたお金を使わないのは、もったいないとは思いませんか?
そもそも、本当に「老後のためにお金を持っていた方が安心」なのでしょうか。この先もずっとお金の価値が変わらないとは言い切れませんし、老後を迎えたときには世の中の状況がずいぶんと変わっていることは十分に考えられます。
「定年後に海外旅行に行くためにお金を貯めている」という話もよく聞きます。けれど、もし体を壊して海外旅行に行くのが困難になっていたら……というリスクを考えている人はあまりいないのではないでしょうか。
もちろん、将来の夢のためにお金を貯めるのは素晴らしいことです。でも、自己投資してスキルやマインドをレベルアップして自分の価値を高めた方が、最終的には伸びしろがあり、コツコツ貯めるだけの人よりも経済効果があることも多々ありますし、お金が物事を動かす「エネルギー」であることを忘れてしまい、貯蓄に精を出すあまりに何も動かさずに人生が終わることもあるかもしれません。
お金を貯めることで同時に生まれるリスクも考えることが大切です。
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お金は汚いと思っている人はいませんか?
お金があれば衣食住に困らない。
お金があれば欲しいものが買える。
お金があればいざ病気になったときに対処できる――。
お金があれば安心な面はたくさんあります。
けれど、よくよく話を聞いてみると、「お金を持っていると安心」と考えている人の中には、お金を「実体のあるもの」として捉えている人もいるような気がしています。
多くの人は紙幣とか硬貨をお金と認識していますが、実は紙幣なんて使わなければただの紙切れと一緒です。
お金は使って初めて価値を持つのです。だから、持つことよりも使うことが重要なのです。
また、今では少し価値観が変わりつつありますが、まだまだ「お金は汚い」というイメージを持っている人が非常に多いことに驚かされます。
以前、中高生に「社長ってどんなイメージ?」と質問したことがあるのですが、返ってきたのは「お金持ちでずるい人」とか「搾取している」とか、人を騙して自分だけが得をしているようなブラックな印象だったのです。
この話を聞いて、皆さんはどう思いますか?
自分はあまり持っていないお金をたくさん持っているからずるいと考えていると思うのですが、子どもの頃からこのような認識ではまずいですよね。
そもそも企業は営利団体なのでお金を得る・稼ぐことを目的に作られていますし、世の中に必要なものを提供しているからこそ「お金が得られている=世の中のためになっている」のに……。
それに、すべての社長がお金を持っているわけではありません。あくまで中高生たちがイメージしているのは「成功した社長」であって、中には成功していない社長もいるわけです。社長に対する思い込みが実際と大きくズレていることもわかります。
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お金は手段。稼ぐことは目的ではない
社長は人を雇う側ですが、では、雇われる方はどうでしょうか。
新卒の学生が企業に入社するとき、「初任給は〇〇円」と提示された決まった金額を何の疑問もなく受け取っていると思います。サマー・イン・ジャパンの講師の一人として日本を訪れたハーバード生で、日本が好きになり日本の会社に正社員として就職した女性は、入社の際に自分で給与額を交渉していました。自分一人だけ高い給料をもらうことにネガティブな感情があるのか、一人だけ抜け駆けしていてずるいと思われるのを避けているのかわかりませんが、自分の価値や労働に見合っただけの報酬をもらうというのは、世界的に見れば至極当然のことです。
それなのに、周囲の目を気にして言い出せずにいるのはおかしいことです。
お金は汚いというイメージを持っているのに、一方では、お金が欲しいと言う。このいびつな形はいったい何なのでしょうか。
一つ思うのは、お金が欲しいと言っている人の中には、「何のために欲しいのか」が欠けているのではないかということです。
お金はあくまで手段であって目的ではありません。何か具体的なものを得るためにお金が必要とか、何かやりたいことをやるためにお金が必要とか、何かを得るために使うものです。
何の目的もないのにお金を貯めて安心した気になっているより、何かやりたいことを見つけ、そのためにお金を使った方が、正しいお金との付き合い方と言えるのではないでしょうか。
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自分を諦める子育てはもう終わり。今の子育ての当たり前を知ろう
第3回は、『お金は貯めることだけが正解じゃない。投資にもなる正しいお金の使い方』を見てきました。
子どもを育てるのは大変で、悩みはつきないもの。でも、そんな些細な悩みを一つずつ減らし、毎日を気持ちよく過ごすのも子育てで大切なことです。思い込みからくる子どもへの悩みを少しずつ解消し、「時間がない」「お金がない」といったネガティブマインドをポジティブに変え、子どもの人生も自分の人生もハッピーにする。
子育てが始まる方も、今まさに悩みを抱えている人も、書籍をチェック!
【著者プロフィール】
廣津留真理(ひろつる まり)
ディリーゴ英語教室代表、株式会社Dirigo代表取締役、一般社団法人Summer in JAPAN代表理事兼CEO。早稲田大学第一文学部卒業。大分市の公立小中高から塾なしで米国ハーバード大学に現役合格した娘・廣津留すみれの家庭学習指導経験から確立した「ひろつるメソッド」でディリーゴ英語教室を運営し、これまでに数万人を指導、英検や難関大学合格に導く。現役ハーバード生が講師陣のサマースクールSummer in JAPANで多様性重視のグローバル教育を推進し、2014年に経済産業省「キャリア教育アワード」奨励賞受賞。主な著書に『「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』『英語ぐんぐんニャードリル』『英語ぐんぐん ニャー単600』(以上、講談社)などがある
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