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社会が大きく変化するにあたり、子育てを取り巻く環境も大きく変わっています。その中で、親が抱える悩みには昔ながらの考えにしばられている「思い込み」も多く、他人軸ではなく自分軸で考える習慣をつけることで、そうした無駄な悩みから解放され、気持ちよく生きることができます。
また、そうした過度の思い込みを外し、空いた時間や気持ちの余裕を使って、自分の人生も考えることが大切です。なぜなら、親が幸せであることが子どもの幸せに直結しますし、子どもが独り立ちしたあとも自分の人生におけるキャリアを継続させることができるから。『子どもも自分も一緒に成長できる これからの親の教科書』では、これらを体現してきた著者・廣津留真理さんが詳しく紹介しています。
連載第2回は、『子育て中でも意識的に時間作り出すコツ』にスポットを当てていきます。
※本連載は『子どもも自分も一緒に成長できる これからの親の教科書』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。
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「自分の時間」とはいったい何か
忙しくてなかなか時間が作れない――この悩みは、「忙しくてなかなか自分の時間が作れない」という意味で感じている人も多いと思います。家事や育児に忙殺されて、自分の時間が持てない。そのときの「自分の時間」とは、いったい何を指すのでしょうか。
例えば、子どもを預けて仕事に行くのは「自分の時間」でしょうか。でも、仕事をするのは、子どもを育てるお金を稼ぐためであり、そう考えると「子育ての時間」と言えなくもありません。
さらに、仕事をしている間も、休憩時間などふとしたときに「子どもは元気に遊んでいるか」「ケガはしていないか」など、何だかんだ気になってしまうものでしょう。
「自分の時間」を持ちたいという悩みは、時間と空間を分けて考えることで生まれてしまうケースがあります。
子どもと一緒にいるときが「子育ての時間」と考えると、「自分の時間」はなくなってしまいます。そうではなく、子どもと一緒にいなくても(空間は違っても)、子どものために働いているのなら「子育ての時間」と考えてもいいし、反対に、自分が楽しくて子どもと遊んでいるのなら、それは「子育ての時間」ではなく、「自分の時間」と捉えても間違ってはいないでしょう。
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子育て中の時間も「自分の時間」に変える
私は娘を育てているとき、子育てが楽しくて仕方ありませんでした。子どもの成長を見ていると、まるで自分が成長しているように感じ、子ども時代をもう一度経験しているような感覚があったのです。
それに、子どもは18年もしたら親のもとから飛び立ってしまいます。長い人生の中で18年しか子どもと一緒にいられないのだから、その時間をめいっぱい楽しもうとも考えていました。
もし、「自分の時間」が、自分のやりたいことができる時間を指すのなら、私にとっての子育ては「自分の時間」でした。
そもそも、「子育ての時間」と「自分の時間」を分けるのは難しいと私は思います。それを無理に分けようとするから、悩みが生じてしまうのです。
だから、あまり「自分の時間」という言葉にとらわれすぎないで、すべての時間を楽しむくらいの感覚でいた方が、いくらか気持ちがラクになるのではないでしょうか。
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時間を作るには無駄を省くしかない
考え方を変えることで気分がラクになるといっても、それが「時間を作れない」という悩みの根本的な解決になるわけではありません。実際、「自分の時間」とかに関係なく、1日24時間だけでは足りないと思っている人もいっぱいいるでしょう。
では、どうすれば時間を作ることができるのか。
それは、無駄な時間を徹底的に削ることです。
断りのメールを送るためにあれこれ考える時間や、価値を交換できない人との付き合いなど、日常の中には探せばいろんな無駄な時間が潜んでいます。
今はスマホを見ればなんでも情報が載っています。空いている時間についスマホを見てしまい、SNSや動画を見ていたら気づけば1時間経っていたなんてことも日常茶飯事ではないでしょうか。
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料理は3食すべてが作り立てでなくていい
私は、無駄な時間の中にはマインドブロックが関係しているものもたくさんあると考えています。
例えば、日本で食事を用意するといったら、多くの人は温かい食事をイメージするでしょう。しかも、3食すべてが温かい料理。
でも、海外では、火を入れたホットミールは1日に1回が普通というところが結構あります。ヨーロッパの朝食は火を使わないことが多いようです。パンとバター、ジャムと薄く切ったハムだけでも立派な一食です。片付けもラクですしね。
私は子育てしていた頃、火を使って料理をするのは、朝の1回きりでした。というのも、塾という仕事柄、夕食どきに仕事をしていたので、朝のうちに作り置きしておかなければいけなかったのです。
でも、これって、夕食を作る時間を朝食と一緒に作ることで効率化し、自分が仕事をする時間を作っていたと言えませんか?
家庭で出す料理は、温かく、作りたてでないといけない。そんなマインドブロックを外すことで、時間を作り出していたのです。
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スマホを見すぎる人は要注意
FOMO(フィア・オブ・ミッシング・アウト)症候群という言葉をご存じでしょうか。FOMO症候群とは、自分が知らない間に取り残されたりしてしまうのではないかという不安や恐怖を感じることを言います。
メンタルブロックが強い人は、衝動性を抑えられない傾向があります。衝動性とは、後先考えず思いついたことをすぐ行動に移してしまうこと。これは実際に経験した方も多いと思いますが、例えば、スマホがあるとつい見てしまい、気がつけば何時間も経っていたという行動もその一つです。こうした行動をとる方はFOMO症候群になっている可能性があります。
無意識的にスマホを見れば、SNSにはキラキラしている投稿で溢れ、その人と比べて自分は楽しめていないことに劣等感を覚えてしまう――。あるいは、「塾は何歳から通わせればいいのか?」「反抗期はどう対応したらいいのか?」「老後2000万円問題はどう乗り切ればいいのか?」など、あらゆる場面で、ハック系記事(いかに簡単に効率的に行えるかといった、テクニックやコツをメインとした情報)が書かれたサイトを見て、振り回されている状態になってしまいます。
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情報を追わないことが幸せ
私はこれは時間の無駄だと思います。
それよりも、JOMO(ジョイ・オブ・ミッシング・アウト)のマインドが大切です。
JOMOとは、取り残されることへの喜びを指し、情報を追わないことが幸せというマインドのことです。
このようなマインドにシフトできると、際限なくスマホを見て時間をつぶしてしまうということがなくなります。
スマホをダラダラ見るのではなく、5分なら5分と決め、その間に情報を見たりして、それ以降は次のことに集中すること。
SNSで流れてくる、毒親マンガや子育てハック系の記事、憂さ晴らし的なコメントやネガティブなニュースばかりを読んでいると、悪循環のループに陥ってしまいます。
自分が尊敬している人に会ったり、本を読んだりと、触れる情報を変えるだけで、FOMOからJOMOのマインドに変わります。そうすれば、時間が有効に使えるだけでなく、「〇〇しなければいけない」といったマインドブロックも外すことができ、一石二鳥です。
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自分を諦める子育てはもう終わり。今の子育ての当たり前を知ろう
第2回は、『子育て中でも意識的に時間作り出すこツ』を見てきました。
子どもを育てるのは大変で、悩みはつきないもの。でも、そんな些細な悩みを一つずつ減らし、毎日を気持ちよく過ごすのも子育てで大切なことです。思い込みからくる子どもへの悩みを少しずつ解消し、「時間がない」「お金がない」といったネガティブマインドをポジティブに変え、子どもの人生も自分の人生もハッピーにする。
子育てが始まる方も、今まさに悩みを抱えている人も、書籍をチェック!
【著者プロフィール】
廣津留真理(ひろつる まり)
ディリーゴ英語教室代表、株式会社Dirigo代表取締役、一般社団法人Summer in JAPAN代表理事兼CEO。早稲田大学第一文学部卒業。大分市の公立小中高から塾なしで米国ハーバード大学に現役合格した娘・廣津留すみれの家庭学習指導経験から確立した「ひろつるメソッド」でディリーゴ英語教室を運営し、これまでに数万人を指導、英検や難関大学合格に導く。現役ハーバード生が講師陣のサマースクールSummer in JAPANで多様性重視のグローバル教育を推進し、2014年に経済産業省「キャリア教育アワード」奨励賞受賞。主な著書に『「好き」と「得意」を伸ばす子育てのルール15』『英語ぐんぐんニャードリル』『英語ぐんぐん ニャー単600』(以上、講談社)などがある
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