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中学受験のプロが「小学校3・4年生」におすすめする小説・児童書10選

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「どんな本がいいんだろう?」と、子どもの本選びに迷うことはありませんか? 中学受験を見据えているご家庭では、今のうちにたくさんの本にふれて、国語力アップにつなげてほしいとの思いもあるかもしれませんね。SAPIXなどで講師をつとめ、現在は独自の読解メソッドで中学受験のコーチングを行っている齊藤美琴さんに、小学校中学年での本とのつき合い方や、受験が本格化する前に読んでおきたいおすすめの小説・児童書10冊についてお話を聞きました。


■ 読み聞かせを手放さず、本の楽しさを味わおう

 小学校3・4年生ごろは、子どもに合う本を選ぶのが非常に難しい時期です。読書にどれくらいなじみがあるかで、読む本は大きく変わります。読書が好きな子どもは自然と好みの本を手に取りますが、もし子どもが自ら本に手を伸ばさないようなら、読み聞かせという方法もあります。親にとっては手間がかかりますが、読み聞かせを続けたことで、6年生になってから話の続きが気になり、自分から読むようになった子どももいます。根気がいることではありますが、小学校中学年のお子さんに対しても、読み聞かせはぜひ手放さずにいてほしいと思います。

■ 齊藤さんが推薦!小学校3・4年生におすすめする小説・児童書10選

「子どもは好きな本に夢中になるのが得意です。親は子どもの読書の幅を広げるような意識でサポートしましょう」と齊藤さん。幅広いジャンルから選んでいただいた齊藤さんおすすめの10冊を紹介します。


『みんなのためいき図鑑』(村上しいこ 作/中田いくみ 絵)童心社  



 授業参観に向けて班活動を始めた主人公・たのちん。班のひとりが保健室登校で、思うように活動が進まずに苦労するたのちんの心情がていねいに描かれています。学校が舞台なので、子どもが自分を重ねやすく、心を寄せて読みやすいはず。「気持ちがわからないあの子」とぶつかったり、話し合ったりしながら、少しずつ距離が近づいていく人間関係の変化も楽しめます。子どもに人気の中田いくみさんのふんわりやわらかな絵も大きな魅力です。登場人物の心情が文字だけでなく絵でも見てとれるので、ふだん本を手に取らない子どもにもおすすめ。登場人物の表情を絵で見比べて、「同じ場面でも人によって違う気持ちなんだね」などと親子で話し合うのも楽しい一冊です。

 


『ラベンダーとソプラノ』(額賀 澪 作/いつか 絵)岩崎書店  



 子どもに大人気・いつかさんのイラストと、きれいなラベンダー色の表紙が目をひく『ラベンダーとソプラノ』。合唱クラブの活動をめぐる人間模様を描いた作品です。みんなで足並みをそろえてがんばることが正解といわれがちな世の中で、まわりと同じような熱量でがんばれない、がんばらない子どもを取り上げたストーリーが、読み手の心にすっと寄り添います。数々の青春小説を生み出し、中学受験の入試問題にも出題されることが多い作家・額賀澪さんの初の児童書です。一般的な書籍サイズよりひと回り大きいA5判で、文字が大きくて読みやすいところも魅力。作家つながりで読書の幅が広がるかもしれません。

 


『みおちゃんも猫 好きだよね?』(神戸遥真 作/miii 絵)金の星社  



 転校生のみおちゃんは重度の猫アレルギーで、それを隠していると気づいた主人公の朱梨(あかり)。猫といえばみんなが好きな動物という思い込みが、タイトルの『みおちゃんも猫 好きだよね?』によく表れています。アレルギーなどの体質や特性をどうとらえるのか。登場人物によって助けや配慮の形はいろいろで、中学受験の頻出テーマでもある他者理解がぐいぐいと深まる内容です。登場人物の気持ちを表現する描写がかなりありますが、目線が主人公に固定された一人称の構成が読みやすさになっています。ふだん気づいていない世界に気づかせてくれる一冊です。

 


『ココロ屋 つむぎのなやみ』(梨屋アリエ 作/菅野由貴子 絵)文研出版  



 小学校中学年は、親子や友達関係のなかでもやもやとした感情を抱え始める時期。もやもやした感情は、言語化すると心がスッと楽になりますよね。『ココロ屋 つむぎのなやみ』は、そんなもやもやした気持ちを抱える主人公・つむぎのお話です。『ココロ屋』というタイトルの通り、心情表現がたっぷり出てきます。理想はあるけどうまく振る舞えないときのままならない心や、他者が抱えている複雑な心を知るにはぴったりの一冊。塾に通う前や通い始めたころの国語の導入としてもおすすめです。この作品が気に入ったら、『ココロ屋』シリーズの1冊目も子どもにすすめてみてください。独立したそれぞれのストーリーとして楽しめますよ。

 


『注文の多い料理店』(宮沢 賢治 作/和田 誠 絵)岩崎書店  



 小学校3・4年生ごろにぜひ出合ってほしいのが、宮沢賢治の作品です。「クラムボンはわらったよ。」の一節で有名な『やまなし』は教科書に収載されていますが、小学校を卒業すると次に宮沢賢治作品と出合うのは成人後ということもよくあります。中学受験のスイッチが入る前に、大人から古典にふれるきっかけを提供しましょう。中学年の子どもにおすすめなのが、ちょっぴりミステリアスな『注文の多い料理店』。宮沢賢治作品はどれも子どもにとって少し読みにくい文体なのですが、岩崎書店の『宮沢賢治のおはなし』シリーズは、文字が大きく、行間がゆったりと広くて、やさしい絵が特徴。子どもになじみのない言葉には脚注がついているので、お話から離れずに読み進められます。読み聞かせや音読にもおすすめの一冊です。

 

『こまったさんのスパゲティ』(寺村輝夫 作/岡本颯子 絵)あかね書房  



 料理が好きな子どもにおすすめしたいのが『こまったさんのスパゲティ』。花屋のこまったさんが、相棒の九官鳥・ムノくんと話しながら料理をつくるお話です。日常生活にファンタジーが入り混じった童話ならではの楽しさを味わえます。子ども時代に読んだことがある方もいるかもしれませんね。40年以上前に刊行された物語ですが、フライパンを前にワクワクする気持ちやお話の楽しさは今も昔も変わりません。手に取ってみると、新刊ばかりを追わなくてもいいと実感するはず。親子で読んで、「今度のお休みにこの料理を一緒に作ってみようか」などと話してみてください。

 

『きまぐれロボット』(星新一 作/和田誠 絵)理論社  



 長編作品とは違った読書の楽しさを味わえるのがショートショートのいいところ。起承転結がはっきりしていて、オチがわかるとなんともいえない爽快感を味わえます。そんなショートショートの魅力にふれるときにおすすめなのが『きまぐれロボット』です。外から見た第三者視点での描写に慣れが必要ですが、一話が短いので、電車やバスに乗っているときなどすきま時間の読書にぴったりです。作品全体を掲載できるショートショートは、中学受験の入試問題にも出題されることがあります。ジャンルに慣れるという意味でもおすすめの一冊です。

 

『よみとく10分 10分で読める伝記』シリーズ(塩谷京子 監修/スタジオポノック/山下明彦 絵)Gakken  



 伝記は、子どもがふれあうきっかけを親から積極的に提供してほしいジャンルのひとつ。世の中には夢を実現した大人がたくさんいると伝え、子どもの世界を大きく広げるのが伝記の魅力です。『よみとく10分  10分で読める伝記』シリーズは、短時間で手軽に読めることが大きな特徴。子どもが名前を知っている人物と初めて本で知る人物が一冊にバランスよく載っています。学年別のシリーズ展開ですが、学年にとらわれず、掲載されている人物や子どもの興味に合わせて選んでみてください。

 

『みえるとか みえないとか』(ヨシタケシンスケ さく/伊藤亜紗 そうだん)アリス館  



 学者・伊藤亜紗さんが視覚障害をテーマにつづった著書「目の見えない人は世界をどう見ているのか」をきっかけに生まれたヨシタケシンスケさんの絵本です。伊藤さんの伝えたいことをより多くの人に届けるために、伊藤さんとヨシタケさんが話し合って生まれた作品です。「小学生が絵本?」と思うかもしれませんが、絵本は届けたいメッセージをわかりやすく伝える工夫のひとつ。ヨシタケさんのユーモアで、視覚障害というテーマにぐっと深く踏み込んでメッセージをしっかり伝えつつ、読んで楽しい作品になっています。思考の土台をつくる意味でも役立つ一冊。プレゼントにもおすすめです。

 

『らくごえほん てんしき』(川端 誠 作・絵)KADOKAWA  



 知ったかぶりから生まれる悲劇の喜劇をテーマにした「転失気(てんしき)」という落語の演目を、子どもが読みやすい絵本にした一冊です。話のオチは子どもが理解しやすいものになっていて、オチを聞いて「ああ、そうか!」と納得する落語のおもしろさを味わえます。「オチがわかる」という感覚は、言葉と言葉をつなげて理解できるということで、じつは読解力と深く結びついています。元は落語の演目なので、読み聞かせや音読で「音」でも楽しんでほしいですね。声色を変えたりアクセントをつけたりして、オチのおもしろさを味わってください。『らくごえほん』シリーズから、親が知っている演目を選んで楽しむのもおすすめです。

 

 

■ 本選びは「ページをめくって」

 子どもに本を選ぶときは「ぜひ手に取って、ページをめくってみてください」と齊藤さん。子どもと一緒に図書館に行くのがおすすめだと話します。

「読みやすい文字組みや好みのイラストのタッチを子どもと一緒に探してみましょう。図書館の司書さんに、おもしろいと感じた本の書名を伝えて相談するのも、本選びのいいきっかけになります。大事にしたい一冊に出合ったら、ぜひ自宅にお迎えしてください。子どもが選んだ本が絵本だとしても、楽しんで読めるならそれでOKです。理想は一旦わきにおいて、親はどっしりと構えていましょう」

 子どもの読書の幅を広げつつ、子どもが選んだ本はおおらかな気持ちで受け止められるといいですね。齊藤さんのおすすめ本とアドバイスを、ぜひお役立てください。


取材・文:三東社

写真:PIXTA

 

【プロフィール】
齊藤美琴
中学受験のコーチングをメインに、教科指導、幼稚園・小学校受験の相談など、家庭の力を引き出すレッスンを行う。SAPIXの個別指導部門・プリバート東京教室での国語科専任講師、ジャック幼児教育研究所(四谷教室)での講師を経てフリーランスとして独立。読解トレーニングときめ細かい学習コーチングに定評がある。2022年に渋谷ヒカリエ8階のシェア型書店に『みこと書店』をオープン。PICCOLITA(ピッコリータ)代表。



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