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Children & Education

子育て・教育

「話す」より実は大事な「聞く・見守る」


心の傷は、体にできる傷と違って誰の目にも見えません。とくに子どもの場合、その傷の深さや痛みにその子自身が気付いていないことがあります。私たち大人は、その痛みと苦しさに思いを寄せて守ってあげなければなりません。子どもとの関係や接し方に悩んでいる人、自分の子どもが傷ついているのではないかと思っている人など、子どもとかかわるすべての人に向けて、子どもの心を守り、ケアする方法をまとめたのが「子どもの傷つきやすいこころの守りかた」です。

連載第2回は、『「話す」より実は大事な「聞く・見守る」』の中から、『子どもの話を聞きたいなら受け身ではいけない』と『「見守る」のはとんでもなく高いスキル』を紹介します。

※本連載は『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。



 


子どもの話を聞きたいなら受け身ではいけない

 子どもの話を聞く上で、傾聴力が大切なのは言わずもがなです。しかし、傾聴力だけでは子どもの話を聞くことはできません。なぜなら、子どもの話を聞く場面をつくらなければ、子どもの話を聞けないからです。だからこそ私は、「子どもの話を聞きに行く力」が大切だと思うのです。

 子どもにとって、「誰かに話しかける」って結構勇気が必要なことです。大人と違い、誰かに声をかけたり相談してきた経験が少ないので、たとえそれが親相手であったとしても、「今忙しくないかな?」「こんなこと話しても大丈夫かな?」と、自分から話しかけることに躊躇しやすい面があります。そんな背景があるからこそ、大人のほうからも子どものところに行って、声をかけてほしいのです。では、子どもの話を聞く場面を多くつくり、子どもの話を聞きに行く力を伸ばすにはどうしたらよいでしょうか。

 私のおすすめは「子どもの得意分野について本気で質問する」という方法です。「絵を上手く描きたくて」、「サメの弱点を知りたいんだけど……」のような感じで、子どもが得意としていることに関して本気で質問や相談をし、会話のきっかけをつくるのです。その中で、子どもの困り事をさりげなく聞いてみるのもよいでしょう。ただし、強引に子どもの話を聞き出そうとするのは避けてください。私たち大人と同じように、子どもだって話したくないときはありますので、子どもから「話したくない」と言われたら、潔く身を引きます。

 このように、子どもの話を聞く力には、「子どもの話を積極的に聞きに行く力」が含まれます。「子どもの話をどうやって聞こう」を考えることと同じくらい、「子どもの話をどうやって聞きに行こう」と考えることが重要なのです。





「見守る」のはとんでもなく高いスキル

 私は「お子さんを見守ってください」という言葉を聞くたびに、「それ、めっちゃ難しいからね!?」と心の中で叫んでいます。この本を手に取り、ここまで読み進めてきたみなさんであれば、「子どもを見守る」ことがどれだけ難しいかを理解しているのではないでしょうか。

 この「見守る」という言葉ですが、人によって大きく解釈が異なるので、私なりの「見守る」の定義を次に示します。

「子どものピンチにはすぐに飛んでいく準備と覚悟を持った上で、子どもの主体性を認めて、信じて、手を貸したい気持ちをグッとこらえる。これを何度も繰り返す」。

 いかがでしょうか? 「そうだ! 見守るって大変なんだよ!」とうなずきすぎてアゴが擦り切れていませんか? 大げさだと言われるかもしれませんが、子どもを見守るって本当に難しいのです。子どもの主体性や想像力、自己コントロール力などを育む上で、大人が子どもを見守ることが重要なのは間違いありません。しかし、私は「見守る」側の大変さが、もっと取り上げられてもよいのではないかと思うのです。

 ハラハラしながらよちよち歩きを見守り、ドキドキしながら公園の遊具で遊ぶ姿を見守り、ソワソワしながら学校に向かう我が子を見守る……。こんな大変な毎日を送っているあなたは控えめに言って最高です。だからこそ、子どもを数分でも、数十秒でも見守ることができたときは、子どもだけでなく自分で自分を褒めてあげてください。そのくらい、あなたはとても難しく、すばらしいことをしているのですから。

 支援者としても、保護者の方に「お子さんを見守ってください」と伝えるだけではなく、「見守るって本当に難しいですよね……」と、子どもを見守ることの難しさついて一緒に悩む、そんな姿勢が大切だと思っています。





子どもの心も大人の心も守ってほしい

子どもを大人の思い通りにするのではなく、ひとりの人間として尊重し、その傷つきやすい心をどうやって守っていけばよいのか。子どもは大人のどんなかかわり方に安心感を覚え、その安心をベースとして自分なりのチャレンジをしていけるのか……。なかなか難しい問題ですよね。

今日も頭を抱えながら、正解のない子育てに向き合い、泥臭くも一生懸命に子どもを支えている、そんな素敵で最高なあなたに捧げるのが、この本です。お子さん、そしてあなたの心を守ることを願ってやみません。





▼書籍情報▼


著者:こど看

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046065360

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【著者プロフィール】

こど看(kodokan)

精神科認定看護師。精神科単科の病院の児童思春期精神科病棟に10年以上勤める。現在も看護師として病棟勤務しながら、「子どもとのかかわりを豊かにするための考え方」をSNS等で精力的に発信中。メンタル系YouTuberの会所属。一児の父。
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