【必ず押さえておきたい、任意接種ワクチンで予防できる病気 「おたふくかぜ」と「インフルエンザ」の予防接種】「小児科医ツカダ先生に聞く 子どもの病気・ケガ&ホームケア」第6回
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子育てをしている保護者の皆さんは、子どもの成長とともに、実にさまざまな病気やケガがあることを実感しているのではないでしょうか。特に自分で症状が伝えられない小さなお子さんは、急に症状が現れたり、症状が長引いたりしたとき心配ですね。この連載では子どもの病気・ケガとホームケアについて、現役小児科医として多くの症例を見ている塚田こども医院院長の塚田次郎先生にわかりやすく教えてもらいます。
第6回の今月は、「任意接種ワクチンで予防できる病気」の中から「おたふくかぜ」と「インフルエンザ」を取り上げます。生後から受けさせる予防接種については、BCGや三種混合ワクチンといった「定期接種」はご存じの方も多いと思いますが、今回は、受けるかどうかが任意とされている「任意接種」についてお伝えしていきます。
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【定期接種と任意接種】
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定期接種と任意接種の違いって?
日本国内の予防接種は、「定期接種」と「任意接種」に分かれています。そのうちの「定期接種」のワクチンとは、「予防接種法」という感染症の予防や症状の軽減、まん延防止などを目的として制定された法律に基づいているワクチンです。原則として、費用は公費負担なので接種は無料となります。一方「任意接種」のワクチンは、予防接種法には規定されておらず、原則有料で、接種は任意です(一部地域では一部または全額負担があるところも)。
任意接種は法律で定められていないから受けなくて大丈夫と思われている人がいるかもしれませんが、小児科医からすると任意だから受けなくてもいい、ということにはなりません。日本では任意接種のおたふくかぜやインフルエンザのワクチンも、米国では定期接種に含まれています。定期か任意かはあくまで制度の上で分かれているだけのことです。ちなみに、任意接種のワクチンで副反応が起こった場合、その補償の度合いが定期接種とは異なります。定期・任意ともに副反応とその補償制度については、あらかじめ概要を知っておくと安心です。
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予防接種はスケジュールを立てて進める
生後から受けられる「定期接種」と「任意接種」の予防接種は、日本小児科学会が推奨するワクチン一覧に含まれるものだけでも十種以上あります。いつまでにこれこれ、と接種に期限のあることを知って、どれから受けたらいいか、途方に暮れる保護者もいるかもしれませんね。かかりつけ医に相談しながら計画を立てたり、自治体からもらえる予防接種スケジュール表を活用したり、日本小児科学会などのサイトで確認したりしながら、何をいつ、どう受けるか、お子さんの予防接種の整理をしておくといいでしょう。
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【おたふくかぜの予防接種】
甘く見てはいけない「おたふくかぜ」
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おたふくかぜは、「流行性耳下腺炎」「ムンプス」とも呼ばれる、ムンプスウイルスによる感染症です。ほっぺたの腫れがよく知られていますが、これは片側または両側の耳下腺の腫れで、痛みや発熱が主な症状です。1週間程度で軽快することがほとんどですが、まれにそれ以上続くこともあり、飛沫や接触で容易に感染し、園や学校で流行することがあります。
おたふくかぜは合併症として無菌性髄膜炎や難聴を引き起こすことが少なくなく、けして軽い病気とはいえません。また、成長してからかかると精巣炎や卵巣炎などの合併症のリスクがあり、ワクチン接種で予防しておくに越したことはありません。
以上の理由から、任意接種であっても、1歳から接種可能ですから、受けておくことをおすすめしています。できるだけ園や学校での集団生活を始める前に受けておくと安心です。
〈おたふくかぜが引き起こしやすい主な合併症〉
●難聴……内耳の聴神経に影響して起こり、聴覚の回復が難しいとされています。
●無菌性髄膜炎……脳を包む髄膜にムンプスウイルスが感染して頭痛や嘔吐が起こります。
●精巣炎……思春期以降の男性がおたふくかぜにかかると起こりやすい病気です。
合併率は2〜4割と高く、精子数が減ることがあり、まれに不妊症の原因となる場合もあります。
●卵巣炎……思春期以降の女性がおたふくかぜにかかると起こりやすい病気です。
おたふくかぜワクチン
おたふくかぜはワクチン接種によって予防が可能です。前述した合併症やそれによる後遺症を防ぐため、また重症化リスクの高い人に感染させないために、接種を推奨しています。1歳から接種可能で、免疫を確実にするために2回接種することが大切です。1歳になって1回目、就学前の5~6歳で2回目を打つと安心です。
またおたふくかぜワクチンの副反応として、耳下腺の軽い腫れや髄膜炎症状が起きることがあります。いずれも症状は軽いことがほとんどですが、心配な場合はあらかじめ医師に相談しておきましょう。
おたふくかぜワクチンは注射生ワクチン(病原体を弱毒化してあるワクチン)を注射で体内に入れます。次に注射生ワクチンを受けるには最低でも4週間(中27日)以上をあけてください。他にも受けたい注射生ワクチンがある場合は、日程の確認を事前にしておくといいですね。
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【インフルエンザの予防接種】
ウイルスが変異しやすく、つけた免疫が持続しない
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インフルエンザウイルスによって引き起こされる、呼吸器感染症です。主に冬を中心に流行し、発熱または高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などの症状を引き起こします。また、のどの痛み、鼻水、咳などのいわゆる風邪の症状も見られます。
急性脳症や肺炎を合併するなど重症化リスクが大変高く、また、インフルエンザウイルスの型によっては変異を繰り返しているので、過去に獲得した免疫では対抗できないという特徴があります。ですので、任意接種ではありますが毎年予防接種を受けておくことが重要です。
〈インフルエンザが引き起こしやすい主な合併症〉
●急性脳症
●肺炎
インフルエンザワクチン
例年12月~4月ごろが流行時期となり、1月末~3月上旬に流行のピークを迎えます。流行が始まる前にはワクチン接種を済ませておきたいところです。接種生後6ヵ月以上からで、13歳未満は2回、13歳以上は通常1回接種します(2回接種することも可能)。毎年、ワクチンが足りなくなることもあり、10月から11月にかけての時期には、かかりつけ医で予約をとれるか確認するなど、対策をしておくといいでしょう。
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【塚田先生プロフィール】
塚田次郎(塚田こども医院 院長)
1981年自治医科大学卒業、同年医師国家試験合格。新潟市民病院にて臨床研修、新潟県立坂町病院小児科勤務を経て、1990年新潟県上越市栄町にて塚田こども医院を開設。日本小児科学会認定医。