
子育てをされている保護者の皆さんは、子どもの成長とともに、実にさまざまな病気やケガがあることを実感しているのではないでしょうか。特に自分で症状が伝えられない小さなお子さんは、急に症状が現れたり、症状が長引いたりしたとき心配ですね。この連載では子どもの病気・ケガとホームケアについて、現役小児科医として多くの症例を見ている塚田こども医院院長の塚田次郎先生にわかりやすく教えてもらいます。
園生活や学校生活が新しく始まる4月以降、特に気温が上がってくる春〜夏には、冬のカサカサとはまた違った皮膚トラブルが多くなります。第1回の今月は、早めに発見しておきたい子どもに多い皮膚の病気についてご紹介します。
Trouble
【とびひ(伝染性膿痂疹/でんせんせいのうかしん)】

とびひは「飛び火」
夏に向けて、園などで集団生活をする子どもに増える皮膚の病気のひとつがとびひです。「伝染性膿痂疹」が正式な病名ですが、とびひ(飛び火)という俗称は、火の粉が飛んで火事が広がるように症状が拡大することからつけられた名称です。「伝染性膿痂疹」の中でも夏に多いのは「水疱性膿痂疹」といい、すり傷などからバイ菌が入ってできた水ぶくれがつぶれて、まわりの皮膚に次々広がっていきます。
なぜ夏に多くなるのでしょうか? それは、夏の子どもたちの皮膚には細菌が繁殖しやすい条件がそろうからです。たくさん汗をかき、皮膚が汚れ、さらに虫刺されやあせもをかきむしるといった状態は、細菌の増殖や感染の標的になりやすいのです。とくにアトピー性皮膚炎のお子さんはとびひになると皮膚の状態が悪化しやすいので、できるだけ予防に努めることをおすすめします。
とびひができたら
とびひは主に顔まわりから発症します。鼻の粘膜にとびひの原因である黄色ブドウ球菌がいるので、鼻から始まるお子さんが多く見られます。最初は顔だけでも、放っておくとからだへと感染が広がりますが、からだにあるすり傷や虫刺されなどをかいたあとが発端になることがあります。
水ぶくれができて、それがつぶれるとその中身がついた箇所がまたとびひになります。つぶれたあとはただれて、やがてかさぶたになり治りますが、とびひをかきこわした手でさわった箇所はどんどん新しいとびひになってしまいます。あやしいと思ったら、小児科や皮膚科を受診し、とびひなら抗菌薬を処方してもらいましょう。その上で、家族やきょうだいなど身近な人に感染させないために保護者の皆さんができることについてお伝えします。
1.皮膚を毎日清潔に保つ
患部はこすらないで、石けんの泡でやさしく丁寧に洗って、汚れを落とします。そのあとシャワーでよく洗い流しましょう。

2.患部をいじらない
なるべく患部はさわらないようにして、爪は短めに切り、手洗いをよくしましょう。
3.タオルや衣類を家族で共用しない
とびちった細菌がタオルや衣類についていて感染することもあるので、共用は避けましょう。

4.プールや湯船に入らない
とびひが乾いてかたまり、完全に治るまでは入らないほうがいいでしょう。
★こんなときはもう一度診察を受けましょう
●発熱し始めた
●2日以上たっても水ぶくれが減らない
●からだや顔が腫れたり、目が充血してきた
Trouble
【アタマジラミ】

清潔にしていても感染する
シラミと聞くと、不衛生にしているために感染すると思う大人は多いかもしれませんが、子ども同士や家族間でうつりやすい「アタマジラミ」は清潔にしていればうつらないという類いのものではありません。
アタマジラミは人から人へと感染するので、いつでもどこでも、誰にでも感染する可能性があります。特に幼児や低学年児童は頭や顔を近づけあうことが多いですから、簡単にうつっていきます。

アタマジラミを発見したら
アタマジラミの成虫は体長3~4ミリほどですから肉眼で発見することができます。しかし、成虫の動きはすばやく、捕まえるのは困難です。
成虫の寿命は1ヵ月ほどですが、1日に3〜4個の卵を産みます。卵は7日ほどで幼虫になり、さらに7日ほどで成虫になります。幼虫のころから頭皮の血を吸い始め、これが頭皮のかゆみの原因になります。子どもがやたらと頭をかいていたら、頭皮と髪の毛をよく観察してみましょう。

幼虫や成虫は髪の中に隠れてしまうので、楕円形の卵がないかをチェックします。白っぽい色でフケや米粒がついているように見えるかもしれませんが、卵は髪に固くくっついていて、指でつまんでも簡単には取れません。
アタマジラミの卵や幼虫、成虫を駆除するには、以下の方法を試してみてください。
① 2週間毎日シャンプーする。
② 髪の毛を短めに切る。
③ 目の細かいスキグシで丁寧に髪をすく。
④ 卵は1個ずつ丁寧に取り除く。
⑤ クシ、ブラシ、枕カバー、シーツ、タオル、下着などを共有せず、毎日取り替えて洗濯する。
このときアタマジラミのいない人の洗濯物と一緒にしない。(アタマジラミを死滅させるには
60度以上の湯に5分以上つける、または 洗濯乾燥機で熱風に当てるのが有効とされています)
⑥ 布団はできるだけ日光に当てて、よくたたく。
⑦ 殺虫成分の入った市販薬やシラミ用シャンプーを使う。(ただし卵には効果はありません)

【塚田先生プロフィール】
塚田次郎(塚田こども医院 院長)
1981年自治医科大学卒業、同年医師国家試験合格。新潟市民病院にて臨床研修、新潟県立坂町病院小児科勤務を経て、1990年新潟県上越市栄町にて塚田こども医院を開設。日本小児科学会認定医。