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日本人なら知っておきたい! 四季はどの教科にも通ずる学びの宝庫

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みなさんは日本の四季についてどれくらい知識がありますか? 「身近すぎて改めて考えたことがない」という方も多いかもしれません。ですが、地球規模の温暖化や気候変動が進む今、現代の子どもたちは、四季を実生活で理解するのが難しくなっているはずです。そこで、今回発売された『季節の図鑑』を使って、お子さんと学びを深めるコツを幼児教室伸芽会の飯田先生と麻生先生に伺いました。小学校受験を見据えた学びのヒントも満載です。


 

なぜ小学校受験で四季の問題がよく出題されるのか



――幼稚園受験および小学校受験での「季節」の重要性について教えてください。

麻生先生:四季は日本ならではのよさですが、大人になるとどうしても感じにくくなってしまうもの。私自身もそうですが、子どもの頃に体験した季節の記憶は大人になっても忘れないものなので、ぜひ幼少期に肌で感じてもらいたいですね。
たとえば、お子さんと歩くいつもの道も、なんとなく歩くのではなくて、季節の風や匂い、咲いている草花を感じながら歩くだけでも四季を感じることができます。もちろん、「端午の節句」や「お月見」、「節分」に「ひな祭り」など、忙しい中でも季節の行事を大事にすることで四季を感じることができます。日本の教育課程でも、季節は重視されています。伝統的な行事を通して、季節や、日本文化を継承することも大切なことです。学校側は、家庭教育の中でも、コミュニケーションの一環としてこういった行事を大切にし、体験をしたり、関心を向けているかという、家庭の在り方を見ていると考えます。


現代の子は「梅雨」や「秋」を実生活で体得する期間が短い?



――最近は四季を感じることが難しくなっていると言われていますが、幼児教育においてはどのような影響がありますか?

麻生先生:伸芽会でも季節に関する学びをしていますが、今はたとえば「梅雨」や「秋」の時期が短くなっているので、子どもたちが実生活で体得するのが難しいと思っています。とはいえ、授業では「なんで梅雨があるのか(植物にとっては恵の雨になるし、雨が降らないと水不足になるなど)」を説明すると、手洗いの時間に水を大事にするようになった子もいます。子どもたちには、いかに自分ごとにするのかが大事なのだと実感しているところです。




飯田先生:特に都会で子育てをされていると、冬も暖房完備の家と車移動、お正月は南の島へ家族旅行などと、寒さをあまり知らないお子さまも少なくありません。ですから、今の時代の子育てでは、親御さんが意識的に季節を感じる体験をさせてあげる必要があるのです。
また、教室には海外ご出身の方も増えていますが、皆さん「日本の四季の理解が難しい」とおっしゃっています。そういうご家庭にもこの図鑑は最適なのではないでしょうか。


四季の観察でぜひ試してほしい“定点観測”




――本書をご覧になって「いいな!」と思ったページはありますか?

麻生先生:幼児教育においても、四季の移り変わりを知るために定点観測はとてもよいと思っているのですが、この図鑑でも同じ場所で、四季を細かく、まるで絵本のように描かれているのが素晴らしいですね。

飯田先生:写真の選択がどれも本当にすばらしいです。たとえば、春の写真には桜だけではなく雲も載っていたり、暖かい日と寒い日が交互にやってくること、さらに『枕草子』を連想させる「春霞」や「おぼろ月」の写真まで載っているのには感心しました。
また、たんぽぽの写真も、綿毛になると背が高くなるというのもきちんと表現されていますよね。引きで描いた春の天気の写真も、これだけで授業ができそうなくらい細かく計算されているなと感じます。定点観測ではたとえば、桜の木に注目しても面白いですよ。「秋の桜」まで知っている大人はかなり少ないのではないでしょうか。




麻生先生:野菜や果物にしても、断面と実物だけではなくて、実がなっているところまで写真を載せている図鑑ってあまりない気がします。

飯田先生:まさに。子どもたちはスーパーで売っている状態の野菜しか知らない子が多いので、どんな状態で実がなっているかを知れるのは素晴らしいです。
あとは、ところどころに読み物があるのもいいですね。「夏の行事」では「たなばたのお話」が載っていますが、こういう読み物があることで物語が好きな子や親御さんも親しみやすくなるなと思いました。


四季は、どの教科にも通ずる学びの宝庫




――受験をする・しないに関わらず、幼児期に「季節」の経験値が高いことは、 その後の学びにおいてどのような良さがありますか?

麻生先生:日本の文化や伝統を大事にすることは、知識はもちろん、親子共に人や自然に対する感謝の気持ちが芽生えてきます。
また、「ひなまつり」でお内裏様の位置が関東と関西で逆であったり、桜餅の餡が違うなど、地域差があるということを知って「それはなぜか」と興味をもって調べて関心を広げた経験がある子は、その後の学びの吸収が違うはずです。また、家に女の子がいないと、「ひなまつりについてよく知らない」という男の子もいらっしゃいますが、「女の子のお祝いだから知らなくていい」というわけではありませんよね。

飯田先生:四季の変化に関する学びは、国語の語彙力や理科、社会などどの教科にも通じるものです。日本で生まれ育った以上、学んでおいて損はないですし、親御さんであまり関心がなかったという方も、これを機にお子さんと学び直しをされてみるとよいのではないでしょうか。


図鑑で見た野菜や果物をスーパーに確かめに行ってみよう!



――親子で楽しみながら四季を感じるコツがあれば教えてください。

麻生先生:たとえば夏のセミでも、種類によって生息地域が異なることや鳴き声に違いがあることを図鑑で学んだら、外に出たときに鳴き声に注目してみましょう。クマゼミは本来南の方にしかいないはずですが、温暖化とともに北上してきている、という発見もあるはずです。

飯田先生:あとは、忙しい親御さんにおすすめしたいのが、スーパーでの買い物で季節の旬に気づけるということです。お子さんを連れてスーパーに行くと時間がかかるし人に迷惑をかけそうと思われるかもしれませんが、野菜や果物の産地や値段などの会話をしながら買い物をすると、案外静かにしてくれるものです。「トウモロコシのひげと粒の数は同じって知ってる?」など、話のネタを図鑑で調べて親御さんが披露するのもいいかもしれません。

麻生先生:今は1年中食べられる野菜も多いので旬を感じにくいのですが、「今日から春、夏ということではなくて移り変わっていくもの」だということを知ってほしいですね。その時にたくさん取れる=豊富だから価格が安いと気づけたり、「自然につくられるのはエネルギーがたくさんたくわえられているから、身体にもいいから美味しい時期に食べよう」と言う提案もおすすめです。(2025年6月、伸芽会にて)


 

取材協力=伸芽会教育研究所 https://www.shingakai.co.jp/
飯田道郎(いいだ・みちお)先生(伸芽会教育研究所所長)
麻生尚子(あそう・なおこ)先生(伸芽会教育研究所)
取材・文=加藤朋美
撮影=齋藤優龍

 

書籍情報


監修: 横山 洋子

定価
1,760円(本体1,600円+税)
発売日
サイズ
B5変形判
ISBN
9784041158838

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