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「母子手帳を見るのが苦痛。おかしな遊び方もしていて、もしかして発達が遅れてるのでは?」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q1. 母子手帳を見るのが苦痛です。おかしな遊び方もしていて、もしかして発達が遅れてるのでは?

■家族構成
相談者:さくら(相談したい子の母、20代後半)、夫(30代前半)、息子(相談したい子、1歳)

■ご相談
 母子健康手帳の「保護者の記録欄」を見るのが苦痛でたまりません。生まれた頃は、「寝返り」したら「おすわり」、その次は「ハイハイ」、そしていつかは歩いたり走ったりするんだなあ、と待ち遠しくて、よく眺めていたのですが。最近は「いいえ」に○がつくことが増え、ため息ばかりついてしまいます。

 息子はあまり泣くこともなく一人でずっとおもちゃで遊んでいて、子育てってこんなものかと思っていました。でも、1歳を過ぎた頃から、もしかして発達が遅れているのではないか、と気になるようになってきました。

 息子は、よく、おばあちゃんからもらったミニカーを逆さまにして、ずーっとタイヤを回して遊んでいます。何度も何度も飽きずに、一心不乱にタイヤを回し続けるのです。そんなときは、私はミニカーを取り上げて、「これはね。こうやって遊ぶのよ」と、ミニカーを走らせて教えてあげます。そうして、何度もミニカーを走らせてみせ、息子に返しました。ところが息子はまた、同じようにひっくり返してタイヤを回して遊ぶのです。ネットで調べてみると、この遊び方をする子は自閉症児に多いとありました。夫は気にしすぎだと言うのですが……。

 1歳半健診で相談すると、少し様子を見ましょう、と言われました。様子を見れば見るほど不安になってきます。どうしたらいいでしょう。

 

A. 専門家の回答

どんな遊び方でもOK。こうしなさいと、押し付けないように
 初めての子育ては、周囲のお子さんと比べたりして発達のことが気になりますよね。母子健康手帳の「保護者の記録」欄を見て、「発達が遅れているかも?」と気になったさくらさん、息子さんの発達を客観的に判断された、その気づきが、まずはすばらしいと思います。

 また、息子さんが、ミニカーを逆さまにしてタイヤをくるくる回して遊んでいるのは、自閉症児に多い遊び方だと知って、さらに不安に思われているのですね。確かに、私の経験からも、オモチャを本来の遊び方とはちがった方法で遊ぶ(例えば、積み木を積まずに同じ色だけを並べて遊ぶ)のが好きな自閉スペクトラム症のお子さんが多いのは事実です。

 でも、それで楽しく遊んでいて困っていなければ、そのまま遊ばせてあげてはどうでしょうか。指を使う動きをすることで手を器用に動かす練習にもなります。無理に「普通に」遊ばせようとせず、「面白いこと見つけたね。」と見守ってあげてください。もしかすると、大人になったら、ふつうの人では気づかないようなタイヤの動きの違いがわかる、車の専門職につくかもしれませんよ!

 息子さんが気持ちよく遊んでいるとき、脳の中では、ドーパミンという神経伝達物質が出ています。快楽物質とも呼ばれるドーパミンが出ると、思考を司る前頭前野や記憶に関係する海馬、身体を動かす運動野など、脳のいろんなところがよく働くようになります。そして、特に成長の早い段階で、人から嫌々やらされるのではなく自分からすすんでやろうと思って始めた行動は、その後の子どもの意欲や学習能力に非常に良い影響があることがわかっています。どうか十分に遊ばせてあげてください。

ためらわずに相談しましょう
 1歳半健診では「様子を見ましょう」と言われたんですよね。ただ、1歳半健診の次は3歳児健診になってしまいます。3歳までさくらさんが悶々と不安を抱えたまま育児をするのは、なかなかつらいものがあるでしょう。公園で年の近いお子さんと比べてしまうのがイヤだからと、あまり外に出なくなったり、発達のことを調べては、漠然とした不安を抱くようでは、息子さんにとってもよくありません。

 問題があるのかないのか、あるとすれば何が問題なのか、はっきりさせたほうが、問題に応じた対応がとれるというものです。どこの自治体でも、保健センターや市町村の子育て窓口などの発達の相談先があります。よく行かれている小児科でもいいかもしれません。不安になるようなら、ためらわずに相談しましょう。その際に気をつけていただきたいことがあります。

 まずは3カ月〜半年間ほど、つまり2歳くらいまでにどんなところが成長したのか、注意深く観察してください。例えば、単語がいくらか出てきたが意味のある言葉にならない、ハイハイしかまだできないなどです。言葉だけが遅れているのか、運動だけに遅れが見られるのか、その両方なのか。そして相談されるときに、どこがどう気になっているのか、できるだけ正確に伝えてください。そうすることで、問題点がクリアになり、対処法がわかります。

 ただし、決して心配そうな目でお子さんを見ないようにしてください。難しいかもしれませんが、むしろ発達についての心配を減らすための「客観的な観察」をしていただきたいのです。できないことを悲観したり、他のお子さんと比べてイライラしたり、といった不安な気持ちは息子さんに伝わってしまいます。どうか、前向きな気持ちで少しずつでもできるようになったことを喜びに変え、接するように心がけましょう。

 言葉の問題だけなら、就学前に専門家による言葉の教室に通うなどすることで、小学校入学の頃にはそれほど気にならない程度にキャッチアップできる場合が結構あります。

早期発見がキーポイント
 最新の研究結果によると、より早い段階で遅れに気づき、本格的な支援を受けトレーニングを開始した子どもは、知能がアップし、社会性やコミュニケーション能力が改善したという報告がたくさんあります。

 少し難しい話になりますが、私たちの脳は神経細胞(ニューロン)からできていて、それぞれの神経細胞からいくつもの突起が出て、別の神経細胞へとつながり、情報を伝えていきます。このつながりのことを「シナプス」と言い、シナプスが増えていくことを「脳が発達している」と言っています。

 シナプスの形成は、生後1、2年ほどの間に急激に発達していきます。5歳ですでに大人の脳の85%ほどの大きさになります。だから、脳の発達が著しい「より早い時期に」、その子に見合った育て方をする方が効果が上がるというわけです。

 もっとも、脳はいくつになっても発達する機能が備わっているため、効果の差はありますが、生涯にわたり学ぶことができますので、5歳を過ぎてしまったからもう無理だー、とあきらめないでくださいね。

 まずは、発達が気になる場合は、定期健診を待たずに発達の相談窓口などに相談されることをおすすめします。周囲のポジティブな関わり方で、お子さんの発達は促されます。心配ごとがあると、なかなかお子さんと「楽しく遊ぶ」ような気持ちにはなれないかもしれませんが、トライしてみてください。

その他の発達に関するお悩み

 

久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。

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