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「児童心理士さんに療育に通った方がいいと言われました。」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q30:妄想し突拍子のないことを言う3歳の娘。児童心理士さんに療育に通った方がいいと言われました。

■家族状況
ななな(相談したい子の母、30代後半)、夫、長女(相談したい子、3歳)

■ご相談
 失礼致します。娘は2歳9ヶ月ほどのとき、保育園の巡回の市の児童心理士さんから発達相談を受けた方がいいかもと言われました。その後すぐに区の心理士さんと面談し、3歳検診の際も確認していただき観察となり、そこから半年に一度確認ということになりました。

 つい最近行った3歳半検診にて児童心理士の先生が変わったのですが、新しい心理士さんに変わったら「筆圧も薄いし、こちら側からのアプローチに対して気が乗らなければ反応が薄いので」と言われ、療育に通う方向を示されました。まだ言われたばかりなので療育などの通所はなく、先日担任の先生と面談にて週1回か月1回かで療育を始めようかという話になったところです。担任の先生からはオブラートに包まれた言い方で「急を要する状態ではありませんが、沢山見てほしい子なので、そこで手厚く見てもらう機会も一つかも」と言われました。

 その娘なのですが、ここ最近叱ったり注意すると「私は何にもできない?! 1人なの?」というマイナスの言葉が出てくるようになりました。普段強めに叱らないのですが、今日は出窓のふちにのぼろうとしていたため、「落ちたら怪我をしてしまう! 心配だからやめなさい!」と強めに叱ったら泣きだしました。気持ちの切り替えができず、しばらく泣きつづけていたら、そこから話がかわって「私は泥棒なの?」と言いだしました。誰がそんなことを言ったのか聞くと「ママが?」と…。全く言っていないのに。基本的に我が家は叱ったりしないで促そうとするばかりが多いので、叱られたショックからそのような言動や妄想に繋がるのでしょうか。

A. 専門家の回答

人に迷惑をかけない癖は良しとしてはどうでしょう。

不器用と自分の世界以外への関心のなさ
 「筆圧が薄い」というのは、運動のコントロールの問題があるということかと思います。また、「気が乗らなければ反応が薄い」というのは、自分の世界があり、その関心の範囲外のことにはあまり気持ちが向かない、ということでしょう。2つともASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の特性としてよく見られるものです。

 それだけ聞くと「あら、うちの子もそうだわ……」と思われる方は結構いらっしゃると思います。もちろん、児童心理士の方は、それだけではなく、他のことも観察されて、総合的に「療育に通った方がよい」という判断をされたのでしょう。

豊かな想像力は認めつつ
 それにしてもご相談に書かれたエピソードによると、3歳でおしゃべりもよくできるし、想像力が豊かだなあと思います。なななさんに叱られて、周りに誰も味方がいないような気持ちになって「私は一人なの?」と言ったり、出窓に上るのを怒られて、きっと何かのお話を思い出し、出窓から侵入してくる泥棒と重なって「私は泥棒なの?」と言ったり。娘さんの頭の中では、ストーリーができちゃってるんですね。そこはどうか、頭ごなしに否定しないようにしてほしいです。「どうしてそう思うの?」と聞いたり、娘さんの独自の世界にも一定の理解を示してあげましょう。

 しかし、頭の中で自分のお話は作れるけれど、怒ったなななさんの気持ちを考えたりするのは苦手なのだと思います。

一方的な話は今後の人間関係に影響あり
 まだ3歳ですと、「面白いことを言うお子さんだなあ」でいいのですが、この先、お友達関係が重要になってくると、空気が読めないことを言ってお友達が離れていく可能性もあります。

 お友達に言われたことをどんどん自分なりに解釈して、架空の物語を作り上げてしまう。そうして突っ走ってしまわないように、「そうじゃなくて、そのお友達はこういうつもりで言ったんだよ」とその都度教えていく必要があります。言葉の理解は早いので、きちんと説明すればわかってくれるはずです。

 そういった、相手の気持ちを考える、といったことも、早くから療育に通うことで小さいことから学ぶことができるでしょうし、なななさんご自身もどのように娘さんに関わっていけばよいのか教えてもらうことができます。そうやって就学までに、お友達とのつき合い方が学べるとよいですね。

「うちの子ちょっと変わってる?」子どもの発達お悩み相談室はこちらから

 

久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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