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「知能が遅れていると指摘された8歳の次男。肥満傾向で困っています。」子どもの発達お悩み相談室 第25回


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

 

Q25:知能が遅れていると指摘された8歳の次男。肥満傾向で困っています。

■家族状況
おたーたん(相談したい子の母、40代前半)、夫、長男、次男(相談したい子、8歳)、三男

■ご相談
 
小学3年生になった次男の肥満傾向についてです。
 発達の状況は、年長の時に、大便をオムツでしかできなかった事をきっかけに、地域の支援センターに月1で通っていました。その際、田中ビネーという検査で「知能が8ヶ月遅れ」という結果でしたが、トイレのこだわりや臭い過敏、ルールのある遊びが苦手など、親から見た感覚と結果は合致していました。
 長らく悩みに悩んだ大便をオムツでする件については、小学校入学直前の3月に無事トイレでできるようになりましたが、入学前の就学相談で滑舌を指摘され、小学1年生の1年間、週1回「ことばの教室」という通級に通い、1年間で無事すらすら話せるようになりました。現在3年生になりましたが、学習面は、今はまだ家庭でフォローすればつまずきながらもついていけている、という状態です(学校の担当の先生には高学年になったら厳しくなるかも、と言われました)。
 元々、赤ちゃんの頃から握力が弱く、運動も苦手な次男でしたが、昨年のコロナ自粛生活でみるみる太ってしまい、身長(身長は元から高くて)と体重が同級生より二回りくらい大きくなってしまい完全にメタボ体型になってしまいました。3歳上に兄がいますが、兄より5キロ以上体重が重い、という現状に慌てている母です。兄と弟は全く太っておらず、です。
 次男は縄跳びや鉄棒やマット運動などどれも満足にできず、まずは痩せないとダメか、と思いますが、食べることが好きで早食いで、「よく噛んで」等と声をかけていてもなかなからちがあかないと感じます。次男はルーティンに組み込むと、見ていて清々しい程きちっと取り組むので、運動などをルーティンに組み込むのが良いかと思ってはみるのですが、現在は夫(子ども達の父)が海外駐在で不在でワンオペ育児な事もあり、母一人で日々疲れ果てている為、アイデアが全く思い浮かばず、家庭で取り組める事やその他にも取り組める内容があれば教えて頂きたく、ご相談させて頂きました。ちなみに、次男は習い事でそろばん、ピアノ、スイミング(週1日)に通っています。どれも上達は超ゆっくりですが、どの習い事も先生に恵まれて、嫌がらずコツコツやっています。スイミングを週2日にするのは本人が拒否しているのと、母が会社勤めをしている為、送迎できる曜日が限られており、無理かなと思っています。

A. 専門家の回答

適正体重が保てるように、本人任せにせず、家族で協力しましょう。

なるべくストレスのない環境で
 
言葉の教室に1年間通い、すらすら話せるようになってよかったですね! 早めに気づかれて対応したのが功を奏したのだと思います。

 知能については、田中ビネー式知能検査を受けられて、8ヶ月遅れていると言われたとのこと。学校の先生が言われたように、高学年になると勉強が難しくなるので、なるべく次男くんがストレスを感じなくて済む環境を用意してあげて欲しいと思います。というのも、ストレスがあると、無意識のうちにそれを、食べることで解消しようとする場合があるからです。もちろん、ストレスで逆に食欲がなくなるということもあり得ますが……。

発達に問題があると肥満リスクが高くなる
 
次男くんについては、知能の遅れ以外の発達の診断については書かれていないのでわかりませんが、「ルーティン化すると清々しいほどきちっと取り組む」ということから、もしかしたらASD(自閉スペクトラム症)の特性があるのかもしれません。ASDのお子さんでは、「構造化」という、あらかじめ何をどうするのか決めておくやり方だと理解しやすいのです。

 ちなみに、ASD児の肥満頻度は22.2%で、定型発達児より肥満となるリスクが41.1%高いという報告があります。
発達に問題のあるお子さんの肥満については、一般的に

 ・食行動の異常(フルーツや野菜の摂取が少なく、甘い飲み物やスナック菓子の摂取が多いなど)が定型発達児の5倍多い。
 ・身体活動量が少ない。(座っている時間が長く、ゲームをする時間が長い)

といった原因があげられます。

適正体重の範囲に入るように
 
肥満は放っておくと生活習慣病など様々な弊害が出てくるので、適正体重の範囲内に入るよう、数値を落とされた方がいいでしょう。なお、小児の適正体重については、一般社団法人日本小児内分泌学会のサイトに標準体重などについて詳しく記されているので参考にされると良いと思います。

 高学年になり思春期に入ると食欲は激増することが多いので、その前に過食が過ぎてしまうのは防ぎたいところです。お忙しいとは思いますが、おたーたんさんが次男くんのためにしっかり管理してあげてください。

食べる量と消費するエネルギーの兼ね合い
 
「肥満」は、簡単に言うと、食べる量が消費エネルギーを上回り余った栄養が身体に蓄積されている状態のことです。食べる量が多くても、その分運動するなどして消費エネルギーも増やせば、肥満にはなりません。

 しかし運動が苦手なお子さんの場合、積極的に体を動かそうとせず、ゲームなどじっとしたままできる遊びを好みがちです。だからこそ、肥満予防・健康維持のために、幼い頃から体を動かす習慣を身につけておくことが大切なのです。

 次男くんの場合、コロナ自粛生活で、運動量がさらに減ってしまった上に、家にいてついおやつなど食べ過ぎてしまった、といったところでしょうか。

食べるものや量を工夫する
 
食べ盛りの次男くんに、「食べないで」というのはなかなか酷なことですが、なるべく野菜やお魚、お肉なら脂身の少ない部位のものを出す、お菓子をあまり家に置いておかない、寒天ゼリーや枝豆などお腹が空いたら好きなだけ食べてよい低カロリーおやつを常に冷蔵庫に入れておくなど、工夫されるとよいと思います。

 あと、食事は大皿で出して各自で取り分ける方式より、一人分ずつおたーたんさんが入れて渡した方が確実です。見てないところで自分のお皿にたくさん入れたりするので。

 また、毎日節制というのもストレスになって、おたーたんさんのいない時に、勝手に買い食いなどされては元も子もないので、週に1日か2日は好きに食べていい日を設けるといいでしょう。

できるだけ運動を生活習慣に組み込む
 
次男くんの水泳は、おっしゃるように週2、3回できればいいのですが、本人がいやがっているのに無理にやらせるわけにはいきません。かと言って食事制限だけではなく、運動も少しは組み合わせたいものです。

 サッカーや野球などチームスポーツはやはりハードルが高いでしょうか。仲良しのお友達と一緒なら続けられる場合もありますが。とにかく本人がやりたいことをやらせるのが一番です。特にない場合は、エクササイズ型のゲームなどはいかがでしょうか。目標が達成できたらポイントがもらえるなど、うまくやる気を引き出させるように作られているので、学校から帰宅後30分をエクササイズゲームの時間にするなど、スケジュールに組み込んでみてください。

家族も協力を!
 
あとは散歩やスロージョギングなど、時間を決めて週2、3回でも、家族一緒に取り組んでみてはどうでしょう。次男くんは運動が苦手で、もしかしたら学校のお友達とでは一緒に運動したくないかもしれません。家族だと気兼ねなくできるので、ぜひお兄さんや弟くんにも協力してくれるようお願いしましょう。

 食事やおやつについても、次男くんだけ種類が違う、というのも可哀想なので、一緒に食べるときは、兄弟にも同じものをあげるようにしましょう。次男くんが習い事などでいない時に埋め合わせをするとよいと思います。

早食いにならないようによく噛む
 
次男くんは早食いとのこと。通常、私たちは食事をすると30分くらいで脳内の視床下部というところにある「満腹中枢」が刺激され、満腹感を感じて食事を終わりにします。早食いだと、この満腹中枢が刺激される前に、どんどん食べてしまうという危険があります。

 ゆっくり時間をかけてよく噛んで食べることで、早食いを防ぎましょう。一口に噛む回数は30回くらいを目指します。例えば食べ物を口に入れて「もしもしカメよ、カメさんよ〜♪ 世界のうちでお前ほど、あゆみののろいものはない、どうしてそんなにのろいのか♪」を心の中で歌いながら噛むと、ちょうど30回ほど噛むことになります。これもルーティン化するとよいと思います。次男くんならきっと守ってくれるでしょう。

無理せず、続けることが大事
 
いくつか試してみてはどうかというアイデアを書きました。絶対に全てそうしないといけない、ということではなく、お子さんによって向き不向きもあるので、楽しみながらできることを続けていっていただければと思います。

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久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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