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「小3の息子、私は発達障害を疑っています。登校しぶりがありますが、無理に登校させ続けてもいいのでしょうか。」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q32:小3の息子、私は発達障害を疑っています。登校しぶりがありますが、無理に登校させ続けてもいいのでしょうか。

■家族状況
shumama(相談したい子の母、40代前半)、夫、長男(相談したい子、8歳)、長女

■ご相談
 現在、小学校三年生の長男についての相談です。一学期の終わり頃から登校しぶりがあります。行きたくないのに、苦しみながら登校し、しばらくすると腹痛を訴えて1日欠席し、また嫌がりながら登校するというかんじです。先生に相談したところ、学校生活では友達とも楽しくあそんでいたり、授業で発表もしたりと問題なさそうにみえるそうです。夏休み中は、元気でしたが、また学校がはじまり、かなり苦しそうに登校しています。

 小さいころから、自分の世界に入り込んで周りの声が聞こえなくなることが多く、好きなことには何時間も集中する子でした。反面、切り替えが苦手で、手先の細かい作業が苦手でした。家では、甘えん坊で、やや幼く感じます。

 現在は、運動が得意で、勉強は嫌いです。勉強は15分くらいすると頭が痛くなるそうですが、宿題だけはきちんとしています。私は、発達障害を疑っていますが、夫や両親、先生からはそのような指摘はなく、私が心配しすぎているようにうつっているようです。このまま、息子に無理をさせ続けてもいいのか、迷っています。アドバイスをいただければ、助かります。よろしくお願い致します。

A. 専門家の回答

登校の無理強いはせず、なるべく早く発達相談を受けることをお勧めします。

やれているように見えるのと、実際にやれているのは違う
 息子さん、つらいですね。小学校3、4年になると、人間関係も複雑になりますし、成長の差も大きく出てくる時期です。勉強は得意ではない、ということで、どこかでつまずいているのかもしれません。わからない授業をずっと聞き続けているのも苦痛でしょう。

 学校では、がんばってなんとかやれているように見えるのかもしれません。でも、実際にはそう見せるために、本人はかなり苦労している、ということもありえます。頑張ってやってきたけど、どうにも学校に行くのがしんどくなる、行ってもお腹が痛くなって翌日は休んでしまう、という状況になっているのだと思います。

本人の苦手なことを知るためにも、発達検査を
 過集中、切り替えが難しい、細かい作業が苦手、幼いといった息子さんの特徴からは、shumamaさんが疑っておられるように発達障害の特性が感じられます。言葉が堪能だと周りの人はわからないかもしれません。

 でも、例えば、脳内のワーキングメモリー(一時的に記憶する能力)の発達に問題があると、黒板を写すのに時間がかかり、もたもたしているうちに黒板は消されてしまう、ということがあります。相当がんばらないとついていけません。

 また、もしかしたら、一見楽しくおしゃべりしているように見えている友達関係も、相当無理をしているのかもしれません。

 どの部分がしんどいのか、息子さんが苦手なことはなんなのか、それを正しく評価してもらうために、一度発達検査を受けてみてはいかがでしょうか。

まずはスクールカウンセラーか発達支援センターに
 発達検査は、その子の発達の凸凹を知るのに適しています。何が得意で何が苦手なのか。苦手なことがわかれば、その部分を補強することができます。これからも学校生活は続きます。まずは、息子さんの特性を客観的に評価してもらい、理解しましょう。

 学校のスクールカウンセラーの先生に相談して、どこに行けばよいのか教えてもらっても良いですし、地域の発達支援センターに相談されてもいいかと思います。
息子さんの父親や祖父母には心配しすぎ、と思われているとのことですが、実際に学校に行くのが苦しく、腹痛という形になって不適応合が現れているというのは、甘くみていてはいけない状況だと思われます。

登校を無理強いすると逆に長引く
 とはいえ、発達検査は、今、どこの自治体でもかなり混んでいて、数ヶ月待ちということもあり得ます。とりあえず今、無理して学校に通わせ続けるべきか、というご質問には、どうか登校を強制しないでください、とお願いするしかありません。

 何も手当をすることなしに無理して登校させ続けることで、ダメージが広がり、修復により長い時間がかかってしまうことがよくあるのです。しんどい原因がわかり、それに対する備えをどうするかわかるまでは、登校が本当にきついときには休ませてあげてはどうでしょう。登校しぶり、腹痛はSOSです。

 と同時に、少しでも行けそうなら、保健室でもいいから登校させてもらうなど、先生にお願いしてみてください。というのも、全く学校に登校しない生活を続けるよりは、時には保健室まででも登校することで、朝起きて夜寝るという生活のリズムが保てますし、お友達と話す機会も増え、気持ちの切り替えがしやすいことがあるからです。

 息子さんの状態を見極めるのはかなり難しいとは思いますが、shunmamaさんは、どうか息子さんのいちばんの理解者になってあげてください。

「うちの子ちょっと変わってる?」子どもの発達お悩み相談室はこちらから

 

 

久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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