No.3【イトヒキアジ】福岡県玄界灘産/63cm・3.5kg
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日本各地の暖かい海に幅広く分布するアジの仲間ですが、一般的なマアジと比べると、平たく大型になり、ひし形のような角ばったフォルムをしています。ウロコもほぼない魚体でメタリックカラーなのでつるつるして鉄板のようです。目の上の黒い模様が眉毛にもみえて、凛々しくカッコよくも、目が大きく優しい雰囲気なので可愛くもみえます。ゼイゴがトゲのようなマアジと違い、1つずつがぽこっと突起状に盛り上がっていました。
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第二背びれと尻びれの軟条(なんじょう)が伸びた姿が、まるで「糸を引いている」ように見えるためこの名がつきました。ひらひら~と泳ぐ姿がとっても優雅でかわいくてぼくの大好きな魚で、大分県の水族館「うみたまご」に宿泊できるイベントでは好きな水槽の前に布団を敷いていいよと言われて大喜びでイトヒキアジの所にダッシュしたのを覚えています(^o^)
幼魚の時はこの糸状の軟条が特に長く、猛毒のアンドンクラゲに擬態して身を守っていると言われていて、成長とともに短くなっていくので幼魚と成魚では見た目が結構違います。ちなみに5年前(僕が8歳の時)に初めてさばいた65cmのイトヒキアジは背びれの先までで83cmもあったので、短くなるタイミングは個体差があって、自力ではなくひっかかったりしてちぎれていくのかな…などと想像するのも楽しいです♪
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特に今回の個体は、側線の入り方が左右で違ったり、鰓膜を見ようとエラ蓋を開けると中にこぶ状の突起があったので、他の個体でもそうなのかチェックしたくなったり、またそういった楽しみが増えました。
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▼イトヒキアジは鱗がほとんどないので、頭を落として内臓を取り、骨も適度に柔らかいので3枚おろしも簡単に出来ます。
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さばくと中身はこんな感じです!
刺身・唐揚げ・カマ焼き・塩焼き・西京焼き・ムニエル・バジルパスタ
イトヒキアジの2~3kgの個体は脂が良くのり、マアジのような青魚特有の味ではなく、白身魚のような淡泊な味わいで、刺身は噛めば噛むほどに甘い脂がにじみ出てきて美味しいです。塩焼きやムニエルもその脂のりの良さが生かされて、焼いている時も脂がじゅうじゅう出てきていました。中でもおススメは唐揚げで、脂のりの良い身にたれがしみ込んで、銀色の皮がパリッとなって100点満点のおいしさでした!
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No.4【オキザヨリ】長崎県産/117cm・3.2kg
長崎県志々伎(しじき)の定置網で獲れたもので、「ダツ」という魚の仲間です。この仲間の多くが緑色のビリベルジンという胆汁(たんじゅう)色素の影響で、骨が青緑色がかることがあります。秋の味覚サンマの塩焼きを食べている時に青い骨が出てきて驚いたことがあるかも!?しれませんが、実はサンマもダツ類で同じ色素を持っているからで、食べても特に問題はないのでご安心ください(^○^)
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そして今回のオキザヨリは、全長なんと! 117cm、胴回りが26cmもありました!サンマのような細長い魚の胴回りが26cmというと結構な太さですし、パンパンな身の詰まり具合がすごいです。紺と銀色の体色で角度を変えるとエメラルドグリーンにも見えてキラキラとキレイでかなりのカッコよさです!
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ぼくの腕よりはるかに太いです!
目も碧色で、骨や歯も青緑色で迫力満点です! ギザギザの歯がずらりとならんでいる長い口先は吻(ふん)といい、一口でエサを食べたり水の抵抗を減らし早く泳ぐために長くなっていると言われています。
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ダツ類は美味しい魚が多く、中でもぼくは「テンジクダツ(ダツ目ダツ科テンジクダツ属)」が美味しくて好きなのですが、オキザヨリも同属でかなり近種なので、期待が高まります。
▼オキザヨリの鱗はほとんど取れてしまっていたので、ウロコ取りでなぞる感じで簡単に取りきることができました。3枚におろしたら、骨の色は独特ですが、背骨がぽこぽこした形状でなんだか可愛いかったです。
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刺身・塩焼き・マース煮・味噌汁・天ぷら・明太大葉チーズのはさみ揚げ・漬け丼・なめろう・酢漬け
長く太い魚体に身がたっぷり詰まっていたので色んな料理を作ってみました!
普通のダツの刺身はもっと色が濃くて力強い味なのですが、オキザヨリの刺身は身色が薄く、あのかっこいい見た目からは想像できないようなぽわんとあっさりした味でもちもちしていました!
塩焼きもあっさりとしていましたが、これが味噌汁(アラだし)になると一変! 骨から力強い出汁が出て濃厚なスープになり、身もコクが出てきてエネルギーをそのままいただいているかのようにこっくり濃厚になりました。また漬け丼は味がよく染み込んでおいしくて、酢漬けも甘みがでて良かったです。
★漬けだれ(酒・みりん・醤油を1:1:1)・・・酒・みりんを大さじ2ずつ軽く火にかけてアルコール分を飛ばしたら火を止めて醤油大さじ2を入れて冷めたら完成。そこに刺身をつけて、15分ほどで食べられますが、冷蔵庫の中で冷やしながら漬ける時間を延ばすと、ほどよく水分が抜けてツヤツヤでしっとりした食感の濃い目の味わいになるのでそれもまたおススメです。
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ダツ類は、味噌との相性が良く、なめろうにすると抜群においしいので、もしダツを見つけた時はぜひ試してほしいです。マース煮(※)も旨味が出ておいしかったので、液体を使った調理法にすると、強い旨味が出るのではと今回食べてみて推測しました。またさばいた時には研究してみたいと思います。
そして天ぷらは身だけのものと、身に大葉・明太子・チーズを挟んだ2種類を揚げました。淡泊な味なので、チーズや明太子をプラスすると、コクが増してサクサクふわふわでおいしかったです。
※マース…沖縄の方言で「塩」のこと
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今回は4種類の大型魚を食べましたが、どれも食べごたえと共に、“主の貫禄”がある王者の味がしました。
もちろんこれよりも大きい主級はいますが、どんなに大きい魚、もしくはどんなに小さい魚でも、スーパーに並ぶアジやタイと同じような料理法が出来るはずなので、もし機会があれば試してみてください! 自分でさばいてみると新たな発見があるかもしれません(^○^)
《おまけ》
今回は鯛中鯛(たいちゅうたい、※魚のようにみえる骨のこと)だけではなく、特徴的な骨や耳石(じせき、※バランスを取るために大事な石状の組織で頭の中にある)も残してみました。
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「カライワシ」
とにかく骨の油分が多くどんなに洗ってもにじみ出てきてなかなか乾きませんでした。鯛中鯛は立体的な面白い形で、耳石は天使の羽のようで可愛いです。背骨から生えている小骨もカライワシの特徴を表しているようで面白いなと思いました!
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「スジアラ」
それぞれの骨の強度が強くしっかりしています。鯛中鯛も大きくて、ずっしりと重厚な頭が帝王感をより一層際立たせていてかっこいいです!
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「イトヒキアジ」
下あごの部分は見た目のまま角ばっていました。アジ類の鯛中鯛の下側はひらひらした形が特徴です。尻びれの糸部分も残せたので嬉しいです。
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「オキザヨリ」
写真では分かりづらいかもしれませんが、洗って干してからもビリベルジンの青緑色が残っています。尖った歯はあご骨から結構抜けてしまいましたが、細かい歯列の方はほぼ抜けずに残っていて、くしのように髪の毛を梳かすことができました。鯛中鯛は、体高(腰のカーブ)が高いのと、擬鎖骨(ぎさこつ、鯛中鯛とつながっている骨)と繋がったままだとサイの顔に見える面白い形状でした。