
中学受験をはじめる前に知っておきたい「60のポイント」を、講師と保護者の視点を持つ矢野耕平先生が実体験をもとにわかりやすく解説します。
家庭のリアルな悩みを描いたマンガとともに、子どもと親が納得のいく選択を重ねながら、後悔のない受験生活を送るためのヒントをお伝えしていきます。
※本連載は『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』から一部抜粋して構成された記事です。
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わが子の中学受験塾を探そう
わが家に向く塾のチェックポイント
どんな塾がわが家、わが子と合っているのでしょうか。塾選びのチェックポイントを挙げていきましょう。
通塾時間
できるだけ近い塾が良いでしょう。たとえば、往復で2時間かかるところに通えば、それだけ予習・復習に充てられる時間が少なくなってしまいます。
1クラスの人数
1クラスの人数をチェックしましょう。15名以内であれば、講師の目が全員に届くと思いますが、それ以上の人数だと積極的な子どもたちしか「得」をしないこともあります。わが子の性格がシャイなら、少人数制クラスを運営している塾がおすすめです。
自習室の有無・質問対応
ご両親が共働きだったり、シングルのご家庭だったり、中学受験勉強に付き添えない事情を抱えている場合、自習室を完備していたり、質問体制が整っていたりする塾が良いでしょう。
仕様面
中小塾で散見されますが、事務的なシステムや年間スケジュールなどが「自転車操業」状態のところは避けたほうが無難でしょう。その点、大手塾の大半はかっちりしていますので安心感があると言えます。
合格実績
その塾の合格実績や合格実績の記載の仕方をチェックすると、どういう層に力を入れている塾なのかが見えてきます。個人的には学力上位層も下位層も同じ温度でしっかり指導してくれるところが望ましいのですが、そういう塾ばかりではありません。
こんな塾には要注意
長く運営している塾、存続している塾であれば、万人に「悪い塾」などありません(もしそんな塾があればとっくに消滅しているはずです)。
あくまでも主観ではありますが、こういう塾には注意を払ったほうが良いかもしれないという点を列挙しておきます。
講師スタッフ
正社員講師と時間講師(大学生等のアルバイト)の比率で後者に偏っているところは要注意です。アルバイトの回転は概して早いので、担当講師の入れ替わりが激しく、混乱してしまうこともあります。加えて、1人の講師が複数校舎を回って授業をしていると、なかなか連絡がつかないですし、毎日のようにわが子に目を向けてもらうことも難しくなります。その校舎に勤務する講師が「固定」されているかどうかもチェックポイントです。
事務スタッフ
塾は「夜の商売」。正社員の就業時間は午後の早い時間から21〜22時前後となるケースが多いです。そのためか、あまり女性が好んで勤務する業種ではありません。しかし女子生徒にとっては、女性どうしだから相談できる内容もあるでしょう。その逆もありますが一般的に塾は女性職員が少ないことが多いので、職員の男女バランスを確認することは案外大切です。
設備
たとえば、教室に壁が設けられておらず、騒がしい環境になっているなど、子どもたちが学習に専心しやすい設備を構築していないと感じられる塾は避けましょう。塾はあくまでも「学習空間」です。それにふさわしい設備投資に塾サイドが力を入れないのは、塾の経営陣の価値観だと判断して良いでしょう。また、2023年の夏に某大手塾で女児に対する深刻なセクシャルハラスメントの事件が起きました。この事件を受けてスピーディーに具体的な対応策を打ち出し、それを実践している塾は良いところだと考えます(ネットワークカメラの導入など)。一方、あのような事件を受けても平然とそれまでの仕様面を何も変更しないところは危機管理意識が低いと言えるでしょうし、そういう姿勢は「一事が万事」とみなして良いでしょう。
「良い塾」ってどんなところ?
大きな規模の塾であっても、校舎ごとに「風土」がありますし、塾とは「わが子がどんな講師から指導を受けるのか」に帰結します。親子が「良い」と心から思える講師に巡り会えれば、そこは「良い塾」です。結局このシンプルな点が最も大事なのです。
次回『私立中高一貫校ってどんなところ?』へ続く(6月5日公開予定)
書籍情報
- 【定価】
- 1,650円(本体1,500円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- A5判
- 【ISBN】
- 9784046070562