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私立中高一貫校ってどんなところ?『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』ためし読み

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中学受験をはじめる前に知っておきたい「60のポイント」を、講師と保護者の視点を持つ矢野耕平先生が実体験をもとにわかりやすく解説します。
家庭のリアルな悩みを描いたマンガとともに、子どもと親が納得のいく選択を重ねながら、後悔のない受験生活を送るためのヒントをお伝えしていきます。
 ※本連載は『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』から一部抜粋して構成された記事です。

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私立中高一貫校ってどんなところ?



東京都には「男女別学校」がたくさんある

皆さんは共学校、男女別学校どちらのご出身でしょうか。「共学校」と回答される方が多いでしょう。

実際、全国的にみると男女別学校は「希少種」と言えます。文部科学省の学校基本調査(2024年調査)によると、全国に4774校存在する高等学校のうち、「男のみの学校」は92校(1.93%)、「女のみの学校」は266校(5.57%)です。男女別学校自体、約13校に1校しかないのですね。

これを聞くと、特に東京都在住の保護者は驚くかもしれません。そうなのです。東京都にある私立中高一貫校に焦点を当ててみると、事情は変わってくるのです。東京都生活文化スポーツ局の資料「東京都の私学行政」(2024年4月公開)によると、東京都にある私立中学校183校のうち、男子校は31校(16.9%)、女子校は65校(35.5%)、そして、共学校は87校(47.5%)となっています。つまり、東京都の私立中学校のうち半数超は男女別学校なのです。全国的な男女別学の割合と比較するとかなり違うことがわかります。

その東京都であっても、近年は男女別学校が減少傾向にあります。男子校や女子校が共学化する流れが加速しているのです。いまは難関の共学校として知られている学校、たとえば、早稲田実業学校、渋谷教育学園渋谷、明治大学明治、中央大学附属、法政大学、広尾学園、広尾学園小石川、開智日本橋、東京都市大学等々力……これらの学校はもともと男女別学校でした。

なぜ、共学化がこれほど加速しているのでしょうか。その要因として考えられるのは、男女共同参画社会が叫ばれて久しい現代に「男女別学」は逆行していると世間から見られている点です。「社会は男女で構成されているのだから、多感な中高時代は男女同じ学び舎で過ごすのが望ましい」という価値観が醸成された結果、全体的に男女別学校の受験者が激減した時もありました。このままでは学校の存続自体が危ぶまれると考え、共学化に踏み切ったところがたくさんあります。

男子校は「需要過多」になっている

それでは、男女別学校は社会的にその使命を終えようとしているのでしょうか。わたしはそうは思いません。むしろ、ここ最近は男女別学人気が盛り返しており、特に数の少ない男子校にいたっては「需要過多」、多くの男子校で激戦の入試が繰り広げられています。

なぜ、男女別学にふたたび目が向けられるようになったのでしょうか。ここで男女別学の魅力について説明しましょう。

男女別学に長く通っているとジェンダーバイアスを持ってしまいそうに感じます。確かにそういう側面はあるかもしれません。しかしながら、「男だけ」「女だけ」という環境に置かれることで、性差から解放される6年を過ごすことになるという面もあります。

ある女子校出身の人たちはこう証言します。

「共学だとクラスで目立つのは、外見も良くて元気な人たちになるのかもしれませんが、女子校はその人が『面白い人物』であることが大切です」

「『女だから』という言い訳は通用しない環境で過ごしていると、大学に入学してから、男子に甘えること、たとえば、重い荷物を持ってもらうなど……。そういう光景に違和感を抱きます」

男子校卒業生はこんなことを話します。

「男子校はオタクが安心してよりオタク化できるところです。たとえば、何かに熱中しているのって、その分野によっては女子から気持ち悪いと思われてしまうじゃないですか。ところが、男子校は何かに秀でている人が称賛されやすい環境だと思うのです」

単純化して申し上げると、男女別学の在校生たちは「男と男」「女と女」ではなく、「人間と人間」の付き合いになるのです。大人になっても中高時代の友人たちといつまでも仲良くしているのは男女別学出身者が多いように感じるのは、こういう濃い人間関係を築いてきたからでしょう。もちろん、その「濃さ」がゆえに、友人との摩擦が起こりやすい環境にもあると考えますし、実際に男女別学ならではのことだと感じるようなトラブルを耳にすることもあります。

いずれにせよ、保護者は「共学」「男女別学」双方の説明会や学校行事に参加し、先入観をいったん排してわが子の志望校を考えたほうが良いでしょう。

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