わが子は集団塾? 個別塾? 家庭教師?
中学受験のために勉強の指導をアウトソーシングする先は「塾」か「家庭教師」になりますが、塾は大きく2分類できます。1つは複数人数の子どもたちで授業を受講する「集団塾」、もう一つは、講師と生徒の完全一対一、または、一対二で授業をおこなう「個別塾」です。
中学受験対策にはどちらが向いているのでしょうか。一見、わが子の現況に細かな目配せをしてくれる個別塾のほうが良さそうに思えます。しかし、中学入試は一般的に算数・国語・理科・社会の4教科の学習が課されていて、かつ各科目の出題範囲は膨大です。これらをすべて個別塾で対応するには、びっくりするくらいのお金がかかります。それはそうですよね。講師1名を「独占」することになるのですから。また、わが子に合わせて指導してくれるというのは魅力的に映るかもしれません。しかし丁寧に指導しようとするがあまり、遅々としてカリキュラムが進まず、結果的に中学受験で必要な学習範囲を網羅するのが遅れてしまうなんていうリスクだってあります。この点は家庭教師も同様です。
一方、「集団塾」は、複数人数の子どもたちでクラスが構成されますから、個別塾と比較すれば費用は抑えられます(それでも、トータルでは相当の金額になるでしょうが)。加えて、複数人数ゆえ、個々の状況に左右されることなく、中学受験の学習を効率良くこなせるよう事前に決められたカリキュラムを予定通りに消化していくので、遅延リスクは回避されます。もちろん、わが子がそのカリキュラムから「取り残されてしまう」という可能性だってありますが、そこは季節講習会などで復習の機会を持つことでリカバリーできます。そして、何といっても集団塾の良いところは、同じ学年の中学受験を志す友人たちと切磋琢磨できる環境がある点です。これまでも言及していますが、中学受験勉強は順風満帆にはいかず、途中でさまざまな壁にぶつかってしまいモチベーションが低下することだって幾度かはあるものです。しかし、そんな事態を乗り切れるのは一緒に励まし合って勉強していた友人たちの存在であることが多いのですね。
中学受験生たちの大半は集団塾に通って、その対策をおこなっています。個別塾や家庭教師はどちらかといえば「メイン」にはならず、たとえば、小学校6年生になったときに苦手科目の克服や、特定の志望校に向けた対策などを個の学習状況に合わせて指導してほしいと集団塾と併用するケースが一般的です。それでも、体感的ではありますが、全体の7〜8割は集団塾オンリーで中学受験を乗り切っています。
合格実績は塾選びの決め手となるのか
さて、わが子の塾選び。保護者はその塾の「出口」、すなわち、どの学校に何名の合格者を輩出しているのかという「合格実績」が気になることでしょう。
近所に5つの中学受験塾があるとしましょう。その中の一つはいわゆる「難関校」に圧倒的な数の合格実績を誇っているとします。そうすると、その塾が「最も良い塾」のように感じられます。その理屈で考えると、誰しもがこの塾を選ぶことになり、残り4つの塾は消滅してしまうはずです。でも、現実的には5つの塾が同じエリアにあるということは、それぞれの塾に「良さ」があるということにほかなりません。「合格実績」は絶対的な指標にはならないのですね。
たとえば、最難関校のA中学校近辺にあるブランド塾が100名の合格者を輩出していたとしましょう。でも、100名受験して全員合格のはずはありません。恐らく、これくらいの数になると入試の実質倍率に近い結果になるのではないでしょうか。つまり、それが3倍ならば、約300名がその塾からA中学校を受験し、100名が合格したと予想できます。言い換えれば、200名は不合格になっているのですね。
ですから、各塾の「合格実績」は参考にはなりますがあくまでも参考程度に留めておくことをおすすめします。パンフレットやチラシに華々しい合格実績が掲載されていたとしても、それらはしょせん「上手くいった他所様の子どもたちの結果」という冷静な見方をすることも大切でしょう。わが子がそこに入れるとは限らないのです。
各塾にはそれぞれの特徴があります。それらを細かにチェックし、わが家の方針と合致しているかどうかを熟考して塾選びをすると良いでしょう。
次回『塾選びの決定打』へ続く(6月2日公開予定)
書籍情報
- 【定価】
- 1,650円(本体1,500円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- A5判
- 【ISBN】
- 9784046070562