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中学受験・保護者の心構え『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』ためし読み


中学受験をはじめる前に知っておきたい「60のポイント」を、講師と保護者の視点を持つ矢野耕平先生が実体験をもとにわかりやすく解説します。
家庭のリアルな悩みを描いたマンガとともに、子どもと親が納得のいく選択を重ねながら、後悔のない受験生活を送るためのヒントをお伝えしていきます。
 ※本連載は『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』から一部抜粋して構成された記事です。

◆これまでの回はこちらから

どうして中学受験を始めるのですか

中学受験は学びを楽しめる機会

保護者は、わが子にとって中学受験の経験が有益なものになるかどうかを熟考してください。わたしの考える中学受験の意義を大雑把に3点挙げてみます。

まず、中学受験は学びを楽しめる機会になります。 先ほど、中学受験勉強は大変な世界であると申し上げました。小学校5、6年生の2年間は「塾中心」の生活を子どもたちは送るようになりますし、中学入試で合格点を獲得するためには、難しい内容の学習に挑まなければなりません。世の中にはそんな中学受験生の姿を指して「かわいそう」だと同情する声がありますが、わたしからすると塾に通う子どもたちの大半は楽しく学んでいます。算数、国語、理科、社会といった教科は学べば学ぶほど眼前の世界が広がるエキサイティングなもの。また、解けなかった問題が解けるようになるのは子どもたちにとって嬉しいことです。

こういう過程で身につけた学習姿勢は、中学入学以降にも大いに役立つとわたしは考えています。

中学受験はわが子が自立できる機会

次に、中学受験はわが子が「自立」する契機になるという点です。中学受験は「親子二人三脚」と形容されますが、その主役は子どもであるゆえ、中学受験の「終盤」は子ども中心で学びに打ち込めるよう導いてほしいのです。入試の間際まで保護者が勉強を見たり、そのスケジュールを管理したりするのはおすすめしません。なぜなら、そういう保護者にとっては「わが子の合格」がゴールになってしまっているからです。ことばにすると当たり前ですが、中学校に入学したら、また新たな勉強が始まります。しかし、その際にこれまでそばにいてくれた保護者が急に姿を消したら、1人で勉強する方法がわからず、結果として中学入学以降は学力的に苦しんでしまう……そんなケースをよく見聞きします。さらに、「距離の近すぎる」保護者とわが子は円満に勉強を進められないことが多いのです。保護者はわが子の「できないところ」ばかりについ目を向けてしまうもの。子どもは保護者に対して甘えがありますから、何か手厳しいことを言われると、それに反抗し、喧嘩になることだってよくあります。

わたしは高校2年生の娘と中学校1年生の息子がおり、2人とも中学受験をしています。わたしの職業を知る同級生の保護者たちは、「良いわねえ、矢野さんのお父さんは塾の先生だからたくさん教えてもらえるでしょう」などと妻に対して言っていたようです。

しかし、わたしは子どもたちを家庭で指導したことはありません。わが子に対してイラッとしてしまうだろうなと思うとともに、親が「わが子の偏差値を懸命にこしらえてあげる」のは違うだろうと考えたからです。わたしがこの仕事を続けていられるのは、あくまでも「よそのお子さん」を対象にしているからです。

中学受験で中高一貫校と出合える

私立中高一貫の教育を享受できる。これが3つ目の中学受験の意義として挙げられます。

これを多角的な視点で論ずるのは後章にゆずり、ここでは一点に絞ります。それは、「中高6年間で生涯付き合えるかけがえのない友人、恩師と出会える可能性が高い」ということです。中学と高校で「断絶」するより、同じ学び舎で6年間過ごすことで、その後も長く付き合える友人を見つけられることが多いのです。わたしの周囲の大人を観察していても、40代や50代になったいまも中高時代の友人と頻繁に会っている人たちは中高一貫校出身者が多いです。

そして、私立中高一貫校は教員の異動があまりないのが特徴です。すなわち、自分が中高時代に師事した教員が、十何年後もそのままその学校にいることがよくあります。大人になって何か大きな決断を下さねばならないとき、辛いことがあって思い悩んでいるとき……。そんなときに母校を訪れて恩師に話を聞いてもらうというのは中高一貫校でよく見られる光景です。


わが子に中学受験の道を選択させるのは、保護者が中学受験、あるいは中高一貫教育自体に「魅力」を感じ、その「良さ」をわが子にも享受してほしいという思いからであってほしいのです。そういう確かな動機は、順風満帆には決していかない中学受験の世界で、いざというときに親子で踏ん張れる原動力になる。わたしはそう確信しています。

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