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Children & Education

子育て・教育

「あったことを話す」だけでアウトプット


日本の学校教育は「インプット(読む・聞く)」が中心。でもこれからの国際社会で生き抜くには「アウトプット(話す・書く)」力が重要です。アウトプット学習することで学習定着率がぐっと高まります。とはいえ、何から手を付けていいのか悩みものですよね。本記事では、『ドラゴン桜』の指南役としても知られる親野智可等先生が、家庭で取り組みやすい最新の学習法をお教えします!

連載第2回は、本誌の中から『「あったことを話す」だけでアウトプット』をピックアップします。

※本連載は『自分で話せて書けるから、やる気倍増! 外に出してどんどん伸びる「アウトプット勉強法」』から一部抜粋して構成された記事です。記事内で使用している写真は本誌には掲載されていません。



 

 

POINT
・おしゃべりは日常でできるアウトプット     
・心が満たされると宿題に取り組みやすい
・親が子どもだったときの話をしてあげよう

 

まずはアウトプットで子どもの心を満たそう

 帰宅後、宿題になかなか取りかからない子どもへの対応に困っている保護者の皆さんの声をよく聞きます。
 学校で5〜6時間の授業を受けて下校した子どもにとって、帰宅したとたんに「宿題をやりなさい」と言われたところで、やる気になれないこともあるでしょう。本来、勉強は楽しいものですが、学校でもたくさん勉強をしている子どもにとっては、「家でまで勉強したくない」というのが本音だと思います。子どもが家でゴロゴロしていると目くじらを立てる保護者の方もいますが、家でリラックスできるのはよいことではありませんか!
 子ども自身もどこかで気持ちを切り替えて宿題をやらなきゃと思っているところに、「何で宿題をやらないの?」「早くやりなさい」と言われると、かえってやる気が失われてしまうものです。本人が宿題モードに入るまでは、体をゆっくり休めながら、その日にあった学校の出来事などを親子でおしゃべりするほうが子どもの心が満たされます。

 そのほうが気持ちを切り替えて、宿題をやる態勢が整いやすいかもしれません。おしゃべりでは子どもの学力が向上しない、と心配する必要はありません。子どもが学校であったことを話すことは、立派なアウトプット学習です。今日は何をして何を感じたのか、おもしろかったのか、嫌だったのかなどを、ほかの人にわかるように組み立てて話をすることは、アウトプットのよい練習になります。



 

 

答えやすい質問でアウトプットを促す

 子どもから話しかけてくるときは、家事や仕事の手をいったん止めて、子どもが話すことに耳を傾けてあげてください。自分からは学校や友だちのことをあまり話さない子には、大人から質問を投げかけてあげましょう。
 ただ 「今日は何かあった? どうだった?」というぼんやりとした質問だと、実は子どもは答えにくいものです。1時間目は国語で、2時間目は体育で、給食も食べたし、掃除もしたし、学級活動もあったし……と、かえって答えに詰まってしまう子もいるのです。
 それよりも「今日は体育の授業があったよね? 何をやったの?」とか、「今日の書道では、何ていう文字を書いたの?」というように、子どもがすぐに答えやすい質問をして、そこから話を広げていくほうがよいでしょう。
 昆虫に興味がある子になら、「今日は学校の行き帰りで、何か虫を見た?」という質問でもかまいません。どんなきっかけでもいいので、子どもが気分よく話せる内容の質問をしてみましょう。
 こうしたやりとりを通じてアウトプット力が鍛えられますし、子どもの様子を知ることができれば、保護者の皆さんも安心なのではないでしょうか。



子どもに何かを質問しても要領を得ない答えになるときは、質問を具体的にするのがおすすめ。「学校はどうだった?」と質問しても「普通」というような回答しか得られないことが多いが、「〇〇の授業では何をやったの?」という質問なら子どもは回答しやすく、その後の会話も弾みやすい。

 

親が子どもだったときの話をすると喜ぶ

 子どもに話をさせてアウトプット力を伸ばすには、親が見本を示すことも大切です。親子の会話で、子どもが喜ぶのは大人の失敗談です。私も、自分が子どもの頃の失敗談を子どもたちにたくさん話してきました。

運動が苦手で、運動会でビリになった話。音楽も苦手で、放課後になってもリコーダーの居残り練習をさせられた話。勉強も苦手だった話、ウソをついた話、そろばんの試験に落ちた話、給食のマーマレードが食べられなかった話、先生に叱られた話など、あらゆる話をしました。
 なかでも一番受けたのは、友だちとかくれんぼをしていてこえだめに落ちた話です。
こうした失敗談を聞くと、子どもは大人に対して人間的な共感を覚えるようです。

 また、ときには、がんばった話もしました。私は水泳が苦手で、小学生の頃はまったく泳げませんでした。何とか泳げるようになりたいという思いで、中学1年生の夏休みに、同じく泳げない友だちと一緒に学校のプールに通いました。まずは顔を水につけなくてもよく、息継ぎも必要ない犬かきならできそうだと話し合って、一生懸命に練習しました。手のかき方や足の動かし方などを試行錯誤するうちにかなりの距離を泳げるようになり、自信がついて、クロールや平泳ぎ、背泳ぎもできるようになりました。
 このようにおうちの人もさまざまな失敗を経験しながらがんばってきたことを知ると、できないことがあるのはおうちの人も一緒だったんだと、子どもも安心するのでしょう。同時に、「自分もがんばろう」とやる気に火がつきやすくなります。

 こうした親子の楽しい会話のキャッチボールが、子どものアウトプット力を自然に伸ばしていくものです。



 

 

アウトプット学習を習慣にして、この先もずっと学び続けられる子に

宿題や普段の会話など、身近なところからアウトプット学習に取り組むことは可能です。アウトプットすることで学習定着率が高まり、子どもの自信がつく……そうすることで学びの楽しさを覚え、中学、高校と自ら学び続けられるようになります。
本書では具体的なアウトプット勉強法をたっぷり紹介しています。ぜひ親子で取り組んでみてくださいね。


 

【プロフィール】

親野智可等(おやのちから)
教育評論家:本名 杉山桂一。
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。『子育て365 日』( ダイヤモンド社)、『反抗期まるごと解決BOOK 』(日東書院本社)などベストセラーも多い。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社)の指南役としても著名。Instagram、Threads、X(Twitter)、Blog、メルマガや各種メディアの連載などで発信中。オンライン講演を含む全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。

公式HP : https://www.oyaryoku.jp
Blog「親力講座」 : http://oyaryoku.blog.jp
Instagram・Threads・X(Twitter) @oyanochikara
YouTube @user-bl1yz4od8i
(2023年10月現在)
 



 

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