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1万人以上の脳を見て、画期的な脳トレ法を考案してきた医師ならではの目から鱗の知恵が満載の1冊『脳と子どもの専門医が知っている 子どもの脳がみるみる育つ新習慣』をためし読み公開!(※「はじめに」からぜひご覧ください!)
「うちの子、発達障害かも?」と心配する親御さんに、お子さんの苦手や困難を解決するちょっとした習慣を提案します。
第4回のお悩みは…
Q.パパと仲よくできません
Q.お手伝いをしてくれません
に答えます。
パパが努力して、子どもとの関係を築きましょう
ママにはアドバンテージがある
お子さんがパパと仲よくできないことについて、ママが悩まれているということですね。実はこの問題は、私自身も深々と反省しなければならないテーマで、未だに心が痛みます。我が家ではふたりの息子を育ててきました。改めて、自分がやってきた子育てを振り返って、最近ようやく、「当時はなにもわかっていなかったんだな」ということがわかってきました。息子たちが小さかった頃の私は、「自分も妻と同じように息子たちに接することがたいせつ」だし、別の言い方をすれば、「それでじゅうぶん」だと思っていました。
しかし今思うに、ママと子どもの結びつき、パパと子どもの結びつきは、スタートからしてまったく異なるものではないでしょうか。
今の時代、ママとパパの立場の差異を強調するのはあまり好まれないようですが、ただ、何カ月もの時間を子どもと共有し、自分の命をかけて子どもを産んだママと、そうでないパパでは、すでに子どもが生まれた瞬間から、子どもとの関係性に歴然たる差があります。
お子さんがパパと仲よくしたがらないのであれば、それはパパの働きかけが足りていないからです。ママ以上の積極的な働きかけがなければ、パパが子どもと仲よくなるのは不可能です。お父さんが努力して、子どもとの距離を縮めなければいけないと、私は考えます。
父子で多くの時間を共有してほしい
あなたがママで、子どもとパパにもっと仲よくなってほしいなら、パパに対して、子どもと過ごす時間をもっと増やすように促してあげてください。
あなたがパパで、子どもともっと仲よくしたいなら、時間を惜しまないこと。割ける時間に限りがあるなら、子どもと楽しく過ごすための「エネルギー」を惜しまないことです。自分は父親だからといって遠慮する必要はありませんし、ましてや手を抜こうとするのは論外です。「父親として、子どものことはお金で応援している」とか「父親の背中を見せている」という関わり方を選ぶかたも世の中にはいて、それは間違いではありません。しかし、子どもとパパで仲よくしたいなら、それだけでは全然じゅうぶんではありません。
私自身の子育てでは、その努力が足りていなかったと反省しています。当時の自分としては、妻だけに育児を任せるのはおかしいし、父親としての責任を果たしたいと考えていました。だから、特に子どもが小さいうちは、仕事が休みの日にはできるだけいっしょに過ごそうと考えて、釣りに行ったり、プールに行ったり、食事に行ったり……とあれこれやっていたつもりです。しかし残念ながら、長男は覚えていないそうです。子どもと仲よくなり、自分の姿を子どもの記憶に残すには、もっと多くの時間と楽しみを共有する必要があったということですね。
子どもとパパの関係性を築くために重要なことはただひとつです。パパが、子どもといっしょに過ごす時間を積み重ねること。そうして子どもの脳に、パパとの記憶を定着させていくことです。子どもにとって「楽しい」記憶かどうかが大事です。楽しくなければ、脳に刺激は伝わらないのでしたよね。
\\まとめ//
「父子の楽しい記憶」を残せるよう
パパに促してあげましょう
子どもにわかるような具体的な指示が必要です
お手伝いは本来「やってみたい」こと
「お母さん、大変そうだからお手伝いしようか?」―始めからそう言える子どもがどこにいるでしょうか(笑)。子どもが最初にするお手伝いは、家事の真似をするのが楽しそうとかおもしろそうとか、「やってみたい!」という心から始める場合がほとんどです。
私が子どもの頃は、母がやっている家事に興味があって、お手伝いがしたくて、お手伝いできるチャンスはないかと母の近くをよくウロウロしていました。でも、母はチャチャッとすばやく自分で全部済ませてしまう人だったので、なかなか手伝えるチャンスがありませんでした(でも今思い返すに、妹はよくお手伝いをしていたようでした。もしかすると私は「この子が入ってくると作業が滞りそうだから……」と、意図的に手伝わせてもらえていなかったのかもしれません)。
その経験から考えるに、親御さんは子どもに意欲があるうちに、子どもがうまくお手伝いできるしくみを整えてあげるといいのではないでしょうか。
子どもがやってみたいと思って、家事をしているそばをウロウロしているなら、そのきっかけを逃さずに「お洗濯物、いっしょにたたんでみる?」「テーブル、拭いてみる?」と声をかけ、簡単なお手伝いをさせてあげてください。そして手伝ってくれたら、お手伝いのクオリティはさておき、「ありがとう」「助かったわ」「上手ね」とほめてあげてください。
そうして、洗濯物をたたむのでもテーブルを拭くのでも、子どもが何度も繰り返しやってくれて、次第に毎日の習慣になってくれば、「すごく上手だから、これはあなたの役割にしてもいいかな」と、子どもの日々の仕事として割り振るといいのではないでしょうか。
毎日の習慣になるまでには、子どもが自発的に毎日やってくれる例ももちろんあるかもしれませんが、大抵の場合、親御さんの「やってくれるとうれしいな」の根気強い声かけが必要です。子どもが義務感や嫌々ではなく楽しく続けられて、そのうちお手伝いだと思わなくなるくらいまで、気長にがんばっていただきたいです。
手伝うタイミングを自分で判断するのは難しいこと
親御さんの根気強い声かけが必要だと話したのには、わけがあります。お手伝いができない子どもの多くは、単純に気が利かないということでなく、脳の周囲を見る力を司る「視覚系脳番地」が未発達だから、手伝うタイミングを自分の目で見つけられないのです。
まだ見るだけでは状況を判断できないなら、親御さんから「今、お箸とお皿を並べてくれるとお母さんは助かるな」「お母さんは手が離せないから、お風呂を入れてきてくれないかな」などと、子どもがお手伝いの必要性を理解できるように、具体的に指示を出す必要があります。
漠然と「ちょっと、お手伝いしてよ!」とだけ言っても、視覚系脳番地が未熟な子どもには、なにをすればいいかわかりません。的確な指示があって、初めて動き出せるのです。
それからもうひとつ、脳の物事を覚えておく力を司る「記憶系脳番地」が未熟な子どもの場合には、お手伝いを始めることはできるのに、最後までやり続けることができないケースも少なくありません。お手伝いの途中で気が散ってほかのことを始めてしまい、お手伝いの途中だったのを忘れてしまうのです(この場合は正確には、「お手伝いをしてくれない」でなく、「お手伝いを最後までしてくれない」ですね)。
こういう子どもには、手伝ってくれないと嘆くのでなく、「お手伝いの途中なのに、なにしてるの!」と怒るのでもなく、「あれ? 君は今なにをしていたんだっけ?」とシレッと聞いてあげてください。
子ども本人だって、悪気があって投げ出したわけではありませんよね。親御さんが怒り顔や不機嫌そうな態度さえ見せなければ、スムーズにお手伝いの続きに取り掛かれるものですよ。
なお、子どものお手伝いの多くは、体の動きや皮膚感覚を伴うもので、ゆえに「運動系脳番地」「感情系脳番地」のトレーニングとしてもおおいに効果が得られます。運動系脳番地と感情系脳番地の発達は、すべての脳番地の発達を促すのでしたよね。
子どもが小さいうちは特に、広い部屋の掃除、ふとんの上げ下ろし、庭がある家なら庭のお手入れなど、体を大きく動かせるお手伝いを頼むといいでしょう。最初は親御さんといっしょに楽しく取り組んで、徐々に、子どもの役割として割り振れるといいですね。
お手伝いは、脳番地のトレーニングになるばかりか、誰かにほめられたり感謝されたりすれば脳もご機嫌になるし、いいことをしたという記憶も残るし、脳にとっていいこと尽くしの体験です。
親御さんは、自分のためにというだけでなく、お子さんの脳のためにもぜひお手伝いを促し、習慣にしてあげてください。
\\まとめ//
お手伝いの習慣は
子どもの脳にとっていいことだらけ!
第5回目のためし読みでは…
Q.つらいことばかりで、子育てから逃げ出したくなります
Q.子どもをほめるのが苦手です
の悩みに答えます。(8月30日(火)公開予定)
著者:加藤 俊徳
- 【定価】
- 1,650円(本体1,500円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784046057112