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1万人以上の脳を見て、画期的な脳トレ法を考案してきた医師ならではの目から鱗の知恵が満載の1冊『脳と子どもの専門医が知っている 子どもの脳がみるみる育つ新習慣』をためし読み公開!(※「はじめに」からぜひご覧ください!)
「うちの子、発達障害かも?」と心配する親御さんに、お子さんの苦手や困難を解決するちょっとした習慣を提案します。
第3回のお悩みは…
Q.思いやりに欠けています
Q.人と同じものをすぐ欲しがります
Q.人間関係を築くのが苦手みたいです
に答えます。
まずは思いやりを受け取る練習から
誰かの思いやりに気づかせてあげる
思いやりとは、相手の感情を推し量り、相手の立場に立ってなにかを行うことですから、大人であってもなかなか難しく、子どもにとって難しいのは言わずもがなです。
子どもの場合はそもそも、思いやりというのがどういう行動なのか、まだわかっていない可能性が高いです。なぜわかっていないのかというと、自分が誰かに思いやられたとき、そこに相手の思いやりがあったことに気づいていないから。
「こういうのが思いやり」というイメージがなければ、自分からの思いやりは実践できません。まずは、思いやりを受け取る練習から始めてみていただきたいです。
例えばおばあちゃんが、お子さんが好きなお菓子を買って、遊びにきてくれたとします。そのとき、「〇〇ちゃんが好きだから買ってきてくれたんだね」、「〇〇ちゃんのことを思いやって、わざわざ持ってきてくれたんだね」と、お菓子を買ってきたという行為の向こう側に、おばあちゃんの優しさがあることに気づかせてあげるのです。
その一言があるだけで、「おばあちゃんがお菓子を買ってきた」という出来事が、「おばあちゃんは私のことを思いやって、お菓子を買ってきてくれた」という温かい記憶に変わって、お子さんの脳の「感情系脳番地」を刺激するとともに、思いやりのイメージが刻まれます。
あるいは、お子さんが泣いているそばで、お兄ちゃんが心配そうに立っていたら、「お兄ちゃんが〇〇ちゃんのことを心配しているよ。優しいね」など、その行為の向こう側にあるお兄ちゃんの心を伝えます。
そんな積み重ねから、誰かから自分への思いやりに気づき、「ありがたいな」と感じ取れるようになれば、お子さんも徐々に、思いやりのある行動ができるようになります。
「思いやりだね」と振り返る
それ以外にも、本や映画を通じて、登場人物の思いやりの気持ちに感情移入させるのもよい方法です。友だちや先生との関係性の中で、思いやりを受け取る体験もあるでしょう。たいせつなのは、そういった場面を、「思いやりだね」「優しいよね」と後から振り返って話題にすることです。
また、日常生活の中で意識的に、親御さんから子どもに対して思いやりのある行為を実践するのは、なにより効果があります。
子どもの身近にいる人の働きかけがないと、思いやりの行動はけっして自然発生するものではありません。子どもの思いやりを望むのであれば、思いやりを感じ取れるきっかけを、親御さんはたくさん提供してあげてください。
周囲の人への思いやりをスムーズに実践できるようになると、いっそう温かな人間関係が結べるようになります。思いやりを実践する機会もされる機会もますます増えて、毎日が楽しく幸せになると、脳も喜び、その成長もいっそう促されます。
\\まとめ//
思いやりは自然発生するものではありません
「欲しい」は自主性の表れです
欲しがるのをやめさせなくていい
「〇〇くんは買ってもらったのに、なんで僕はダメなの!」
「みんな持ってるから、私にも買って!」
こういう子どもの主張に翻弄される経験は、どの親御さんにもあることではないでしょうか。人が持っているものがよく見えたり、同じものを欲しがったりするのは、きっと親御さん自身も幼い頃にやっていたでしょう。
子どもが人と同じものを欲しがったときはどうか、「お金がないからダメ!」「また人のものばっかり欲しがって!」などと、はねつけないでください。欲しがる気持ちを否定されてばかりでは、意欲や欲求の源となる「思考系脳番地」の発達が妨げられてしまうからです。思考系脳番地は、発達のタイミングが遅く、子どもの脳の成長の総仕上げの時期にようやく育ち出します。だからといって、幼いうちは発達を促さなくていいというわけでなく、子どもがモチベーションを発揮できる機会をつくる、やりたいことをやらせてあげることで、ゆっくりでも着実に育てていきましょう。
人と同じものを欲しがる気持ちの裏にあるのは、目で見たものを自分でも所有したいという所有欲だけではありません。それよりもっと注目し、評価してあげていただきたいのは、見たものを自分の手でも触れてみたい、自分でも動かしてみたいという「自主性」の感情です。子どもは、「身近にいる人がやっていることを目で見て、自分でもやってみる」というアクションを繰り返しながら、できることを増やし、成長していくものです。このアクションを発動するために欠かせないのが、自主性。自分もやってみたいと思う気持ちです。
だから、人と同じものをすぐ欲しがるのは、全然悪いことではありません。むしろ、この欲求は自主性の表れで、成長を促すたいせつなきっかけです。欲しがる気持ちは、子どもの成長過程においてじゅうぶんに体験しておくべき感情です。「嫌だな」「やめさせたいな」と思う必要はいっさいありません。
欲しい理由を、話すことで整理させてあげて
欲求自体は評価すべきものであっても、とはいえ、なんでもかんでも与えるのが正解でないのは言わずもがなですし、経済的にも不可能でしょう。しかし、欲しいものが与えられない体験が積み重なるばかりなのも、子どもにとってよくないのでは……そう考えて、余計に困ってしまった親御さんがおおぜいいらっしゃるかもしれません。
残念ながら、与えるほうがいい、与えないほうがいい、と二者択一の正解があるわけではありません。時と場合によって、その欲しいものが必要なのか否かを親子でていねいに話し合えるといいですね。
お子さんがなにか欲しがったときは、まずは「欲しいんだね」とお子さんの欲求に寄り添い、なぜ欲しいのかを自分の言葉で説明させてあげてください。落ち着いて話をさせれば、もしかすると、人が持っているからという以外の欲しい理由が見つかるかもしれませんし、あるいは、冷静に「やっぱりそこまで欲しくないな」と思い直せるかもしれません。
脳が欲しいと思うとき、そこには必ず理由があります。親御さんは、子ども本人が欲しい理由を整理し、自覚できるようにサポートし、そのうえで、欲求に応えるか否かを判断してください。いちばんよくないのは、親の気分次第でのジャッジです。子どもにも納得できる判断が、どんなときも不可欠です。
\\まとめ//
欲しがる気持ちは
実は思考系脳番地の発達を促しています
人との交流が増えると、徐々に改善するものです
「人付き合いが苦手ね」と言わなかった母
実は私も、幼稚園にもほとんど行けないほどの人見知りでした。今振り返っても、人前に出られなかったときの感情、みんなと楽しく話せなかったときの感情が鮮明に浮かんできます。どうして人とふつうに接することができないのかを言葉にすることもできず、苦しいしもどかしかったです。
ただ、そんな自分に対する母の対応にはとても感謝しています。母は私に、「あんたは人付き合いが苦手ね」とは一度も言いませんでした。もし当時そんなふうに親から言われていたら、自分は人付き合いが苦手だと、ことさら強く意識づけられてしまっていたのではないでしょうか。
もちろん、人付き合いが苦手だというのを自分でもわかっていました。わかっていたからこそ、克服したくて、大人になるまでにさまざまな努力をしました。今から思うと荒療治でしたが、大学生の頃にはボランティア活動で、1対1で初対面の人の相談に乗る経験も積みました。そうこうするうちにいつの間にか、人付き合いは苦ではなくなっていました。
医学部の同期の中にも、人とのコミュニケーションが上手に取れない仲間はいましたが、医師として毎日たくさんの患者さんを診ているうちに、人間関係の苦手を克服していったようです。
人間関係の苦手は、人との交流が増えることで改善します。例えば、商売をしている家の子どもは、気軽な人付き合いが上手です。祖父母といっしょに住んでいる子ども、両親の友だちが自宅によく遊びに来る家の子どもも、人付き合いの実例を多く見ている分、人間関係にあまり苦労しません。人間関係の得手不得手には、人と接する機会の量が影響しています。
商売をしている家も3世代で暮らす家も減っており、コロナ禍の影響で、家の外の人と気軽に接するのも難しい状況です。でも、子どもの人付き合いの苦労が気になるようでしたら、ご近所付き合いや親戚付き合いなどの機会を意識的に取り入れてみていただきたいです。
なお、子どもの頃に人間関係が苦手でも、一生そのままということはありません。私や医学部の仲間のように、生きていく中で、人と接する機会を重ねるにしたがって、また本人の克服しようとの意欲にともなって、変化していくケースはよくあります。
会話が苦手でもよい人間関係を結ぶのは可能
ところで、「人間関係が苦手だと思っていたが、ていねいに振り返ると、実は苦手なのは会話だった」というケースは子どもにも大人にもよくあります。話しかけられれば応えるけれど、自分から人に話を振るのは苦手だというかたは意外と多いものです。
会話力は、コミュニケーション力を司る「伝達系脳番地」が担当しています。伝達系脳番地は、8つある脳番地の中でも後から発達する脳番地ですので、まだ子どものうちは、会話が上手にできないのはしかたなく、焦る必要はありません。大人になってから、伝達系脳番地を鍛える習慣を取り入れて、苦手を克服していく人もおおぜいいます。
会話が苦手なかたによくお話しするのは、「人間関係は、会話だけで成り立つものではない」ということです。例えば、会話がなくても、困っている人の荷物を持ってあげれば、そこにはよいコミュニケーションが成立しています。会話が苦手だからといって、人間関係への自信を失わないでいただきたいです。
\\まとめ//
対人力は、必要に応じて身につきます
第4回目のためし読みでは…
Q.パパと仲よくできません
Q.お手伝いをしてくれません
の悩みに答えます。(8月23日(火)公開予定)
著者:加藤 俊徳
- 【定価】
- 1,650円(本体1,500円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784046057112