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子育て・教育

もっとわかる! はじめての、親子えほん 第17回<子どもとの距離を近付けてくれた絵本>


こんにちは! 《聞かせ屋。けいたろう》です。
今回は「新人保育士時代に、子どもとの距離を近付けてくれた絵本」を紹介します。

僕は、保育者養成短大を卒業後、大田区の公立保育園で非常勤保育士として働いていました。初年度は年少(3歳児)クラスに入ることになったのですが、新人保育士はやはり手一杯(笑)。できないことばかりで、子どもとの関係もなかなか深まりませんでした。
そのクラスの担任(T先生)が、大の絵本好き! 私物の絵本を毎日、自宅から持って来て読んでくれるような先生でした。なので、僕とも意気投合。そのうちに帰りの会の読み聞かせは、僕に任せてくれるようになりました。僕は毎日、クラスの子どもたちの姿をイメージして、しっかり絵本を選びました。子ども達の興味、集中力、笑いたいのか、静かに味わいたいのか、色々考えました。
その中で印象に残っているのが、この絵本です。
 


『めっきらもっきら どおん どん』(福音館書店)



この絵本を読んだ時の子ども達の雰囲気が、忘れられません。水を打ったように静かで、でもワクワクするような空気感があって、全ての視線が絵本に注がれている。「これだ!」と思いました。お話は、「少年が別の世界に迷い込み、おばけ達と楽しく遊ぶ」といった内容ですが、まるでクラスの子どもたちも絵本の世界に吸い込まれてしまったようでした。
当時、僕との距離が一向に縮まらない女の子が居たのですが、その日を境に打ち解けられた気さえするのです(笑)。

年少クラスの子ども達は皆、絵本が大好きでした。それは担任のT先生が、毎日彼らを思って絵本を選び続けたからだと思います。
先生は子ども達の手の届かない場所に、自分の本棚を作っていました。並ぶのは、自身の絵本好きが高じて集めた私物絵本です。ただ、その絵本は子ども達には手渡しません。大事なコレクションがくたびれてしまいますからね(笑)。でも、読んでもらえます。セレクトも良いし、触れられないから余計に特別な絵本なんです!
「あの本棚には、楽しい絵本が沢山ある! 今日はどんな絵本かな?」と、子ども達は思いを馳せる。
「先生がその本棚から絵本を選ぶ姿」が、既に導入になっていました。
子ども達の姿をイメージして、一生懸命に絵本を選んでいると、絵本が大好きなクラスになります。僕は身を持ってそれを感じました。

 

もう一冊紹介したいのがこの絵本。


『いちにのさんぽ』(アリス館)



『いちにのさんぽ』(アリス館)です。
僕の保育士二年目は、1歳児クラスを担当することになりました。
そこで、大人気だったのがこの絵本です。自宅の本棚から持って行きました(笑)。
「いちに いちに いちにのさんぽ」という文章のリズムがすごく良くて、読んでいると歌のようになるのです。「いっちに♪ いっちに♪」と弾むように、読めば読むほど楽しくなって行く。子ども達もそれを感じて体を上下させたりして、ノってくるのです。
室内でそんな読み聞かせを楽しみ、僕らは散歩に出かけました。外履きに履き替えて、公園へ向かって歩いていると……
「いっちに いっちに」と頭に言葉が浮かんできました。なので僕は、
「いっちに♪ いっちに♪ いっちにのさんぽ!」と声に出してみました。すると、手をつないでいた子どもが嬉しそうにその腕を揺らしました。僕も嬉しくなって、ウキウキした気持ちでその子との散歩を楽しみました。時々また、「いっちに! いっちに!」と子どもも言ってくれました。
「あぁ、良い絵本の言葉やリズムって、現実に飛び出してくるんだなぁ」
と、感じたのはその時です。

その子達にぴったりの絵本を選んで読むと、子ども達と呼吸が合う感じがします。
クラスの子ども達をイメージして絵本を選ぶ、そして自分の好きな絵本を選ぶことも大切だと思います。
自分のお小遣いで、保育に使う絵本を買って欲しいということではありません。園で読む絵本は園で準備出来たら、尚良いと思います。でも、自分が欲しくなるくらい好きな絵本があったら、楽しい。良い意味で、趣味を職場に持ち込めるわけですからね(笑)。それは、子どもが触れられない、特別な絵本になるのです。

 子どもと距離が近づく本を選ぶポイント 
・クラスの子ども達をちゃんとイメージして絵本を選ぶこと
・私物の絵本を保育現場に持って行って、それは渡さなくてもOK


作:長谷川 摂子/画:ふりや なな

定価
1,100円(本体1,000円+税)
発売日
サイズ
20cm×27cm
ISBN
978-4-8340-1017-6

作:ひろかわ さえこ

定価
880円(本体800円+税)
発売日
サイズ
17cm×16cm
ISBN
978-4-7520-0116-4

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