
ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第十六回は、多くの人が一度は見たことがあるだろうユーモア絵本『ねずみくんのチョッキ』です。

『ねずみくんのチョッキ』(作:なかえよしを 文:上野紀子 ポプラ社)

今回は『ねずみくんのチョッキ』ですね。1974年に出た絵本です。

僕がこの絵本と出合ったのは、小学校の図書の時間です。僕は小さい頃、本が得意じゃなかったので、なるべく文字の少ない本を読みたかった(笑)。この絵本は、短い文で、クスクス笑えるのが楽しくて、読んでいたんですね。

私も子どものときにすごく好きでした。動物の表情がいいしね。文章も繰り返しだから楽しかったんでしょうね。

幼児じみてないというか。大人にも伝わるユーモア、ジョークがいいあんばいな気がします。

絵がおしゃれですよね。ちょっと外国っぽいような雰囲気もありますよね。

そうですね。僕、アメリカで『ねずみくんのチョッキ』を読み聞かせをしたことがあって、それが一番思い出深いんです。

アメリカでの反応はいかがでしたか?

日本語と英語を交えて読んだんですよ。「ぼくの チョッキ ぴったり にあうでしょう」「How do I look?」と、“日本語を読んで、英語で読んで”ってやっていたら、外国の人もチョッキが伸びていくことに対して「オ~!」とかクスクス笑い出して……。
ゾウがチョッキを着たときに「ワーオ! もう無理だよ~」みたいなリアクションになり、チョッキが伸びきったときには「Oh my ……」となってました(笑)。でもやっぱり最後のシーンでは「Oh,Nice idea」みたいな安堵感があって、「just joking」ジョークだよ!みたいな感じ。
“ユーモアを楽む”っていう雰囲気が外国にも合っている気がしました。アメリカでもすごく人気の絵本でしたね。

たしかに、絵だけ見ていても、どんなストーリーなのかがわかりますしね。

文章がなくても、絵だけでストーリーがわかるというのは、良い絵本の選び方の一つかもしれません。“絵にちょっと文を添えたよ”ぐらいのボリュームが、ページをポンポンめくれてリズムも良い。その心地よさと絵の楽しさで、おとなも子どもも楽しめる絵本の、一つの完成形のような気がします。

本当ですね。絵本の表紙を見ると、大きいフレームの中にねずみくんがちょこんといるのが、最終的なゾウの大きさへの伏線という気もしますね。

この絵本は「小さい大きい」の話でもありますよね。ねずみくんのチョッキが伸びる話ですが「洋服が伸びる」っていうのは低年齢だと理解するのが難しいんですよね。繊維がこんなに伸びるのは想像もつかないし。輪ゴムが伸びるのはわかると思うんですけど、洋服が伸びるのは結構難しい事象。年中さんや年長さんなら「伸びる」っていうことを、粘土とかいろんなもので経験しているので理解しやすい。ただ、それがわからない年齢でも、動物の表情や登場順など、充分に楽しめる展開です 。

あとは、「いい チョッキだね ちょっと きせてよ。」「うん」この会話劇で一冊通していて、余計な言葉がないっていうのがすごいなって思います。

そうですね。それでいいんだと思うんです。親御さんは絵本を読んで「子どもに何かを学ばせたい」と思われることがある(笑)。 「動物の名前を覚えられます」「色の名前を覚えられます」「数が数えられるようになります」などを求めたりして。でも、絵本って教科書じゃないから、「この絵本を読んだことで、こういう能力が身につきます」という、即効性はありません。そればかりを求めちゃうと、絵本の一番大事な「楽しさ」とか「読んでもらう嬉しさ」とか、そういったものが遠のいてしまうように思います。作り手側としてもそうなんですけど、「このことを絵本で伝えたい!」って頑張り過ぎちゃうと、「楽しさはどこに行ったの?」っていう話になりがちで(笑)。そこを求めずに、「親子でクスクスって笑ってくれたら、その時間が幸せだよね」でいいような気がしますね。

本当ですね。『ねずみくんのチョッキ』は、まさにそういう絵本ですね。絵本が楽しいっていうのは本当に大事ですよね。子どもがまた読んでほしいなって思う絵本。

子どもが「もう1回(読んで)」って言いやすいですよね。僕が勤務している保育園に、ねずみくんのチョッキシリーズ全作品があったので、この夏、貸し出し図書に全部出したんですよ。そしたらみんなすごく借りてました。「この夏にねずみくんのお話を全部読んでみよう!」ってお知らせもしたので、多分おもしろがってくれてると思います。親子で。

いいですね。この絵本は文字が少ないから、1歳とか2歳の子どもにも読みたくなっちゃうと思うんですけど。出版社のホームページを見てみると、対象年齢は3、4、5歳になっています。だから、さっきけいたろうさんがおっしゃっていた「洋服が伸びる」っていうのが理解できる年齢向けに設定してあるんですね。

その絵本の内容を全部味わいきれる年齢っていうところですかね。1、2歳は、動物が次々とやって来て、登場順に大きくなっていくのが楽しいと思います。

なるほど。すごく幅広い年齢で楽しめる絵本。その年齢ごとに楽しみ方が変わる本当に良い絵本ですね。どうもありがとうございました。

けいたろうさん作『ねずみくんのチョッキ』のポップ
作:なかえよしを 文:上野紀子
- 【定価】
- 1,430円(本体1,300円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 244mm x 215mm
- 【ISBN】
- 9784591004654